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第8話 あられもない姿


 急いで支度を整えた僕達は門の前に立っていた。


「フィストはこの草原をずっと歩くと見えてくる海に隣接してるんだ〜。ここからじゃまだ見えないけどね」

 アリエは草原の向こうを指差した。


「それじゃあさっそく出発しようぜ!」

 悠真が元気に声を上げる。


「ちょっとまったぁ!」

 それを引き止めるようにアリエが叫んだ。


「な……なんだよ、アリエちゃん」


「またさっきみたいに組織の人達が襲ってくる可能性も考えなきゃいけないでしょ? それも1人じゃなくて何人かでくるかもしれない。

 1人ならまだしも、何人も私だけで相手にするのは難しいからさ、空達にもケーシスを使って戦えるようになってもらうよ!」


 たしかにそうだ……組織の奴らが襲って来た時、僕達もそれぞれ戦えるようにならなきゃな。


「戦うって言ったって俺たちはアリちゃんみたいにケーシスを使いこなせないぜ?」

 

「そりゃそうだよ〜。だからケーシスの特訓をしてもらうよ」


『特訓?』


「ケーシスを発動するために必要不可欠なイメージ力を高めるための特訓をするの」


「イメージ力を高める。って言ったってどうやれば高められるんだ?」

 たしかにイメージ力なんてどうやれば高められるのだろうか。


「イメージ力を高める方法は色々あるんだ。例えば本を読む、体験する、イメージする。その他にも色々あるんだけど、イメージ力を高めやすいのはこの3つなんだ。

 とりあえず本もないし、何かを体験できるような環境もないから空達には歩きながらイメージをしてもらうよ」


「なにをイメージすればいいの?」


「それを今から調べるよ。みんなこれを持って」

 そういいながらアリエは白色の紙をみんなに配る。


「これは?」


「これは色見紙しきみしといって、この紙にケーシスを発動させた人に向いてるイメージを色で表してくれるものなんだ。ちょっと見てて」

 そう言うとアリエは色見紙にケーシスを発動させる。


 アリエの持っていた色見紙は一瞬で青色に染まった。

「こんな感じ。みんなもやってみて」


 言われた通りそれぞれケーシスを発動させる。


「僕は赤色だ」


「俺は紫色だ」


「私は緑色と白色だよ」


「みんな違う色に染まったね」


「紫ってどんなイメージが向いてるんだ?」

 悠真がアリエにたずねる。


「今から説明するよ。

 赤は火、青は水、緑は風、黄は電気、紫は干渉。色が示すイメージはすごいおおまかだけどこんな感じだと言われているの」


 すごいおおまかということは実際は火とか水とか以外にも色々あるってことか。


「私の白色はないんですか?」

 蕾があの〜、と尋ねる。


「ううん、あるよ。でもすごいね蕾。白なんて滅多にいないんだよ? それに加えてもう一色あるなんて! 私も初めて見るよ!」


 生まれたときからアドリームに住んでいるアリエでも初めて見るなんて、相当白のイメージを持った人はいないのだろう。


「そうなんですか?」


「うん、白色は回復のイメージが向いてるんだ。世間一般的にはさっきの5色とごくごく稀に白の1色。この6色がこの世界のイメージの色だと言われているの」


「じゃあ私は風のイメージと回復のイメージを使ったケーシスが得意ってことですね」


「そーゆーこと。とりあえずどっちかを強化しようか」


「じゃあ2色の方が圧倒的に有利じゃん!」

 悠真が叫ぶ。


「別にそういうわけでもないんだ。この色はただ得意なイメージを表しるだけで、この色以外のケーシスもたくさん練習するば発動できるようなるよ。

 まぁ白はもともとのものだから、回復は練習してもできないけどね〜」


 白のイメージは天性のもの。ってことか。


「じゃあ僕は火か」

 

