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思い出さないことこそあれ、忘れてしまった日などない。
あの日、大学2年生だった有架里は、1学年先輩の瑛太の家に行った。
ずっと好きだったのだ。寡黙で男らしく、リーダーシップもあり、優しく強い瑛太に心を奪われていた。
何度か皆で遊びにも行った。
瑛太は見た目も長身なほうで、整った端整な顔立ちで、モテていた。
有架里は瑛太の見た目に惚れたわけではないと自負していた。
瑛太の、相手の弱さに触れた時の優しさ、相手の優しさに触れた時の素直さ、そんなところに瑛太の優しさと強さ、弱さを感じていたのだった。
瑛太はその日、高熱を出し、大学を休んでいた。
有架里は一人暮らしの瑛太の容態など気になり、二時限目を終えるとすぐに瑛太の住むマンションへ向かった。
瑛太の部屋に初めて一人で訪問することに、戸惑いは無かったと言えば嘘になる。
まだ男性との交際経験もなく、でも瑛太となら何も起きないと彼を信じて部屋へ向かった。
瑛太は高熱のため、広い寝室のベッドの上で、ぐったりとしていた。




