表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

第9話 創現武器


「はぁ……はぁ……ほんとに死ぬかと思った……」

「俺は1回死んだけどな……」


 僕と悠真は全速力で川へ逃げて来た。


 それにしても蕾のあのケーシス、相当強いんじゃないか?


「いや〜、お疲れ様!」

 アリエはまた大爆笑している。


「だから言ったでしょ? 蕾はどーなるかわからないって」


「アリエはなんで蕾が敵に襲われたわけじゃないってわかったの?」

 アリエは蕾の悲鳴を聞いた時も慌てていなかった。


「私がお風呂に入ってる時に浴槽にヒビが入ってるのが見えたの。

 次の人が入ったらきっと割れるなぁ、って思ってたから蕾の悲鳴は浴槽が割れたからだろうなぁ。って」


「わかってたなら言ってよ……」

 言ってくれればあんな目には。


「いやぁ、ごめんごめん。でもいいもの見れたでしょ?」


「そのいいもののせいで俺は危うく天国に行くところだったんだぞ……」


 鼻血流したまま立ち尽くしてたもんな……。


「じゃあ引き止めた方が良かった?」

 アリエはニヤニヤしながらこっちを見る。


「いや、あのまま行かせてくれてありがとうございました」

「素直でよろしい!」


「僕は引き止めてくれた方が良かったよ……」

 おかげで僕だけ変態扱いに……。


「まぁ空! いいもん見れたし良かったじゃねぇか!」

 悠真は笑いながら僕の背中をバンバンと叩く。


「悠真はもう少し申し訳なさそうにした方がいいと思うよ」


 まぁ確かに蕾は凄かった。

 なにが凄かったって、胸も大きいけど特別大き過ぎる訳じゃなくて、脚も細過ぎず太過ぎずちょうどいい感じで……とにかく凄かった。


 ダメだ、思い出しただけで鼻血が出そうだ。


「じゃあ空は蕾の裸はなんの魅力もなかったって言うの!?」


 なんでこんなことを大声で聞いてくるんだ。


「いや、魅力がなかったわけじゃないよ。むしろあり過ぎて困ったというか……」

 僕は正直に答えた……が、悠真とアリエは笑いを堪えている。


「なんでそんなに笑いを堪えてるの?

 僕だって男なんだから女性の裸にくらい興味持つよ!」


 相変わらず悠真たちは笑いを堪えている。


 その時、アリエが笑いを堪えながら僕の後ろに向かって指をさした。


「ん?」

 後ろに振り向いてみる。


 振り返るとそこには顔を真っ赤にしてプルプルと震える蕾が立っていたーー。


「空君? さっきは私も言い過ぎたなぁって思って謝りにきたのに……」


「いや、まって蕾。誤解……」

 タイミングが最悪すぎる!


「空君のへんたい!」


 再び蕾のケーシスにより風の刃が発生する。


 あっ、これ死んだ……


「まぁまぁ蕾。ちょっと落ち着きなよ」

 アリエが蕾をなだめるように声をかける。


「これが落ち着いてられますか!

 人の裸の話なんてして!」

 

なんかその言い方だともっと変態みたいに……。


「別に馬鹿にしてたわけじゃないんだし、むしろ空は褒めてたよ?

『めちゃくちゃエロい身体してた』って」

 アリエはニヤニヤしながら僕を見る。


「なっ……?!」

 ますます蕾の顔が赤くなる。


「言ってない! 褒めたのは本当だけどそんなこと断じて言ってないよ!」

 アリエ! なんでそんな嘘つくんだ!


 ヒュウウウーー。

 蕾の周囲に風が集まってくるーー。


 僕は死を覚悟した……その時、いきなり蕾が倒れた。


 え……?


