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耕平はエスコート慣れしていた。初めての船旅に緊張している有架里を、あちこち連れ出してくれた。
ゴルフの練習、フィットネスセンター、カジノ、ショー……。
有架里がアートクラフトの講座を受けてる間は、耕平はライブラリーで読書をしていたり……。
気付けば、船内の夫婦ペアと変わらない行動をしていた。
ある日の夕暮れだった。
デッキで夕方の風を気持ち良く浴びている時、
「アメリカへ行くのは、彼氏が目的らしいけど……。」
と、耕平に言われた。
「でも、話聞くと、やっぱりおかしいよね? 普通、飛行機のチケットくらい同封するもんだと思うけど?」
胸がチクリとした。そこは触れてほしくない箇所だった。
「彼氏というか、そんなんではないけど……。」
「じゃあ、僕、彼氏に立候補してもいいよね?」
屈託なく笑いながら、言われた。
そっと前に立ちはだかられた。
「それは……。」
「ん?」
この数日の楽しかったひとときがよぎった。




