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第26話 お馬鹿四人珍道中

 「拓也、今日遊んで帰らね?」


 放課後、何の前触れもなく上野に誘われた。その横には桜井とジャストがいる。

 光太郎は塾でさっさと帰ってしまい、オガちゃんと藤森も部活に行き、立川は今日は従兄弟が来るからって足早に帰って行ってしまった。

 どうやら予定無い組みで遊びたいみたいだ。



 26 お馬鹿四人珍道中



 「え?別にいいけど」

 「別にいいけど。だってさー!どうせお前予定ないだろ?いつも暇人じゃねぇか!」

 「何だよ、そのお陰でいつ誘われても俺は断らねぇだろ。お前らに誘われる事を考えて常に予定を開けてやってんだよ」

 「ちょー偉そうなうえにキモイ」


 ジャストの痛い突っ込みに桜井と上野が笑う。ああ言えばこう言うなこいつ等……まぁ確かにこんな事いわれたら俺でもキモイって思うけどさ。上野達とは最近遊んでおらず、正直何も予定がないしむっちゃ遊びたい。


 どこに行くのかと聞けばゲーセンとカラオケと答えられた。いつもの定番コースだよな。カラオケ行く前にコンビニでお菓子やらジュースやら買って二時間程度歌って、その後ゲーセンで一時間程度遊ぼうって話な訳だ。


 その二つをまとめてできる場所といえば限られてくるため、いつもの場所というわけだ。


 「ラウンドワンか」

 「そーそー俺今割引券持ってんの」


 そう言って桜井が携帯でクーポンを見せて来る。そう言えば桜井って携帯会員だったよな。便利そうだな……でもメルマガがだるいからいっつも会員にならないだよな。会員登録してる人が一人いたらいいわけだし。


 行くところが決まったのなら早く行かなければ時間がもったいない。今の時刻は十六時四十分。皆二十時程度には家に帰りたい、三時間遊ぶ事を考えたら一刻の猶予も無く、チャリ通の上野と桜井のチャリの後ろに乗っかってダブル二人乗りでラウンドワンまで向かう。


 ラウンドワンはこの時間帯は学生が多い。皆ここでアフタースクールを過ごすんだな、考えることは一緒か。


 カラオケは部屋が満室だと言われて、空きが一時間後だったから、その時間に予約を入れて空き時間にボウリングをする事になった。


 俺とジャスト、上野と桜井でペアを組んで対抗することになったんだけど、俺すっごいボウリング下手なんだよ、大丈夫かな……前に光太郎と中谷と藤森の四人で行った時にあまりの俺の下手さかげんに負けず嫌いの中谷がブチ切れて、すごい大変なことになった。


 中谷が切れた姿を初めて見たのはその時だ。あんなにギャーギャーやかましく怒るんだもんな。正直それ以来中谷とボウリングにはいきたくない。


 「よっし池上またガーター!」

 「お前三回連続じゃん。ジャストかわいそー」


 桜井と上野が後ろでやんややんや騒ぐのはいいんだけど、ジャストが怖くて後ろを振り返れない。

 今回二対二で分かれてスコアが低いほうが、次のカラオケを奢るって言う賭けになってる。俺は自信が無いから止めたんだけど、三人が盛り上がってて結局流されてしまった。

 あ~だから言ったんだよぉ……俺運動音痴なのに……これって俺が負けることを見越して仕組まれたんじゃなかろうかと疑ってしまう。


 「お前いい加減にしろよ」

 「うっ……俺だって一生懸命」


 ジャストの鋭い視線が怖い。その間に桜井が投げたボールがピンを全て倒し、掲示板にはストライクの記号が浮かんできた。え―――桜井上手くね!?これで差は十五かぁ……まだ挽回できるかなぁ。


 「でも拓也ってマジ運動音痴だよな。どうやったらあんなに見事なカーブになるんだよ」

 「腕捻ってんだろ。不器用ですから~」


 くそー二人とも馬鹿にしやがって!

 ジャストも黙ってないで何かフォローしてよ!チームメイトがこんなに馬鹿にされてるって言うのに!


 「おいっ!一投目でガーター連発して、俺が二投目で全ピン倒したとしてもスペアにしかならず、スコアが伸びないイケメンの悪口は止めろ!」

 「お前が一番悪口言ってんだろ!」


 突っ込めば三人がゲラゲラ笑う。もう少し上手ければ、こんなネタ扱いされることなんて無いのに!

 でも結局その後も俺は進歩無く、最後までストライクを出すことができないまま四十もの差をつけられて完敗した。イライラが治まらない様子のジャストに謝り倒して、時間が来てカラオケに向かう。

 部屋に入って、それぞれが持ち込んだお菓子とかジュースをテーブルに並べて、準備は万端。それぞれが歌う準備に入った。


 「なー俺途中からアニソンゾーン入っていい?」

 「プリキュア歌えよ」

 「知らねえよそれ。映像出る奴がいいから」

 「スラダン歌って。俺の仙道さんが画面に出るから」


 所々会話をしながら、それぞれがローテで曲を入れていく。


 採点機能も付けて、点数が悪かったら皆で笑って馬鹿にしあって、二時間はあっという間にすぎていった。


 カラオケも時間が来て、それぞれが帰路に着く。


 あーあ、ボウリングのお陰でカラオケ上野の分を払ったから散財だ。今月はお小遣い日まで大人しくするしか道は無い。父さんに小遣いねだろうかなー、でも母さんにばれたら殺されるけど。


 十月になれば日が沈むのも早くなり、十九時過ぎはもう真っ暗だ。この間まではそんなこと無かったのに、本当に早い物だ。


 家に帰り着いてリビングに向かえば、まだ飯はできてないらしい。ゆっくりしていていいと言われたので、ジャージに着替えてストラスと直哉を探した。リビングにはいないみたいだけど、一体どこにいるんだ?