「蕾?! アリエ、蕾が!」


「これは魔力の使い過ぎからくる疲労だね。時間が経てば目を覚ますよ。あれだけ大きな力を使えばそりゃこうなるよ〜」


 魔力の使い過ぎ……か。まぁ目を覚ますならよかった。


「とりあえず私が蕾をみておくから空達もお風呂入ってきなよ」


「そうさせてもらうぜ」


 僕と悠真は浴槽をもう一度つくってアリエにお湯を貰いお風呂に入る。


「こんな旅の途中なのにこんな風呂に入れるなんてなぁ」


「ほんとケーシスって便利だね」

「だなぁ」


 そんな話をしながら僕達はお風呂を満喫した。


 お風呂からあがった時、川の方からアリエの声が聞こえた。


「もうあがったー?」


「あがったよー」


 返事をすると川のほうからアリエ達が戻ってきた。


 とりあえず蕾に謝らないとな。

 でも褒めただけなんだけど……。


「蕾……さっきはほんとごめん」


「ううん、こっちこそ慌ててケーシス発動しちゃってごめんね……」


 あれはほんとに死ぬかと思った……。


「目を覚ましたあとアリエさんがちゃんと説明してくれたの。誤解しちゃってほんとごめんね……」


 アリエがピースをしながらこっちを見ている。


「わかってくれたならよかった……」

 僕はホッと胸を撫で下ろした。


「みんな疲れただろうし今日はもう寝ようか」


「そうだな。天国に行きかけて疲れたぜ」


「悠真くん……!」

 蕾は顔を真っ赤にする。


「ふはは、ごめんごめん」

「僕はほんとに疲れたよ……」


「よし、みんなおやすみー!」


『おやすみ〜』


 僕達はケーシスでできたベッドと布団のおかげでぐっすり寝ることができた。


 不思議なことに違和感は感じなかったーー。


 そして朝がくるーー。


「ん〜、もう朝かぁ」

 周りを見るとまだみんな寝ているようだ。


 やっぱり地球には戻れないんだな……。


 僕は木の枝と草を拾い集め、暖を取るために火を付ける。

 このマッチのような火でも役に立つんだな……。


 でもみんなはもっと凄いケーシスを発動できるようになってる……。

 僕ももっとイメージを固めないとな。


 目の前でゆらゆらと燃える炎を見ながらイメージを固めるーー。

 それにしても炎ってよく動くな……。


 その時、頭の中のイメージが固まったような気がした。


「よし、やってみるかーー!」

 僕はイメージを高めケーシスを発動させる。


 昔噺で聞いたことがあるけどこんなだったかなーー、


「ゆらめけーー、狐火」


 ポポポポポン


 空の周りに親指程のサイズの火の玉が何個か空中に出現する。


「やった! 火も大きくなってるし何個もだせてる!」


 数えてみると6個の火の玉が浮かんでいた。


「ん〜、大きな声だしてどうしたの空君」

 蕾が目を覚ます。


「やっとちゃんとしたケーシスが発動できたんだ!」

 そう言って僕は蕾に火の玉を見せる。


「おお! やったね、空君!」

 蕾は自分のことのように喜んでくれた。


「んあ〜、もう朝かぁ?」

「よく寝たぁ〜」

 アリエと悠真も起きたようだ。


「おお、空もついに技っぽいケーシスを!」

「おめでと〜」


「ありがとう」

 正直こんなケーシスじゃあんまり戦えそうにはないけど、なにもできないよりはマシだろう。


「よし、それじゃあフィストに向かうよ!」

『おー!』


 僕達は再び歩き始める。


 みんなそれぞれのイメージを固めているのだろう。また無言が続いていたその時……

 スライムでできたようなからだをしたかわいい生物が目の前に現れた。


「な……なにこれ?」

 思わず口から言葉がでる。


「プニョンってモンスターだよ。

 人に危害を加えたりしてくることはないから安心して」

 

 危害を加えないなら安心かな。


「モンスターなんているんだね」


「いっぱいいるよ〜」


「地球でいう動物みたいなもんか」


「か……かわいい!」

 蕾はプニョンのもとへ駆け寄る。


 プニョンはそんな蕾をみてプルプルと震えている。

 怖いんだろうか……。


 蕾がプニョンに触れようとした瞬間ーー、


 パシュン!


 プニョンは水に変わり弾け飛んだ。


「ひゃあっ?!」

 いきなりの弾け飛んだプニョンの水が蕾にかかる。


「プニョンは自分の身に危険が迫ると水になって弾け飛ぶんだ。

 またしばらくするとその水が集まって再生するよ」


「先に言ってくださいよ〜」


「だって蕾すぐ触りに行ったから〜」


 蕾は自分の周りに風を発生させ濡れてしまった髪や服を乾かす。


「そんな使い方もできるんだね」

「昨日お風呂に入ってる時に思いついたんだ」


 お風呂……思い出しちゃダメだ、平常心平常心……。


 僕達は気を取り直して歩き始める。


 そしてまたしばらく歩くと、海とそこに隣接する街が見えてきた。


「もうすぐでフィストに着くよ!」


 そこから20分程歩き僕達はフィストの門の前に着いた。


「着いたよ〜! みんなお疲れ様〜」

 門をくぐるとそこには大きな市場や様々な店が広がっていた!


