日記⑩ 旦那様と娘
【△□年○月×日】
娘が生まれた。
外見は私にそっくり。使用人たちは労って、産まれた娘を誉めてくれるけれど、心配だわ。
旦那様は、娘を愛してくださるかしら。
【△○年□月×日】
旦那様が娘に甘い。
可愛がってくださるのは嬉しいけれど、何をしても叱らないのは困るわ。
……というか、ずるい。ずるいわ、旦那様ったら娘には笑顔を見せるのよ。
私からは視線を逸らすのに!
娘がするつたないおしゃべりには、ちゃんと目を見て会話をするの。
……旦那様に対して、そろそろ私、我慢の限界よ!
【□△年×月□日】
――私、今日から旦那様に対して、ちょっとした働き掛けをすることにしたの。
だって!旦那様ったら、娘を『可愛い』って、ずーっと抱っこしてるんだもの!
ずるい!私だって旦那様に甘えたい。私も、かわいいって言われたい!
旦那様が、私を見てくれないのなら、私にも考えがあるの!
もう旦那様が私を無視出来ないように、色々してやるわ!
でも、嫌われたくないから、慎重にするつもりよ。
正攻法でダメなら、脇から攻めていくわ。
だって、努力もしないで諦めるのって悔しいもの。
小さなことからコツコツと、していくの。いつか旦那様に、私自身を見てもらうために。




