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第7話 憎みあう夫婦

 「セーレ、あの女性をお前はどう思った?」

 「どうって言われても、俺は余り見えなかったからなぁ。でも不思議な感じだったよ。まるで何か禍々しい物に守られている様な……パイモンもそう思ったんじゃないか?」

 「では俺と考えが同じか?」

 「うん、そうだね」


 状況は思っていたよりも厳しいのかもしれない。



 7 憎み合う夫婦



 「フィンランドって綺麗だよな」


 パソコンでフィンランドの観光情報を見ている俺を澪が呆れた顔で見ている。でもやっぱ北欧って綺麗だよな。街並みがカラフルで……是非観光に行ってみたいけど、パイモンに怒られそうだ。


 そんでついでと言っては何だけど、例の契約者っぽい奴も調べてみた。今の所、息子は平社員らしいけど、結局は父親の会社だ。社長の座は約束されてるんだろうな。


 出身大学もフィンランドで一番偏差値が高いヘルシンキ大学を卒業、根っからのエリートって訳だ。女の人の情報も違うサイトに載ってた。同じ大学で、かなりキャリア志向の強い人らしい。でも結婚したらラウリの家の事情で強制寿退社させられた後は子育て一辺倒なんだってさ。それもどうかと思うけどね。てかこういう男女平等的なのって海外の方が進んでるイメージなんだけどな。


 俺が調べて分かったのはこれだけ。元々パソコンだって基本触らないから、これだけ調べられたら十分。後はパイモンがやってくれんだろ。


 「フィヨルドってフィンランドだっけ?」

 「ノルウェーでしょ」

 「あ、そっか。あはは」


 しまった、澪の前で馬鹿を露呈してしまった。

 澪は複雑そうな表情をして、パソコンの画面を眺めている。話しはヴアルからある程度聞いたらしいけど……

 なんだか今回の契約者にも最終的にはボロクソ言われそうだ。傷つかないって言えば嘘になるけど、気にしない振りをするしかない。じゃなきゃ俺はショックで泣いてしまいそうだから。


 「ねぇ拓也……ヴアルちゃんがね、すっごく警戒してるの。アスモデウスの事」


 不意に澪の声が響いた。でも内容を聞いてなんだか胃の辺りがむかむかしてくる。返事をしない事に対して気にした様子も無く、澪は言葉を続けた。


 「近寄らない方がいいって言ってたけど、正直あたしはアスモデウスが悪い人には見えない」

 「悪い奴ではないと思うよ。俺は好きじゃないけど」

 「……そう」


 アスモデウスは命の恩人だ、こんな言い方は助けてもらって最低なのは分かってる。でも好きになれないのは本当。

 多分、アスモデウスが澪と契約してるからだろうな。不安なんだ、アスモデウスのせいで澪が危険な目に遭いそうで……俺なんかが言えた事じゃないけど、アスモデウスを狙って他の悪魔が一杯来そうで不安だ。澪が変わってしまいそうで怖い。

 だからあいつの事を好きになれない。でも悪い奴じゃない、それだけは分かる。


 「ストラス達は好きなのに、アスモデウスは嫌いなの?」

 「嫌いまではいかないよ。でも好きではない」

 「どうして?」

 「さぁ、多分生理的にじゃない?」


 理由は言いたくなくて誤魔化したら、なんだか酷い奴みたいになった。でも澪は何も言わなかった。俺を非難する事もしないし、アスモデウスを庇う訳でもない、ただ俯いただけだった。

 そうだな、悪い奴ではないよな。でも好きになれないんだよ、仕方ないだろ。


 「俺、今からマンション行くわ。今日フィンランド行くんだ」

 「あたしも行っていい?」

 「……別にいいよ」


 ***


 「あ、澪と拓也だー」

 

 ヴアルが俺に飛びついたのを抱き上げてリビングに向かう。リビングではパイモンがパソコンで何かを調べていて、それをストラスが眺めていた。そしてソファでアスモデウスは座って、ボーっとしていた。

