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第68話 バレンタインの悲劇2

 「寒い……こっちの寒さと全く違う」


 長野県上田市。パラパラと降っている雪を自分以外の人たちは全く気にしていない。関東でこんな雪が降ったら何から何までパニックになってしまうっていうのに慣れっていうのはすごい。

 パイモンはチラリと周囲を見て、苦虫をかみつぶしたように表情を歪めた。


 「やはり魔力がかかっていますね。女性だけかと思っていたが男性でも魔力にかかっている者がいる。これほど広範囲の魔術、一体どいつが……」

 「でもあんまり周りの人達、そんな何か変って感じじゃないな」

 「契約者の元に向かいましょう。この時間ならば大学ももう終わっているはずです」


 日も沈み、暗さと寒さが増している中、パイモンは颯爽と目的地に向かって歩き出す。あいつ寒いの苦手っていってたくせになんであんなに平気そうなんだ。今回一緒に来ていたセーレもパイモンの後を付いていき、足元の雪で呑気に雪だるまを作っていたヴォラクの腕を引っ張って俺達も追いかけた。



 バレンタインの悲劇2



 「すげえだろ!雪だるまって言うんだぜコレ!もっとでっけえの作りたかった」

 「この辺じゃ無理だろうなー。一応ここら辺って街中だよな。もうチョイ離れたところなら作れたかもな」

 「ちぇーつまんね。拓也にあげる!」

 「ぎゃー!!服に入れんじゃねえ!!冷たい冷たい!!マジふざっけんなお前!!!」


 騒ぐ俺とヴォラクを余所にパイモンとセーレは周囲をかなり警戒している。さっき聞いた話だけど、これだけ広範囲に魔術をかけられていたら相手の気配も探れなくなってしまうらしい。俺には分からないけど魔力でムンムンだそうだ。

 服の中の雪を払い、ヴォラクの頭をはたいて小走りでセーレに追いつく。


 「これって悪魔の能力に目覚めそうなのか?」

 「んーどうだろうね。魔力に触れる期間・量が増えれば増えるほど確率は上がるから、長い時間被ばくしていたら目覚める可能性はあるね。でも昨日一人酔っ払って道路で寝ている人を調べたんだけど、その人は恐らく魔力に触れて二~三週間程度だった。今はまだ大丈夫だと思うよ」

 「え、真冬の長野で路上で寝てた……?」


 起こしてやらんかったんかい。セーレが言うには一時間程度別の場所を調べて戻ったらいなかったらしいから、寒さで起きて帰ったんだろうと言っていた。恐るべし長野。


 十八時半ごろ、契約者が通っている大学の前に着いた。生徒はもうまばらでチラホラとしか歩いておらず、セーレが適当な人を捕まえて契約者の事を聞き出している。


 「ああ、千秋?確かもう帰ったんじゃねえっけ?今日飲みサーあるとか言ってたような」

 「あいつ毎日飲んでんじゃねーか。あいつが一人でいるの見たことねえわ!」

 「大学探すより連絡取った方が早いと思うッすよ。えっと、先輩ですかね?連絡先分からないなら俺から連絡入れときましょうか?あいつ飲んでる時スマホ見ないんで返事遅いかもしれないっすけど」

 「本当?じゃあ借りてたBD返しに行くから二十四時ごろ家に行くって伝えてもらっていい?先輩って言ってもらったらわかると思う」

 「了解っす。多分明日は一限あるから二次会行っても二十四時には帰ると思いますよ」

 「ありがとう」


 あ、すごい。話ついた。でも二十四時にまた来るってなると結構大変だよなーこれ。うーん、今日はまだ水曜だし、あんまり頑張って明日の朝起きれないのも辛い。でも今日を逃したら明日しかない。バレンタインデー当日に被ったりしたら何かヤバいことが起きるんじゃないのかなコレ。


