表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声を無くした金糸雀は  作者: 毛布子
12/18

諦めた恋を断ち切る時間※旦那様視点

 隣の国に嫁がれたこの国の第二王女は、美しい人だった。

 近衛騎士として王に忠誠を誓いながら、心はあの方に捧げていた。

 近衛騎士は王を守るための兵隊だった。王宮で勤務は、華やかなものに見えて、実際は危険であり、綺麗な仕事ではなかった。


 そんな中で、あの方だけは清廉だった。王宮に赴くたび、姿を探した。姿を見るだけで、いや、声を聞くことだけでも幸せになれた。王の理不尽な命令にも耐えられた。


 もちろん、これが叶わぬ恋であることは知っていた。

 年齢も身分も、あの方とは釣り合わない。

 だから、諦めた。

 諦めて、違う女を妻にした。


 諦められると自分を騙し、誤魔化していた。


 そうしてあの人を思いながら、ずっと生きてきた。夜の闇の中だけ、夢のなかだけでしか手に入らない、高貴な方。


 ――愛しい、私の姫君。




………………………………………………………………



「この度の功績を讃え、お前には新たな妻を与えようと思う」



 数年前から始まった隣国との戦。

 自分は王弟とともに最前線で戦った。戦は半年前に、我が国の勝利で終わりを迎えた。


 妻が死んでもうすぐ十年、娘も結婚適齢期となった。

 もう五十も過ぎ、あとは老いていくだけだと思っていた自分に、いったいどんな物好きが嫁いでくるというのか。


「ぜひお前に降嫁させたい者がいるのだ」



 玉座の主の表情は、跪く自分には見えない。……だが、彼が幼い子どもの頃から傍で仕えていた自分には、王が楽しそうな様子であることはわかっていた。



「――我が国の元王女であり、隣国の王妃をお前に与えよう。本人も納得しているし、出戻りだが、かまわないだろう。お前も再婚だしな」


「――!」


 あまりの衝撃に顔を上げてしまった自分を、人の悪い笑顔をした主が見つめていた。



「無能な王弟を守るために、わざわざ隣国まで行った甲斐があっただろう」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