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新たな始まり※旦那様視点
「この色は、私に似合わないわ」
自分の再婚が決まった後、程なくして部下である騎士の一人に娘が嫁ぐことになった。
その際、嫁ぎ先に持たせていくための装飾品を、出入りの商人にいくつか用意させたが、娘はそれを見て言った。
「お父様、この装飾品はとても素敵。でも私には華美過ぎて、宝石に私が負けてしまうわ」
そう言って、実際に次々と身に着けて見せてくれた。
確かに、自分が選んだ装飾品は、娘の容姿には似合っていなかった。
娘には、白金よりも金が似合うことを初めて知った。
娘は、すべての装飾品を自身で選んでいった。
柔らかな色合いの、可愛らしいものが多かったが、それが娘の茶色の髪とスミレ色の瞳によく似合っていた。
自分がいくつか目星をつけておいたものは、宝石の色も意匠も、まったく娘に似合わなかった。
「お父様、大好きよ。私は幸せだったわ」
妻そっくりに成長した娘は、そう言って嫁いでいった。
――それからしばらくしてから、自分が恋い焦がれて止まなかった『本物』が、ようやく私の妻となったのだった。