 勝負を今日中と言うか会った時に決めなきゃいけないってことだよな。


 セーレはこっちを見て若干申し訳なさそうだ。


 「ごめんね。勝手に時間決めて」

 「いや、いいよ。二十四時ごろにもう一回来ようか。暗い方が動きやすいよな」

 「そうですね。何か食って帰りますか」

 「さんせーい!焼肉行こうー!!」


 パイモンの珍しい夕飯の誘いに俺とヴォラクが喰いつく。セーレは何か知っているらしくクツクツ笑っている。


 「シトリーに言われたこと本当に実行してるじゃないか」

 「うるさい。あいつほどベタベタする気はない」

 「シトリーに言われたんだ。拓也と仲良くなりたかったらご飯を食べに行くなりコミュニケーションとれって」

 「余計なことは言わんでいい」


 ピシャリとぶった切ったパイモンにセーレは噴出して笑いだした。舌打ちをしてそっぽを向いたパイモンが何だか拗ねている子供みたいで、新鮮な姿を見て身近に感じてしまった俺とヴォラクも大笑いだ。


 夕飯はヴォラクが食べたいって言ったので近くにあったショッピングモールの中にある焼肉屋に行くことにした。 


 夕飯を食べて一度マンションに戻り、少し寛いで時刻は夜の二十四時前。相手の家はパイモン達が昨日住所を割ってくれたおかげで問題なさそうだ。


 「さて、行こうか」


 もう既に少しだけ眠い目をこすり、セーレについていきベランダにでる。うー……こっちですらこんなに寒いのに長野県とか絶対にもっと寒いだろうな。向かうのは先ほどの面子からストラスを追加して四人+一匹だ。


 『まだ悪魔は特定できていないのですね』

 「そうみたい。俺は良く分かんないんだけど」


 数分程度で長野県に到着し、マンション近くの人影がない所にジェダイトが着陸する。さっきまで問題なかった寒さがジェダイトから降りた途端に突き刺すように吹きつける。ジェダイトから降りたくなかった……


 運よく、契約者の男性のアパートはオートロックではないらしく簡単に部屋の前まで行くことができた。ストラス曰く、今の所悪魔の気配はしないらしい。もしかして陽真理さんの時みたいに隠れてるとか留守とかなのかな?契約者が違うとか?


 セーレが部屋のインターホンを鳴らすと、お目当ての相手はこちらが誰かも聞きもせずに部屋から声を出して玄関の鍵を開けている。


 『はーい!あ、先輩?BDっすよね?連絡してくださいよー!』


 どうやらBDを借している先輩が本当にいるらしく、完全にその人と間違っているみたいだ。扉が開き、中から男性が出てきた。


 「あれ?はいぃ?あんた誰??」


 ナイスリアクションだ。パイモンが足を扉の間に挟ませて閉められない様に前に出る。


 「君みたいな綺麗な子、俺の知り合いにはいないんだけど……」

 「お前にいくつか質問したいことがある。ここでもいいが、お前も聞かれたくない話のはずだ」


 さきほどまでどこか人懐っこさの漂う表情をしていた青年の目つきが変わる。今の会話だけでもしかして気づいたのか?何かを察した青年は玄関の壁を背もたれにして腕を組んだ。


 「あーあんたらが……おたくらのこと知ってるよ。悪魔だっけ?予想より早いな。俺もまだまだみてえだな」


 俺達のことを知ってる?

 青年は追い返す気もないのか家の中にあげてくれるらしい。パイモンが先に入りカメラや盗聴器が仕込まれていないか入念に確認しているのを見て相手は鼻で笑った。 


 「そんなの入れてねえよ。俺だって自分の身が可愛いわ。逆上されて殺されたくねえしな」


 青年はケラケラ笑い、部屋の中にあった座椅子に勢いよく腰かける。なんだか若干居心地が悪くて、俺はリビングの扉近くに縮こまるように座った。


 「で、あんたら俺に何か用?まさか悪魔が悪魔に地獄に帰れとか言う気?」

 「だとしたら?」

 「絶対に嫌だね。つか人間に言われるならともかく、なんで悪魔に言われなきゃいけねえの?それってすげえブーメラン」

 「口論をしに来たわけではない。否と答えるならば力づくでいくまで」


 パイモンの脅しに青年は顔を青くさせて少しだけ座椅子を後ろに移動させた。でもここまでパイモンが脅しても悪魔が出てくる気配がない。見捨てられてるのか?でも青年のビビっているけど何か隠し玉を持っているような薄ら笑いは不気味だ。