「火はわりと身近だから簡単かもね」


「たしかに火はイメージしやすいかも」

 火は人類に必要不可欠だもんな。


「俺は干渉……ってやつだけど、なにに対しての干渉なんだ?」

 悠真が首を傾げる。


「それはもちろん全般だよ。でも悠真は地面への干渉が向いてるっぽいから、地面への干渉を強化しよう」


 ケーシスの練習ですごい蹴動を発動できてたもんな。


「それぞれ向いてるイメージは分かったね。歩きながらそれぞれ向いてるイメージに関してのことを考えておけばイメージ力は強くなるよ。

 とりあえず、空は火のこと、悠真は地面のこと、蕾は回復のこと……っていっても考えにくいだろうから風のことをイメージすればいいかな」


 各自歩きながらイメージを固めていく。


 火がどんな温度でどんなような動きをしてるか、色なども鮮明にイメージしてみる。

 そしてそのイメージした火を具現化させるようにケーシスを発動させるーー!


 ポッ……。


 手のひらの上にマッチのような火がでた。


「……ちっさいな」


「いやいや、小さくても具現化できるんだから順調順調だよ!」

 そういうアリエは大きな水の塊を宙に浮かせている。


 悠真の方を見て見ると地面の形を変え、尖らせていた。

 あれで敵を突けばなかなかの威力だろう。


 蕾は身体の周りに風を発生させてさらに何か形を作ろうとしていた。


 みんな順調にイメージが固まっているようだった。


 僕もしっかりイメージを固めないとな……。

 再び炎についてのイメージを固めることにした。


 みんな無言で歩いていたが、アリエがいきなり口を開いた。


「みんな、今日はここを拠点にして野宿をらするよ〜」


 辺りを見ると夕陽で紅く染まっていた。

 それにしてもアドリームの景色はほんとに綺麗だ。


「もうこんな時間だったんだ……」

 イメージに集中し過ぎて気づかなかった。


「でも野宿するっていってもどーやって野宿するんです?」

 蕾が不思議そうに尋ねる。


「悠真、地面を粘土みたいにできる?」


「おお、できるぜ」

 悠真はケーシスを発動させ地面をちぎってみせた。


「よし、それでベッドを作るよ」


「なるほど、そーゆーことか!」

 悠真は地面をどんどん粘土に変えてベッドを4つ作った。


「よしよし、悠真は地面への干渉は御手の物だね」

 今度はアリエがケーシスを発動させ、水で粘土を覆う。おまけに布団までつくってしまった。


「これで土がつくこともないし、安心して寝れるよ」


 試しに水でできた布団を触って見る。

「おぉ……ぷにぷにしてる……」

「私この感触大好き〜」

 蕾はこのベッドが気に入ったようだ。


「よし、寝床はオッケーだから次は食料だね。ちょうどそこに川があるから魚でも捕まえようか」

 そんな簡単に捕まえられるものなんだろうか。


「魚だけだと栄養バランスが偏りそうだから私は木の実でも探してこようかな」


 たしかに魚だけでは補えない栄養がでてくる。


「俺も木の実探すの手伝うぜ」

「一緒に行こっか」


「じゃあ空は私と一緒に魚をとってね」

 そんなこんなで僕とアリエ、蕾と悠真の二手に別れて食料を探すことになった。


 拠点から徒歩2分ほどで川に着いた。

 川の水は澄みきっていてとても綺麗だ。


 アリエは川の前に立つとケーシスを発動させ川の一部分の水を浮かせる。

 浮かせた水の中には魚が何事もないように泳いでいた。

 アリエはそのまま水の塊を足元に持ってくるとケーシスを解除する。


 足元には元気に跳びはねる魚だけが残っていた。


「アリエのケーシスってすごい便利だよね」

 そういいながら僕はアリエが集めた魚を拾い集める。