「うひょ〜! でっかい市場だなぁ! 面白そうなのがいっぱいあるぜ!」

「果水のお店があるよ!」

 悠真も蕾も大はしゃぎだ。


「とりあえずしばらく滞在するための宿をとりにいくよ〜」


 アリエが向かったのははそこそこ大きなホテルのような建物だった。


 でもこんなところに泊まるお金なんて僕達は持ってないぞ……?


「今思ったんだけどお金はどーするの?」

「ふっふっふっ、私にまかせなさい!」

 そういうとアリエは黒色のカードを懐から取り出す。


「これは?」

「これはアドニムっていうクレジットカードだよ。しかも限度額無しのブラックだよ!」

「限度額なし?!」

「まぁお金のことは気にしないでよ」

「アリエがそういうなら……」


 クレジットカードのことはよくわからないけど、限度額なしなんて相当相当凄いんじゃ……。


 アリエは慣れたかんじでホテルの予約を済ます。


「よし、これでオッケー!

 空と悠真、私と蕾でそれぞれ1室ね」


 僕達はエレベーターに乗り部屋に向かう。

 僕達の部屋の隣の部屋がアリエ達の部屋だ。


「とりあえず荷物とかを置いたら買い物に行くよ〜」

『は〜い』


 荷物を置いた僕達は再びフィストの街にでる。


「買い物ってなにを買うの?」

「とりあえず武器かな。ケーシスだけで戦うのはキツイと思うからね」


 たしかに僕の今できる技は狐火しかないし、あれだけじゃ戦えないよなぁ……。


 僕達は武器屋へ向かう。

 そこには大小様々な武器が並んでいた。


「すげぇ……武器ってこんなに種類があるんだな」

 悠真が驚嘆の声をあげる。


「まぁね〜、でもちゃんとした武器を使いこなすにはちゃんとした練習をしなきゃダメだから、空達には扱いやすい創現武器そうげんぶきから選んでもらうよ」


「創現武器?」


「創現武器はイメージを込めることで決まった形に具現化する武器のことを言うの。込めるイメージによって重さが変わったり付加効果がついたりもするし、武器の初心者でも扱いやすいんだ。

 それに、イメージを込めなければ普段はアクセサリーとして持ち運びができるんだよ」


 イメージを込めると武器になるアクセサリーって感じなのかな?


「そんなすごい武器があるんだ。じゃあ持ち運びにくい普通の武器を使う人はいないんじゃないの?」

 携帯性の高い武器があるならみんなそっちを選ぶと思う。


「そういうわけでもないんだ。イメージを込めることができない人もいるし、それにうまく使いこなせるならちゃんとした武器のほうが強いんだ。普通の武器にもケーシスで付加効果をつけることができるしね」


 普通の武器にも普通の武器でいい所があるってことか。


「へ〜、でも僕達は武器を使ったことがないから創現武器の方がいいってことだね」


「そーゆーこと。みんな使いたい武器とかはある?

 イメージを込めた時形になるんだけど」


「使いたい武器、かぁ……」

 いきなり使いたい武器なんて聞かれてもそんなこと考えたことないしなぁ……。


「俺はハンマーかな」


「私は弓を使ってみたいです」


「みんな決めるの早くない?」

 普通の高校生は使いたい武器をすぐ答えられるのが普通なのだろうか。


「俺はバットにしようかなぁって思ったんだけどもっとインパクトの強いやつのほうが武器としていいかなぁ、って思ったからよ」


「私は弓道をしてみたかったから」


 みんな理由があるんだな。


「僕は……どうしようかなぁ」

 僕は何かを使ってみたいと思ったことがないし、武術のひとつも習ってこなかったしなぁ……。


 僕が使ってた物身の回りの物で武器になりそうなものなんて……1個だけあったな。


「包丁に似た武器ってある?」


「包丁に似た武器……短剣が1番近しいかな」


「じゃあ短剣で」

 もし戦闘できなくても料理に使えそうだしね……。


「お客様、本日はどのような武器をお求めですか?」

 店員が声をかけてくる。


「創現武器を買いたいんだけど」


「ではこちらへどうぞ」

 店員に連れていかれた部屋には様々なアクセサリーが並べられていた。


「これ全部創現武器なの?」


「そーだよ〜。みんなどんなアクセにしよっか?

