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日記⑦ 残酷な真実
【□△年□月○日】
こんな声なくなってしまえばいいのに。
私じゃなかった。求められていたのは私じゃなかったの。
彼が愛していたのは、私よりもずっと美しい人。
赤いバラの似合う、青い瞳のお姫様だったわ。
私と同じ年齢の、私と似た背格好の、この国の二番目の王女様。
私の声は、そんなに似ているの?
いつも私の体を抱き締めるのは、私の姿を見ないためだったのね。
私が勇気を振り絞って初めて呼んだお名前も、結婚式での誓いの言葉も、毎日のお見送りやお出迎えも、全部。
きっと、彼の中では愛しい人の言葉として受け取られていたのね。
馬鹿みたいだわ。
私がどれだけあの人を愛していても、どれだけ言葉を尽くしても、私の思いは彼には届かない。
声だけは確かに届いているのに、私の気持ちは受け取ってもらえない。
――私を見て欲しいの、あの人の身代わりじゃなくて、私を見て。