 そんなアスモデウスの近くに澪が歩いていき、その光景に少しだけカチンとする。


 「なんだか澪アスモデウスに構ってばっか。つまんない」

 「見張っとけよヴアル、あいつが澪に何かしでかさないか」

 「常に見張ってるわよ~でもやっぱ怖いの。澪がサラの子孫って話を聞いちゃってから……」


 あー、パイモンから説明受けたな。サラって言う女性は澪の遠い遠い先祖だ。その先祖がかつてアスモデウスと契約して恋に落ちた。でもサラの父親がサラを政略結婚の駒として使おうとしたことに反発して結婚した夫をアスモデウスに命じて初夜の晩に絞め殺す事件を起こした。


 最終的にはアスモデウスは天使ラファエルによって地獄に戻されたけど、ショックで気が狂ったサラはラファエルを従えていた青年トビトを恨み、トビトを呪う為にアスモデウスの契約石を呪った。周囲に押されてトビトと結婚したサラが呪った物は子孫。つまり自分とトビトの子供……それは男児一人のみの出産しか許ず、それ以上の子供は何かしらの不幸でなくなるという事。


 でも子孫が途絶える事も許さず、生まれた男児は次の男児が生まれるまでは呪いに守られて死ぬ事が許されない。

 

その理由はいつ起こるか分からない最後の審判で、トビトの血の混じった子供をアスモデウスに殺させて自分たちの子孫の終焉を迎えたかったかららしい。そう考えると怖い女性だよな。


 でも澪のひいひい爺さんが黒魔術結社に入ってて、アスモデウスにかかったサラの呪いを解いたから、女の澪が生まれる事ができた。だからこそ、アスモデウスはサラの子孫の澪を守るために悪魔を裏切って俺を助けてくれた。


 澪がアスモデウスを気にするのは分かるよ。自分の先祖が契約してたから。良く分からないけど……


 「主、早速向かいましょう。今日中に出来れば決着をつけたいですね」

 「シトリーとヴォラクは?今日光太郎暇って言ってたんだけどな……メールしても返事こねぇし」

 「……あいつらは別の事を頼んでいます」


 パイモンはそれだけ言って、続きは教えてくれなかった。

 澪が付いていきたいって言ったから、ヴアルとアスモデウスも付いて来る事になった。警戒心丸出しのヴアルにアスモデウスがため息をつき、困った顔で澪がなだめていた。これからこういうやり取りが常習化するんだろうな。


 「でもさ、シトリーいなくて大丈夫なのか?聞き込みっつったらシトリーだろ」

 「そうですね。まあ大丈夫でしょう……今日は奴らの家に直接殴りこみに行くつもりです。ラウリとレイラは既に父親から家を貰って使用人数人と二人で生活しています」


 使用人すげえ!マジの金持ちってやっぱり雇うんだな。て、そうじゃない。


 「直接って……無理に決まってんだろ!」

 「それが無理ではないんですよ。本人たちに話を通せば何も無理な話ではない」


 だって契約してるのはラウリだろ?使用人やレイラにばれたら俺達は変質者でつまみだされるし、下手したら警察沙汰じゃないか。それをどうやって行くっていんだよ……

 パイモンが上手くやってくれる事を信じ、俺は後を付いて行く事にした。


 ***


 着いた先はプール付きの大豪邸。、そこのインターホンを押すのは躊躇われたが仕方無い。

 セーレが押して使用人が出て来るのを待っていると、出てきたのは二十代後半くらいの男性だった。スーツをピシっと着こなした姿は漫画に出てくる執事そのものだ。そいつは勿論見覚えの無い俺達に首をかしげ、取材はお断りと釘をさしてきた。でもそこはパイモンだ。正直にラウリに会わせろと言い放った。

 お前ハッキリ言いすぎだろ!?そんなの受け入れてくれる訳ねえじゃん!!


