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「きっかけは瑛太君、サークルをやめた時のこと。」
「ああ、会社、起業してだったよな?」
「うん、あの時、瑛太君に「もう俺、先輩じゃねーよ」て笑いながら言われて。」
「うん。」
「じゃあ、「瑛太君と呼んでいい?」と聞いたら「うん」て。それだけ。」
「へ? それだけ? 簡単な理由だなー。」
「うん。」
雅記はアイスコーヒーを飲んで、口を開いた。
「君のこと、好きなんだろうなあ……。」
雅記は遠い目をした。
「……。」
高熱を出した瑛太の家での出来事を思い出す。あの日のことは、誰にも話していなかった。
「でも、婚約者を連れてアメリカへ行った。」
「うん。」
チクリと痛んだ胸の音を、雅記に悟られたくなかった。
「忘れろよ、先輩のことは。」
「え?」
「だってそうだろ? 君のこと好きなら……、イヤ、やっぱりやめとく。」
雅記は口をつぐんだ。
有架里は目で、話して、と促した。