 せっかくだしお揃いのアクセサリーがいいよね〜」

 

「べつになんでもいいぜ」

 悠真はアクセサリーに関してはそんなに興味がなさそうだ。


「私耳にアクセサリーつけてみたいなぁって思ってるんですけど、ピアスとか怖くて……」


「じゃあイヤーカフにしよっか。

 それなら怖くないでしょ」


 イヤーカフか、無くしたりしなそうでいいな。


「でもみんなはイヤーカフでいいの?」

 蕾が不安そうに尋ねる。


『なんでもいいよ』


「じゃあイヤーカフがいいです!」

 蕾の希望によりイヤーカフとなった。


「イヤーカフ型を4つ。短剣型とハンマー型と弓型と槍型で〜」

 アリエは店員に注文する。


「イヤーカフ型の短剣型だけ長さの形態変化可能型がありますがいかがいたしましょうか?」


「形態変化可能型で〜」


「かしこまりました。少々お待ちください」

 そういうと店員はイヤーカフ型のアクセサリーが並ぶ棚へ向かって行った。


「よかったね〜空、形態変化可能型なんて滅多にないんだよ?」


「形態変化可能型って?」


「普通の創現武器はイメージを込めると短剣型だったら短剣の形にしかならないんだ。

 でも形態変化可能型だったら短剣の形からさらにイメージを込めることで長さを変えたり厚さを変えたりできる。いまからくる空の短剣型は長さ変化ができるよ。

 形態変化可能型は武器型ごとに変化できることが違うし、同じ武器型でも変化できることが違うこともあるんだ〜」


「空だけずるいぜ」

 悠真が拗ねた顔をする。


「短剣型以外はなかったんだししょうがないよ。形態変化可能型自体がレアだもん」

「空君うらやましいな〜」


 そんないい武器僕に使いこなせるんだろうか……。


「お待たせ致しました」

 店員が4つの銀色のイヤーカフを持ってくる。


 とても小さいが全体にとても細かい模様が彫ってありとても綺麗だ。

 イヤーカフの中心にはなにかをはめるような穴が空いている。


「みなさまのイメージの色は何色でしょうか?」

 店員が尋ねる。


「僕は赤」


「私は緑と白です」


「俺は紫だ」


「私は青〜」


「緑と白、どちらに致しましょう?」

「う〜ん……白でお願いします」


「かしこまりました」

 そう言うと店員はそれぞれのイメージの色と同じ色の宝石をイヤーカフの中心にはめる。


「こちらになります」


 さっきのイヤーカフの中心に宝石がはまりとてもキラキラと、それでいて静かに輝いている。


 もう武器ってのを忘れるくらいの芸術品だな……。

 蕾はとても感動しているようだ。


「ありがとう、値段はいくらになった?」

「5個で1000万ニムになります」


『1000万?!』


 1000万ニムって……。こっちの通貨の価値はよくわからないけど相当すごい額なんじゃ……。


「カードで」

 アリエはなにも驚かずにカードを出し、イヤーカフを受け取る。


 アリエって実はとてもすごい人物なんじゃ……。


「はい、みんな!」

 アリエはみんなにイヤーカフを配る。


「ありがとう」

「ありがとな」

「ありがとうございます!」


「いいのいいの、戦うために必要なものなんだから!」


 そしてそれぞれのイヤーカフを耳につける。

「みんなイヤーカフにイメージを込めてみて〜」


 僕はイヤーカフに炎のイメージを込める。


 イメージを込めた瞬間、イヤーカフは粒子のように細かくなり短剣に変わったーー。


 短剣は紅く、そして重厚な光をはなっている。


 僕はその短剣を手にとる。


 短剣はメラメラと熱気を放っていた……


 これで、僕達は戦うんだーー。


 僕は改めて【覚悟】を決めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