「そうかな? どんなケーシスでもイメージさえしっかりしてれば便利だと思うよ」

 アリエはまた川から水を浮かせている。


「そうかなぁ」

「そうだよ〜。よし、これだけとれば足りるかな。戻るよ!」

 結局僕の出番なかったな……。


 拠点に戻ると悠真達がイスを作っていた。


『ただいま〜』

「おかえりなさい、魚はとれた?」


「アリエがバッチリとってくれたよ。僕はなんもできなかったけどね……」


「そんな落ち込まないでよ〜。空にも仕事してもらわなきゃなんだからさ」

 アリエはクスクス笑っている。


「仕事ってなにすればいいの?」


「木の枝とかを集めて火をつけてほしいんだ。魚を焼くのに必要だからね」


「分かった」

 僕は言われた通り木の枝や草を集めて、ケーシスで火をつけた。


「よしっ、これで魚が焼けるね。

 蕾達はなにか採れたの?」


 僕は木の枝に魚を刺し火のそばに立てる。


「食べれるかわからないけど、この木の実だけ何個かあったので採ってきました」

 そういいながら蕾は手のひらサイズの実を8個並べた。


「お、これは甘水の実だよ。中に果水っていう水を蓄えてるんだ。

 空は飲んだことあるよね」


「えっ、これが果水なんですか!」

 蕾の声が大きくなる。


「うん、そうだけど知ってるの?」


「空君がとっても美味しいって言ってて飲んでみたいなぁって思ってたんです!」

 めちゃくちゃミサンガにお願いしてたもんね……。


「そーなんだ。天然の甘水の実はとってもレアなんだよ。よく見つけたね〜」


「たまたま目に止まったもので……」

 蕾はもうワクワクの表情で目を光らせている。


「イスできたぜ〜」

 悠真が持ってきたイスにアリエが水で作った座布団をおく。


「それじゃあ食べようか」

『いただきます!』


 数匹の魚と少しの果水だったけど、とても美味しくて、満たされる夕食だったーー。


「ふぅー、お腹もいっぱいになったし寝ようかな」

 悠真が満足気に言う。


「あの、お風呂は……?」

 

「あぁ、忘れてたな」


 こんな草原の真ん中でお風呂なんて……。


「悠真、ちゃっちゃと浴槽作っちゃって〜」

「はいよ」


 作れるんだった……,


 悠真はもう慣れた手つきで浴槽作りに取りかかる。


「空は火をお願い」

「了解〜」

 集めておいた木の枝や草に火を付ける。


「よし、できたぜ」

 そこには立派な浴槽ができていた。


「粘土だとちょっと熱に耐えられなそうだからレンガっぽくしてみたんだけどさ、うまくいってるかな」

 浴槽に触れてみるとほんとのレンガでできてるようだった。


「おお、見た目も触った感じもうまくいってると思うよ」


「よかったー! レンガとかよくわからんないから適当にイメージしたんだけど成功っぽくて嬉しいぜ。でもなんか疲れた……」


「慣れないイメージをしたから無意識のうちに魔力を使ってたのかもしれないね〜」


 イメージだけじゃ足りない部分は魔力を使うんだっけ。


「悠真君、お疲れ様!」

 蕾が労いの声をかける。


 アリエはケーシスでお湯を発生させ浴槽にそそぐ。


 ほんと便利過ぎじゃないか?


「よし、それじゃあさっそく!」

 アリエがいきなり服を脱ぎだす。


「アリエ?!」

「アリエちゃん?!」

「アアア、アリエさんっ!?」

 いきなり服を脱ぎ出したことへのツッコミが皆からでる。


「ん? どうしたの?」


「どうしたもなにもっ! みんなが見てる前でいきなり脱ぎださないでください!」

 蕾がものすごく声を荒げる。


「別にいいじゃん〜、減るもんじゃないしさ!」


 たしかに言う通りだ……。


「よくないです!