 「てか、もう俺悪魔と契約してねーし。残念でした。俺のとこにはもういないぜ」

 「契約をしていない?」

 「お前らが来ることなんかお見通しだっつーの。面倒だったけど契約切っといてよかったぜ。あいつがどこにいるのかは見当つかねえな」


 なんだよそれ。新しいパターンすぎるだろう。じゃあこの人はその悪魔を逃がすために俺達が来ることを察知して悪魔との契約を切ってたって言うのか?でもまだ魔力にかかってる人がいるんだ。悪魔が遠くに行ったわけではないと思うけど。


 でもその疑問を抱いたのは俺だけではないようで、今まで黙っていたストラスも話を切り出した。


 『では未だに街の人間に魔力がかかっているのはどういうことです?』

 「わお!お前すごいね!フクロウが喋るって悪魔っぽくていいねえ!俺の悪魔ちゃんも見た目すっげーいかつい奴だよ」

 『話を逸らさないでください。契約悪魔の情報を言いなさい。契約を切ったと貴方は仰っていますが、悪魔の行方は知っていますね?』


 青年は答えずに首をかしげているけど、本当に知らないんだろうか。ヴォラクが舌打ちをして立ち上がり、こっちの制止も聞かずに青年の腕を掴んで強く握る。


 「おい、しらばっくれんな。悪魔の事を吐け」

 「ヴォラク暴力は……!」

 「うぎゃーいてえ!暴力反対!!」

 

 青年は腕を振り払い、こちらを睨みつけている。


 「お前らマジヤバいね。そうやって気にくわない奴は力づくで従わせてたってわけ。あ、わかった。お前らイルミナティだな?地震とかタンザニアの虐殺もお前ら関与してんだろ」

 「てめえ!」


 再び腕を伸ばしたヴォラクをパイモンが制止し、不服そうなヴォラクを目で諌めてパイモンがため息をついた。


 なんで、イルミナティと……あんな奴らと一緒とか言われるんだよ。ふざけんな、大体この人はなんなんだ。のらりくらりかわして、悪魔と契約を楽しんでたのかは知らないけど最後の審判だってもう知ってるはずなのに……どうして協力してくれないんだよ!?


 青年は腕をさすり、こっちに指を指す。


 「マジ腹立つわー……俺に今度手ぇあげたら、俺の力使ってお前らを社会的に抹殺するからな」


 社会的に抹殺だあ?

 皆が目を丸くしている。青年の表情は真面目そのもので嘘をついている気配はない。

 しかし社会的に抹殺するって一体なんなんだ?youtuberか何かか?なんにせよかなりリスキーだ。


 「俺もな、悪魔の力って奴?もうある程度ゲットしてんの。俺の悪魔の能力使ったらお前らなんか一発KOだから!住む場所も何から何まで特定されっから!!」

 「何を言っている」


 青年はフフンと自慢げだ。


 「あいつは嵐を操る。物理的な嵐ってのもそうだけど、物理的な意味じゃねえ嵐だって操るんだ!たとえばそう、恋の嵐!うん、俺上手いこと言った」

 「……何が言いたい」

 「つまりだなー。嵐って言うのは例えで使うだろ?嵐の前の静けさとかさ。あれって結局は注目されてるから起こるわけだろ?爆発するかしないかの瀬戸際を皆気にしてんだよ。わかる?俺の力は人間の心理的な嵐だって操れる。お前がパイモンだってことは分かってんだ。今世界各地でどれだけの人間が悪魔に関心を持ってると思う?ちょっとした起爆剤撒いてやれば、嵐はお前らに襲い掛かる。すーぐに世界中から特定されて袋叩きだ。あんたらの契約者だって無事では済まないだろうな」


 パイモンの眉がピクリと動く。まずい、こいつ馬鹿そうなくせに案外考えてる。俺達を脅すつもりだ。なんで協力してくれないんだよ!こっちが脅されるなんて可笑しいじゃねえか!