 「Ei kokousta koskevan miehesi aikataulu.(旦那様のスケジュールには会談のご予定はございませんが)」

 「En ole koskaan tavannut.(会談のつもりはない)Te oli sitoutumista kysymys.(あの二人の婚約に疑問を持っている)Laittakaa siihen.(どけ、力づくでも行かせてもらうぞ)」


 セーレに訳してもらってパイモンが脅しをかけるような言い方をしている事を知る。そんな言い方したら通報されるのが関の山だ。でも、もしかしたらパイモンの能力を使っているのかもしれない。

 パイモンの能力は絶対的な発言力。パイモンと口論になった相手は蛇に睨まれた蛙のように委縮してしまうらしい。

 パイモンが能力を使っているとしたら、相手は口論では勝てずに逃げるか従うかしかない。

 使用人は何かを考え込み、少し待ってくれと言って屋敷に入って行った。あ、逃げた。絶対通報するフラグだろこれ。


 「逃げなくていいのかよ……」

 「なぜ逃げる必要があるのです?あの男は私達を屋敷の中に招き入れる……絶対に」


 どうしてそう言い切れるんだ?

 それ以上パイモンは教えてくれなかった。後ろでは澪が不安そうな顔をしてて、ヴアルが澪の手を握り、アスモデウスはその後ろで待機していた。

 暫くして、そいつが戻ってきてなんと門を開けて俺達を招き入れた。それにパイモン達が礼を言って中に入っていく。慌てて俺も追いかけたけど、なんで入れてくれたんだ?


 「なんだって急に……何なんだあいつ」

 『調べたのですが、あの使用人はレイラと恋仲ではないかと言う噂があるのです。パイモンはそこを利用した、そう言う感じですね』


 使用人が後ろを振り返らないのと、日本語が分からないのをいい事に普通の声で堂々と話してたけど、こいつ不倫相手かよ。でも不倫しているってことはパイモン達の言う通り、本当にレイラには悪魔の力が効いてないってことだよな。


 屋敷に通された俺達は広い部屋の一室で待っていてくれとだけ言われて、使用人は部屋から出ていった。室内は沢山の絵が飾ってあり、金持ちならではの趣味だなと思いながら有名な画家かもしれないと言う期待を込めて絵をマジマジと見つめていると、絵の隅に名前が書かれているのを見つけた。全部同じ名前で、室内に飾られている五枚ほどの絵は、全て同じ画家の物らしい。


 「あの使用人だな」


 アスモデウスが俺の近くに歩いてきて、絵を眺めている。目の前に飾られてある絵には綺麗な女の人が描かれている。多分これレイラって奴だよな。パソコンで調べた奴と良く似てる。似顔絵なのか?


 「使用人ってさっきの?どういう事?」

 「ヴァルトって名前が書かれてる。あの使用人の名前さ。あいつは絵画系の専門学校を卒業してて、趣味は絵を描くことらしいからね。いつか画家になって有名になるのが夢らしい。使用人として働いているのはお金を貯める手段としてやってるだけらしいよ」

 「詳しいな」

 「パイモンが全部調べたんだ。どうやったのかは俺にも分からない」


 あいつ絶対ハッカーとかなれそうだよな。どうやってここまでプライベートな事を調べたんだ?


 使用人のヴァルトに出されたお茶を最初は睡眠薬でも入ってるんじゃないかと警戒したけど、ストラスが大丈夫だって言うから、それを飲んで待つ事三十分。いい加減待たされて少しだけイライラしていた所で部屋に入ってきたのは、厳格そうな男だった。流石外国人。遠くから見ても近くで見ても威圧感ヤバい。


 少しだけビビってストラスを抱きしめる腕に力がこもる。そしてソロソロとソファの中心から隅っこに座っているヴアル達の位置に避難。多分こいつラウリだよな。


 パイモンがラウリが座ったのを確認して、単刀直入で話を切り出した。


 「Onko rannerengas mistä sait sen?(そのバングルはどこで手に入れたのですか?)」

 「Mitä teet, että tulet kysyä? (そんな事を君は聞きに来たのか?)」

 「Kyllä. Niin tärkeitä.(はい、大事なことなので)」


 表情を変えずに淡々と自分の聞きたい事だけを述べるパイモンにラウリは苛立った表情を浮かべた。でもどうしてこのおっさんは俺達と話そうって思ったんだろう。


 俺だったら使用人が勝手に中に通した見た事もない外国人がいたら、絶対怖くて会いになんか行かないけどな……ラウリもぶつぶつフィンランド語で何か文句みたいなのを呟いてるから、もしかしたらヴァルトにいい様に言われたのかもしれない。


