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「チケットは本物だったよ。良かったね。」
と、笑顔でチケットを渡された。
ホッと肩の力が抜け落ちた。
「あれ? まだ着替えていなかったの? て、僕もだけどね。今夜は部屋で一緒に食事しない? 大丈夫、襲ったりしないから。」
冗談ぽく言われて、つられて有架里も笑った。
「笑ってるのが一番だよ? ジメジメしててもしょーがない。僕の部屋でもいいし、君の部屋でもいいし。」
「……じゃあ、私の部屋で……。」
そうだ、ジメジメしてても仕方ない。耕平のことは船で出会った友達だと思えばいい……。
そう言い聞かせても、耕平に心惹かれ始めてる自分をどうすることもできないでいた。
食事をルームサービスで頼み、ワインを開けながら、時間の経つのを忘れて過ごした。
「ねぇ、作詞の仕事してるて言ってたよね? どんな作品? 船旅で仕事の話したら、野暮かなあと思って聞いてなかったけど。」
有架里は音源を出そうと思い、机の上のノートパソコンを取りに行くため、立ち上がった。
その拍子に、少し酔ったのか、よろめいてしまった。
「大丈夫?」
支えてくれた耕平は、耳元で甘く囁いた。
甘く囁かれたように感じてしまったのだ。
「……キス、したい。」
耕平に細い肩を掴まれ、真正面に立たれた。
やがてゆっくり、耕平の顔が近づいてきた。
咄嗟に目を瞑ってしまった。
ワインの酔いに任せて、このままキスくらいなら溺れたくなってしまった。
「……。」
ハッとして、目を開けた。
額にキスをされたあと、耕平の顔が離れていった。
「唇にしたかったけど、止めとく。ガッチガチに緊張してるじゃん。」
からかうように言われた。
まだ肩は掴まれたままだった。
「だって……。」
「だって何? 唇にしてほしいの?」
そっと顎を指で掴まれた。
その時、机の上に出したままのチケットが視界に入った。
「……。」
やがて有架里の目は見開かれた。
その気配を感じてか、耕平の指も緩み、有架里と同じ方向を見た。
「どうしたの?」
「日付けが、違う……。」
チケットの日付けは、有架里が記憶していたものとは違っていた。
「今日、何日……?」
言葉が震えた。
耕平はカレンダーを指して、日付けを言った。
「なんで……?」
「どうしたの?」
「チケットに書いてある日付けと、記憶していた日付けが違うの……!」
「えっ!?」
有架里はチケットを手に取り、耕平に見せた。
「……君の、勘違い……?」
少し呆れたように言われた。
「そんなんじゃない。妹に聞けばわかる。」
有架里はすぐに、あづみに電話をした。