 青年は憎たらしい笑みを浮かべ、形勢逆転したかのようにふんぞり返った。


 「別に俺は荒らそうとかそんなことは思ってないんだよ。俺だってネットに晒されるなんざ御免だしな。でもさ、あんたらがここに存在するなら俺の悪魔だって地獄に戻る必要ないだろ?俺が死ぬまで一緒にいるとかそう言うことじゃない。ただもう少しだけ猶予が欲しいってだけだよ」

 「正確にはいつまでだ」

 「えー絶交するまで?」

 「却下だ」


 何だよこの人……呑気すぎだろ。でもここで突っ込んだら負けだ。絶対に俺が出て行って事態が好転するわけがないため、イライラしても黙って見ているしかない。

 パイモン達も引く気はないんだろうな。青年の提案にNoを突き付けている。あまりにも飄々としている態度にセーレが不思議そうに首をかしげた。


 「君は怖くないのかい?今の状況……イルミナティが表に出てきて、今まで架空の存在だった悪魔が現実の存在になったことで世界は混乱している。君にだって君の生活があるだろう?万が一ばれた時とか、君だって無事では済まなくなるんだよ」

 「逆に聞きますけど、今は悪魔手放した方が怖くないですか?丸腰っすよ。俺の悪魔ちゃんの話ではアガレスって奴が地震起こしたらしいっすね。こっちで起こってたら俺たぶん死んでますよ。俺は俺を守るために悪魔手元に置いておきたいんですよ」

 「さっきと話が違うじゃないか。契約を切ったんだろう?悪魔が君を守ることはもうないよ」

 「あは。でもおたくら絶対に俺の話を信じてないっすよね。契約切ったのは本当だけど、俺の近くにいますよ。ただ、俺から呼び出すことはできないけどね」


 つまりこの人は、自分の身を守るためにソロモンの悪魔を手元に置いておきたいってことなのか?

 青年は契約悪魔は悪い奴じゃないと言っている。そりゃ、ここまで庇うんだ。悪魔との友情が芽生えてるのかもしれない。俺だってストラスたちがいきなり現れた奴に地獄に返すとか言われたら抵抗するだろう。この人の気持ちが分からないわけじゃない。だけど……


 青年は俺をジッと見ている。このメンツの中で何も言葉を発しないんだ。多分契約者ってことは分かってるんだろうな。指輪がばれないように左手は見えない様にしてるけど、きっとばれてる。


 「まあ、俺的には指輪の継承者が日本人の高校生ってことにビックリしましたけどね。ネットとかじゃヴァチカンにいるって書かれてたし。いやー当てになんないね」

 「話はそれだけか?貴様の生死は俺の仕事に含まれない。貴様も悪魔もこの場で斬り捨てても一向に構わんぞ」

 「その前に俺の悪魔ちゃんがあんたらの事をリークしちゃうけどね」


 くそ……どうやったら状況を打破できるんだ!なにか、何かいい手はないのか?どうしたら……


 こんな事になるならシトリーに協力してもらえばよかった。この人を操れたら、こんな面倒な事にはならなかったのに。


 パイモンが立ち上がり青年の前に立ち、その目があまりにも冷たく殺気に満ちており、息を飲んだのは俺だけではないはずだ。


 「やってみろ。貴様の魂も記憶も全て奪って二度と輪廻できないようにしてやる」

 「……あれ、これって俺本格的にヤバい系?」


 パイモンが青年に顔を近づけ、冷たく笑い、胸ぐらを掴んだ。


 「お前、ヴィネーと契約しているだろう?奴から随分と気に入られているんだな。お前を守るために俺に殺気を放っている」

 「は?」

 「つまり、お前に人質としての価値があると言うことだ。お前が俺達を脅すようならば、こちらもお前に容赦はしない。お前を拷問でもすれば奴は姿を現すか?それで見捨てられたとしたらお前は用無しだ。このままここで朽ち果てろ」

 「……本気で言ってる?」

 「俺は嘘は嫌いだ」


 今度こそ青年の顔は真っ青になっていく。ちょっかい出して相手がガチ切れして殺されたってなったら洒落にならない。勿論俺からしたらパイモンはそんなことしない、ちゃんとわかってる。何も口出す必要はないけど、この人からしたら効果は絶大だったようだ。

 青年はせわしなく視線を動かし、観念したようにため息をついた。


 「ヴィ~ネ~……俺にはこれ以上無理だ~あとはお前が交渉して~」


 え?どういうことだ?


