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第7話 旅の幕開け


 おいおい……うそだろ……。

 現実に戻れてない……?


「空君? 寝れなかったの?」

 蕾が不安そうにたずねてくる。


 いや、そんなはずはない。確かに寝たはずなんだ。


 でもここは寝れなかったことにしてもう一度……。


「あぁ、ごめん。最近寝てばっかりで……もうちょっとまってね」

 僕は再び眠りにつく。


 ピリピリピリピリピリピリピリ!


 目を覚ましたそこに広がっていたのは、アドリームでの僕の部屋だった。


「うそ……だろ……」

 やっぱり現実に戻れない。


「空、どうしたんだよ。まさか戻れないとか言わないよな?」

 悠真は引きつった笑顔をしている。


「戻れないんだ……2回寝て確かめたけど……」


「まじかよ……どけ、空。俺が試してみる」

 今度は悠真がベッドに入る。


「空君、現実に戻れないってほんとなの?」


「ほんとだよ、今までこんなことなかったのに……」


「そんなの嫌だ!」

 蕾が取り乱す。それも当然か、現実に戻れなくなったんだもんな。


 でも、なんで急にこんなことにーー。現実とアドリームを繋ぐ実験のせいで不安定になっているのか……?


「くそっ! 戻れねぇよ!」

 さっきまでベッドで寝ていたはずの悠真が飛び起きる。


「やっぱりだめか……」


 どうやれば現実に戻れる……?

 やっぱり組織が絡んでるとしか思えない。


「空達、私は情報収集にーー」

 アリエがそう言いかけた時、


 ピンポーン


 インターホンが鳴った。


「お客さんかな? ごめん、ちょっと行ってくるね」

 アリエは階段を降りて玄関へ向かって行った。


「どうしよう、私達現実に戻れないの?」


「今のところ僕の知る現実へ戻る方法はそれしかないんだ。でも他にも現実へ戻る方法があるかもしれない。

 例えば、さっき話してた組織の技術……それを知ることができれば僕達は現実に戻れる」


「でもその組織は地球を支配しようとしてるんだろ?!

 そんな組織の技術を知るってことは、組織と戦わなきゃ無理だろ!」

 悠真は声を荒げる。


「そうだね……でも、今のところそれしか現実に戻る方法が分からないんだ!

 戦わなきゃ永久に現実に戻れない!」


「まじかよ……殺されるかもしれないんだぜ? 正気か?」


「至って正気だよ」

 

「いや……殺されたくない……」

 蕾は震えている。


「2人がこの夢に入ってくることを許可したのは僕だ。僕が許可しなければこんなことにはならなかった……。

 これは僕の責任だ、僕がかたをつける。2人とも戦う必要はないんだ……待っててくれればいい」


「まてよ、空! 俺はーー」


 バゴォッ!


 いきなり下の階からすごい音がした。

 それを聞いた僕達は階段の方へ急ぐーー。


「ちょっとなんなのあんた!

 人の家勝手に壊さないでよ!」

 玄関でアリエが1人の男に対して声を荒げていた。


「いやいや〜、アリエさん。さっきから言ってるでしょう?

『地球人を匿ってるならあなたも殺す』って。死にたくなかったらはやく地球人だしてくださいよぉ」


 地球人ーー、僕達のことか!


「地球人なんて聞いたこともないよ! なに勝手に殺すとかいってるの!」


「とぼけるな!」


 バァンーー。

 玄関が殴られ、すごい音と共に吹き飛んだーー。


「組織からあんたが地球人と仲良くしてるのは聞いてんだよ。

 これ以上白を切るなら、まじで殺すぜ」


 組織! やっぱり関わっていたのか……それにしてもバレるのが早過ぎる。


「組織? なんのことを言ってるの?」


「ちっ。まだ白を切りやがるか。まぁいい、冥土の土産に教えてやる。

 なんかなぁ、実験で地球への道を繋ごうとした、時地球とアドリームとの狭間の空間を行き来している生命体の反応があったそうなんだよ。しかも何回もな。

 その生命体が地球からアドリームの何処に行くのかを観察したら……アリエさん、あんたの家だったそうだぜ!」


 僕かーー。僕が何回も行き来したからアリエにまで迷惑が! くそっ!


「ヘぇ〜、まぁあんたがなにを言おうと私は地球人なんて知らないよ。これ以上しつこいようだったらこっちも容赦しないよ」

 しかしアリエは一歩もひかない。


「お話は終わりだ……じゃあ殺すぜ!」


 男がなにも持っていなかったはずの右手に拳銃を出現させる。


 ケーシスか! しかもあんなにはやく正確な銃を具現化できるなんて相当なイメージ力だ!