 いやでも使用人がそんなことしたらクビになっちゃうわけで……ますます分からない。その間にもラウリとパイモンの会話は進んでいた。


 「Sain varastossa. Mitä haluat tehdä valituksen?(店で手に入れた。何か文句があるのか?)」

 「Onko se todellista?(それは真実ですか?)」


 急にラウリが目の色を変えて、席を立ち上がる。

 それにビックリした俺と澪も少しだけ座っていた体勢が崩れた。ラウリは表情を歪ませ、息が荒い。パイモンが何を言ったかは知れないが、逆鱗に触れたみたいだ。


 「(何を聞きに来たのかと思えばくだらない。妻の関係者かと思えば、全く見当違いだ)」

 「(私は貴方達の関係者のようなものです。この世の存在ではない者を信じている者同士)」


 フィンランド語が分からないから、緊張しかする事なかったけど、空気が凍ったのは感じた。ラウリは顔を青ざめさせてパイモンの胸倉を掴んだ。ちょっ……急に何すんだよ!

 思わず手が出てラウリからパイモンを引き放したら、ラウリは余裕の無い表情で告げた。


 「Tämä on vain huhupuheiden ja hyppäät joku.(お前達の狂言を今回だけは大目に見てやる)Mutta heti kun ne ulos.(だからさっさと出て行け)」


 無理矢理部屋の外に出されて玄関まで連れて行かれる。その時、一瞬廊下で女性の姿を見た。間違いない、あの人がレイラだ。でも可笑しな事に、そいつはラウリを見て笑っていたんだ。全く愛情の欠片も無い様な眼で……その目が恐ろしくて声も出なかった。

 屋敷の外に追い出されて扉は固く閉じられた。一体これからどうすんだよーあの怒り方は簡単には許してくれないぞ。

 でもパイモンはしてやったり、どや顔をして屋敷を眺めている。


 「何どや顔してんだよ。入れねえんだぞ」

 「どや顔等していません。ただ焦ったラウリが事を起こすのを待っているだけです」


 事って……

 首を傾げるしかない俺達にストラスとパイモンだけは表情を変えず、冷めた目で屋敷に視線を送っていた。


***

 

 ラウリside ―


 「Layla!(レイラ!)」

 「Lauri Mikä hätänä?(どうしたのラウリ?)」


 あいつらは確実に私が何かしら悪魔と関わりを持っていると言う事を感づいている。契約石の事をしつこく聞いてきたり、似た者同士と言ったり……奴は確実に悪魔の事を知っているし、嗅ぎ回っている。


 まずい、この事がマスコミにでもばれたら大事になる。さっさと見返り分の報酬を渡して、レイラに呪いをかけなければ……私しか見えなくなるように。


 レイラは過去の憎しみの表情とは百八十度違う優しい笑みを浮かべているが、これでも悪魔ゼパールの魔術は不完全だと言っていた。なぜかレイラには効きが悪いらしい。それほどまでに私を憎んでいるのかは知らないが、今のままだと悪い予感しかしない。ゼパールとは縁を切らなければ……


 レイラの肩に手を置いて笑みを作る。一瞬でレイラは私を愛すはずだ。私だけを見るはずだ。


 「Layla, minä rakastan sinua.(レイラ、私はお前を愛している)」

 「Minä myös.(私もよ)」

 「Joten me rakastamme toisiamme ikuisesti.(私達は一生愛し合える)Sulje silmäsi minulle vain hetki.(目を瞑ってくれ。一瞬でいい)」


