日記② 求婚
【□□年△月×日】
私の結婚相手が決まったとお父様から告げられた。
巷では恋愛結婚が最近の主流のようだけれど、身分制社会においては恋は二の次。
互いの家柄や交友関係、財産や仕事関係など、双方の釣り合いが取れていて、利害関係が問題になるわ。
ああ、神様。どうか相手の方を好きになれますように。
私を一番に愛して欲しいなんて我儘は言わないわ。
でも、お互いに支え合っていけたら素晴らしいと思うの。だから、好きになれそうな人だったらいいのにと願うわ。
【□□年△月○日】
私の婚約者になった方は、騎士様だった。でも、この間の舞踏会では会話どころかお会いしたこともない、近衛騎士の方。
彼の話では、あの舞踏会で私を見初めたのですって。
あの会場には、私よりももっと美しい方や可憐な方もいらっしゃったし、同じ場所にいた私の友人達の方が、彼の目に留まる容姿をしていたと思うの。
一目惚れなんて、私の容姿ではありえない。じゃあ、なぜ?
今度お会いしたら尋ねてみよう。
【□□年△月□日】
彼にお会いした。
精悍な顔立ちで真面目そうな方。素敵だと思った。
なぜ私を見初めたかと尋ねたら、彼は困ったような顔になって黙り込んでしまった。
私、何かいけないことを言ってしまったのかしら。
私、彼のことを好きになれるかしら。
彼は、あの会場のどこで私を見初めたの?
私は、彼のことを知りたいわ。