 男が引き金を引こうとしたその瞬間ー、


「閉じ込めろ、水牢獄アクアプリズン


 空気中にいきなり水が出現して球体となり中心に男を包み、閉じ込めた。


「ガボッ……?!」


 男はもがき、苦しそうな表情をしながらも引き金を引いた……が、水に弾の勢いが殺されアリエには届かない。


(くそっ! こんなケーシスを発動できるなんて思わなかった……油断した……ぜ)


 男は息がきれたのか、さっきまでもがいていた身体はもう動かなくなっていた。


「私のことなめたら、こうなるんだぞっ☆」

 アリエは勝利の笑みをうかべていた。


 アリエを怒らせるのはやめよう……。


 とりあえず、もう行っても大丈夫かな。


「アリエ、そっちに行っても大丈夫?」


「あぁ、空達みてたの? ちょっとこわかったかな……恥ずかしい〜」

 アリエはきゃ〜と恥ずかしがる。


「すごかったぜアリエちゃん」

「かっこよかったですよアリエさん!」


 みんなは言葉遣いなんて気にしてなかったようだ。


「えへへ、ならよかった〜」

「それよりアリエ、この男は組織の……」


「そうだね……完璧に空達の存在がばれていたよ」


「ごめん、僕のせいでアリエまで」

 本当に僕が現実とアドリームの行き来なんてしなければ……!


「いーのいーの! 空は大切な家族なんだから。もちろん蕾ちゃんも悠真もね!」


「アリエちゃん……」

「アリエさん……」


「でも、これで組織と戦わなきゃいけないことが確定しちゃったね」


「それは……僕1人でやるよ。僕の責任だから」

 せめてもの償いをしなければーー。


「なーに言ってんの空!

 家族だし友達でしょ。私も一緒に戦うよ」


「そうだよ空君。私達友達なんだから! 1人で戦うなんて言わないで!」


「もちろん、俺も戦うぜ」


 みんな……。

「でもこれは……」


「つべこべいわない! 私達は友達であり家族なの! みんな一緒に戦うの!」

 アリエが声を張る。


 僕は本当にいい友達をもったよ。


「みんな、ありがとう……」


「それはそうとこの男、どうするよ?」

 悠真が男を指でさしたその時、水でできた球体の中にいた男が透明になっていき……ダイヤモンドのような輝きを放つ、トランプのダイヤのような形をした物質に変わった。


 それを見たアリエはケーシスを解除する。


「あ〜、死んじゃったね」


『え……?』


 アリエはさらっと言ったが確かに『死んだ』って言ったよな。


「アリエちゃん、この人死んじゃったの?」

 青ざめた顔をした蕾が尋ねる。


「うん、死んだよ?

 でもどうせ生き返るんだろうし、べつにいいでしょ、1回くらい死んでも」


 生き返る……?! 1回くらい?


「アリエ、この人生き返るの?

 それに1回くらい、って……?」


「そんなに驚くってことは地球とは違うのかな?

 アドリームの生命は4回までなら死んでも生き返れるんだ。でも5回死んだらもう生き返ることはできない。

 それと、死んだら『カルマ』って物質に変わるんだ。この状態になったら敵意のあるものには触れられなくなる。さらにこの状態になってから3分経つとその場で生き返るか、1番近くにいる仲間の元へ行き生き返れるかを選べる。

 5回死んだ場合、カルマは出現するけどそこで終わり。生き返ることはないんだ」


「そんなことができるんだ……」

「ほんとに不思議な世界だな」


 フッーー。男のカルマが消えた。

 ということは仲間の元で生き返ったということか。


「あの男は組織にこのことを伝えると思う。とにかくここに居るのは危険だ、すぐに準備をしてここを出よう」

 アリエは真剣な顔で言った。


「ここに居るのが危険だ。って言ってもどうすれば……」


「とりあえず商人の街、フィストに行こう。そこで旅の支度を整えるよ」


「私達無事に現実に戻れるのかなぁ……


「わからない……けど、戦わなきゃ戻れないんだ。みんなで頑張ろう」


「それもそーだな。でも俺はRPGみたいで少しワクワクするぜー!」


「それじゃあみんな、出発するよ」


『おー!』


 こうして僕達の現実へ戻るための旅が幕を開けたーー。


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