 レイラが言われた通りに目を瞑る。そして私は呼んだ。この世の者とは違う存在を……


 「Zeparu...(ゼパール……)」


 私の後ろに赤い鎧をまとった兵士が現れた。右足を引きずり、ガシャガシャと音を立てて。レイラの眉が不安そうに揺れたが、それを大丈夫と言ってごまかした。

 柱の隅には使用人のヴァルトが私達を眺めている。こんな化け物を私が出したと言うのに無表情だ。全く可愛げのない奴だ。


 『Olisi hyvä. Mutta minä korvauksia.(いいだろう。だが報酬はきっちりいただくぞ)』

 「Miten pidän siitä. Hae että kulta ja hopea aarteita talon.(ああ、この家の金銀財宝を好きなだけ持って行け)」


 私の言葉に満足したゼパールがレイラに手を伸ばした瞬間、ゼパールは何かを感じたのか、私を担ぎあげ後ろに飛びのいた。

 レイラは突き飛ばされて地面に尻もちを付いている。一体何があったと言うんだ!?


 「Zeparu Mitä tapahtui!?(ゼパール何があった!?)」

 『Piti olla paha olo. Tämä on veljeni, mutta ei koskaan lähellä tätä...(嫌な予感がしていた。だがまさかこんな近くに同胞がいるとは……)』


 同胞?まさか……だがさっきの奴らは追い返した、ここにはいないはずだ。だとしたら使用人のヴァルトか!

 奴がレイラに好意を持っているのは気付いていた、奴しか考えられない。奴がレイラを呪っていたのか!だからゼパールを見ても涼しい顔でいれたんだな?こいつも契約していたのか!

 禍々しい黒い霧が包み込むようにレイラを覆う。悪魔が出てくる、一瞬でそれが分かった。


 「Layla Menkää pois! On vaarallista hänelle!(レイラ離れなさい!そいつは危険だ!)」

 「Mitä vaaraa? Hän oli minua suojella minua sinusta.(何が危険なの?彼は貴方から私を守ってくれていたのよ)」


 レイ、ラ……?

 目の前に現れたのはゼパールと同じく赤い鎧を身にまとった騎士だった。だがゼパールよりも遥かに威圧感が漂い、眼光も鋭い。眼だけで殺せるとはこういう物を言うのだろう。

 そんな事はどうでもいい。なぜレイラは逃げない?まさか嘘だ……嘘だと言ってくれ!


 『(我が魔術を跳ね返していたのは同じソロモンの悪魔であるベレトと契約していたからだな。ベレトが私の魔術を無効化していたのだ)』

 『(まさか同じ屋根の下に住む人間に私達二匹が契約していたとは……実に滑稽だな)』


 そう言って笑ってのけるが、ベレトと言う悪魔は私を殺す気でいるだろう。

 どうなっていると言うのだ!?レイラはゼパールの魔術で私以外を愛せなくなったのではないのか!?


 「Vihaan sinua. Olette kaikki rikoin elämää.(私は貴方が憎い。私の人生全てを壊した貴方がね)」

 「Leila...(レイラ……)」


 レイラは最初から“振り”をしていたのだ。私を愛した“振り”を……この悪魔に守られてまで演じていたのだ。どうしてこうなった……


 「(知られちゃったのなら仕方が無いわ。でもまだ私の復讐は終わっていない。ベレト、奴の記憶全てを抜き取りなさい)」

 『(了解した。行くぞゼパール、主の為に貴様を葬ろう)』

 『(ここで死ぬ訳にもいかぬ。同じ悪魔だが致し方あるまい)』


 剣を向けあう悪魔たちの後ろにいるヴァルトは冷めた表情で眺めていた。

 こいつは知っていたのだ。私とレイラが悪魔と契約していた事を……恐らくレイラの契約悪魔から聞いていたのだ。だからこいつらを見ても驚かなかった。最初から、何も知らなかったのは私だけ……


 「Lauri're menossa, vain koska en halua anteeksi miehensä.(行くわよラウリ、夫だからと言って私は容赦しないわ)」



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