茶色いカナリア
亡くなった母に読んでもらった絵本の中に、カナリアの話があった。
澄んだ声をした、美しい小鳥の物語。
その話が大好きで、何度も繰り返し読んだ。
そんな私に、父がカナリアをプレゼントしてくれることになった。
屋敷に来た商人が、いくつもの鳥かごを並べる。
綺麗な声で囀る小鳥。黄色くて可愛い、唄う鳥。
どれにしようかといくつも鳥かごの中を覗き込んでいく。
その中に、一羽だけ色合いが違う鳥が混じってるのに気が付いた。
茶色に少し黄緑色の混じった小鳥。
『お父様、この子黄色くないわ』
カナリアは黄色いはずだと告げると、商人は私に言った。
『お嬢様、このカナリアは珍しい野性種なんですよ。飼育種とは色合いが違いますが、殆ど市場に出ないので、好事家には人気ですよ』
『……それなら、この子にするわ』
『黄色じゃなくていいのかい?』
お父様の言葉に、私は頷いた。
『だって、この子は私の髪と同じ色なんだもの。それに、綺麗な声で鳴くのには変わりがないわ』
私がそう言うと、お父様は納得してくれたみたい。
『大事に育てるんだよ』
そう言って籠を渡してくれたお父様の頬に、私はお礼のキスをした。