 空君も悠真君もガン見してないで!」


「あ……う、うん! ごめん!」

「あぶねぇ……いきなり過ぎて意識が飛びそうだったぜ……」


「ね〜、みんなでながしっこーー」

「しません! 空君も悠真君もここから離れて!」


 普段の蕾からは予想外できないくらい大きな声と強い力で僕と悠真は夕方に魚をとった川まで押しだされた。


「空君も悠真君も私が来ていいって言うまで来ちゃだめだからね!」

 蕾は僕達にそう言うとアリエの元へ戻って行った。


 僕と悠真は川原に腰をおろす。


「……蕾ちゃん凄い慌ててたな」

「同性なのにね」

 たしかにあの慌てようは凄かった。


「いや〜、それにしてもアリエちゃん凄かったな」

 悠真が笑いながら言う。


「僕もあんなとこでいきなり脱ぐとは思わなかったよ……」


「いや、それもすごかったけどそれより胸が凄かったな。

 あの幼い頃からは想像できない美しいものをお持ちだった」


「…………」


「な、なんだよ。空も男ならわかるだろ? 大き過ぎず小さ過ぎずの美しさが!」


「まぁ否定はしないけど……」


「だよな、さすが空!」

「そんなことでさすがって言われても嬉しくないよ……」


 その時いきなり背後から声が聞こえたーー、

「ふ〜ん、私のことそんな目で見てたの〜?」


 こ、この声は……。


「ア、アリエ……?」

「アリエちゃん……?」


「うふふふふ、空も悠真もお年頃だね!」


(お、怒ってない……?)


「まぁしょうがないよね、健全な男の子だったらそんな話しをしててもおかしくないって」


『……助かったぁ』

 僕と悠真は一気に肩の力が抜ける。


「それにしても私が声かけたときよ空達の顔! 思い出すだけで涙がでるよ!」

 アリエはお腹を抱えて大爆笑している。


「これが私だったから良かったけど、蕾だったらどうなってたかわかんないよ〜?」


 たしかに蕾は容赦しなさそうだ……。


 ガラガラッーー!

「きゃぁぁ!」


 拠点の方から何かの崩れるような音と共に蕾の悲鳴が響き渡った。


「蕾?!」

「蕾ちゃん?!」


 クソッ、こんな時に敵かーー?

 僕と悠真は慌てながらも全力で拠点へ走る。


 唯一アリエだけが落ち着いていた。


「どうしたんだ蕾!」

「大丈夫か蕾ちゃん!」


 僕と悠真がそこで目にしたのは、バラバラに別れた浴槽であったレンガとーー、あられもない姿の蕾だった……。


「あ、いや……悲鳴……が、聞こえた……から」


 そういいながら隣にいた悠真の方に目を向けると、鼻血を流し立ったまま絶命していたーー。


 なん……だと……。


 あまりの衝撃に声を出せずにいた蕾が、

「い、いやぁぁぁぁぁあ!!

 空君のエッチ! 変態!」

 特大の声で悲鳴をあげ罵声をあびせてくる。


 でも、なんで俺だけー! 悠真も見たのに!


 冷静さを失った蕾はケーシスを発動させる。

 蕾の周囲に風の刃が発生し、その刃がこちらに向かって飛ぶー!


 バシュン!


 風の刃が地面に鋭い傷跡を残す。


「ちょ、ちょっとまって蕾!

 それ当たったらシャレにならないって!」


 そんな僕の声は蕾にーー、届かなかった。


 シュンシュンシュンー!


 次々と風の刃が飛んでくる。

 逃げなきゃ死ぬ……!


「悠真、起きろ! 起きなきゃ死ぬよ!」

 鼻血を流したまま立ち尽くしている悠真に声をかける。


「はっ……! 俺は……さっき天国を垣間見て……」


「そんなこと言ってるとほんとの天国見ることになるよ!」


 こんなやり取りをしているうちにも風の刃は飛んで来ているーー!


 僕は悠真の手を引っ張り川の方へ逃げ出したーー。


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