 ストラスに説明を聞く暇もなく、青年の前にヴィネーと呼ばれた悪魔が現れた。ストラスの事を悪魔っぽいって言ってたけど、明らかに向こうの方が悪魔っぽい。蛇を体に巻きつけたライオンの姿をした悪魔が青年の後ろに立っていた。


 『フム……ヤハリ無理デシタカ。後ハ力ヅクデスカ?』

 「俺マジ殺される……この人ガチのサイコだよ。マジで俺殺す気だわ」

 「パイモンを変人扱いすんな!お、お前がちょっかいかけるからだろ!」


 おもわず言い返してしまったけど、別に俺が言う必要なかったーー!!!


 でもストラスやヴォラク、パイモンが臨戦態勢を取ったことから、このヴィネーって悪魔はそこそこ強い悪魔なんだろうなってことは分かった。


 でもこっちの想像とは裏腹にヴィネーは手を出して首を横に振る。


 『剣ヲシマイナサイ。私ハ戦ウ気ハアリマセン。ナゼ審判前ニオ互イ無駄ナ怪我ヲ負ウ必要ガアリマスカ』

 『では今ここで地獄に戻ると?』

 『オ待チナサイ。私ニハ見届ケル義務ガアルノデス』


 見届ける義務?


 『千秋ガ今年ノバレンタインデーニ、チョコレートヲ百個貰ウコトヲ!』


 ズコーッとこけそうになったのはきっと俺だけじゃないはずだ。パイモン達も目を丸くしている。でもヴィネーは本気らしく、千秋と呼ばれた青年の手を取って見つめ合う。


 『千秋、今年コソハ永遠ニ記憶ニ残ル物ニシマショウ!主役ハ貴方ダ!』

 「ヴィ、ヴィネー……!」


 なんだこれ。


 呆れてものも言えない俺達にヴィネーはくるりと振り返る。


 『ナノデ、バレンタインデーマデ待チナサイ。ソノ後、話ヲシマショウ』


 まって。話がだんだん分かってきたぞ。


 つまりバレンタインデーのグッズが無くなったって言う奴は、千秋さんがヴィネーの力を使ってバレンタインデーに浮かれている女の子たちの心理を操って夢中にさせてたってことなのか?そんで千秋さんがモテモテになるってこと……?


 「く、くだらねえ……」


 思わず漏れた本音に千秋さんは俺に指を指す。


 「何が下らないだ!てめえだって多少は浮かれてんだろ!?ああ?可愛い子からチョコ貰いてえだろうが!」

 『彼は可愛らしい幼馴染から貰うので平気です』


 なんでストラスがそこで参戦する!?

 まるで勝ち誇ったかのようにフフンと鼻を鳴らしたストラスに千秋さんとヴィネーはかなりイラッとしている。 


 「はあー!?幼馴染!?漫画の展開かよ!死ね!!」

 『ドウセ、ブスニ決マッテマス』

 「なんだとこら!!」


 澪を馬鹿にすんじゃねえ!お前の友達の女の子よりも百倍可愛いわ!お前の友達知らないけど!!


 低次元な言い争いを始めた俺達にセーレとパイモンは呆れた顔で参戦してこない。ヴォラクに至ってはやり取りが面白いのかテーブルに置かれていたお菓子を勝手に食って観戦している。


 「じゃあ今に見てろよ。明日俺がどれだけのチョコレートを貰えるか、こいつがどれだけいい悪魔か、てめえに証明してやる!明日は俺に張り付いとく事だな、自分が惨めになるだけだけどな!」

 「いや、明日平日だから俺学校あるし……」

 「なんて馬鹿な奴なんだ」


 パイモンがこれだけ契約者に顔を青くしているのは初めて見た。それも本当に引いてる意味で。


 それにしてもこいつとこの悪魔、確かに中々いいコンビだ。お互い明日のバレンタインを楽しみにしているのが見てとれる。あーあ、もう知らねえよ。明日になって後悔したって助けてやんないからな。


 「明日は何人からチョコもらえると思う?」

 『分カリマセンナァ、百個越エハ確実デショウ』

 「ねえ、その数字どっからでたの?」


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