 二人は直哉の部屋におり、カードゲームで対戦していた。


 直哉は気難しそうに、ストラスはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている所から、恐らく直哉の不利なんだろう。しかも考え込んでいる直哉に早くカードを出せと言うストラスも相当意地が悪い。


 「あ、兄ちゃんお帰り」

 『おや拓也、お帰りなさい』

 「ただいま、つか楽しそうだなお前ら」


 二人がこっちに気付き挨拶をしてきたから、それを返して近くに腰掛けてゲームを観戦する。最近直哉のカードゲームの対戦相手はもっぱらストラスになってしまっている。


 友達と遊んでいる時は勿論、大輝君とか他の子と遊んでるけど、ハマっている直哉は家でもやりたがっている。でも父さんも母さんもカードゲームは分からないし、俺も少し付き合わされたけど、まずはキャラやお気に入りのカードを探すのが面倒だったから色々言い分けつけて逃げていたら、いつの間にか相手がストラスに変わっていたのだ。


 今では直哉のいい遊び相手で、こうやって良く二人でゲームをしている。テレビゲームは流石にストラスはできないが、直哉がしている横でダメ出しをしている光景も良く見る。


 俺も直哉くらいの頃はカードゲームにはまっててめちゃくちゃカード集めてて友達と対戦ばっかしてたけど、今のカードゲームは難しくてよく分からんわ。そうこうしている内に直哉が負けたらしい、悔しそうにカードをぐちゃぐちゃに掻き回した。


 「悔しい~!また負けた!」

 『ほっほ、あの時うかつに防御カードを出すからですよ』


 こいつ子供だろうと容赦しないな。嫌らしい顔で笑いやがる。

 もう一勝負するらしい二人を見て、ストラスに小さい声で話しかけた。


 「お前直哉に華を持たせてやれよ」

 『拓也、これは真剣勝負なのです』

 「だからって……」

 『それに言っていなかったかもしれませんが実は私、負けず嫌いなのです』

 「……どうでもいい情報をどうも」


 ストラスはあくまでも負けてやるつもりは無いらしい。これはまた直哉の負けだろうなぁ……一試合しか見てない俺から言わせれば、直哉は強いカードを先に出しすぎる。でもストラスは上手くカードをバランスよく出し、最終的に直哉は手詰まりになってるんだよな。


 でもそれ言っても直哉は意味わかんないだろうし、ストラスから水指すなってうざがられそうだから言いはしないけど、兄として弟が痛めつけられる姿を見るのはどうもなぁ……


 『直哉、次私が勝てば五勝です。今日のコロッケ、一つ多めに私がいただきますよ!』

 「うぅ……くそー!」


 おい何だよコロッケって。しかも一つ多めにって。


 「どう言う事だ?」

 「今日は夕飯コロッケなんだよ兄ちゃん。全部で十一個作るんだ」

 『一人二個ずつですが一つ余る。それを直哉と取り合っているのです』

 「……ちょっと待てよ。それ俺にも関係あるじゃねえか!なんでコロッケをお前らだけで取り合いしてんだよ!」

 「俺達が先に気付いたからだよ!」


 偉そうに直哉が言ってるけど、そういう問題じゃない。

 こいつらは夕飯のコロッケをどちらが三つ食べれるか、そのためにカードゲームをしていたのだ。何だよこいつら、俺を完全に抜かして勝手に決めやがって!俺だってコロッケ三個欲しい!


 「ちょっと待てよ。三人でじゃんけんだろ、ここは」

 『真剣勝負に水を差すとな!?』

 「兄ちゃんあっち行っててよ!邪魔じゃん!」


 酷い!弟とペットからこんなに言われるなんて!

 二人は完全に俺を無視して対戦を始めてしまった。くそーっ母さんに言いつけてやる!


 「コロッケ?ああ、そういえばそんな事言ってたわね。やーねぇ、最後のコロッケは拓也とパパの明日のお弁当のおかずよーコロッケは一人二個」


 母さんに言いつけた俺に、母さんは少し考えてケラケラと笑った。

 でもやった!って事はコロッケは俺と父さんの物じゃない?あいつらの戦いは無駄に終わったんだな!

 母さんは出来上がったコロッケを1つ半分に切ってそれぞれをサランラップに巻いて冷蔵庫に入れた。あのコロッケは俺のって訳だ。


 『な、なんですと……』


 声が聞こえて振り返ると、そこには呆然としてるストラスと直哉の姿が。二人とも床に座り込んで超落ち込んでる。なんだか少し申し訳ないことしたかな。でも母さんはケラケラ笑ってるから、まあいいか。


 「俺達の勝負ってなんだったの……」

 『何のメリットも無かったのでしょう。私は勝ったのに……』


 無意味だったって事で……


 その後の夕飯、直哉は勝負に負けたからいいけど、ストラスはずっと俺と父さんを恨めしそうに見ていた。本当にこいつはどんだけ食い気があるんだフクロウの癖に。


 夕飯を食べ終わり、自分の部屋でゴロゴロしながら漫画を読んでいるとストラスが飛んできた。


 そのまま腹の上にダイナミック着陸をして、こっちをジッと見てくる。何だよ、コロッケをまだ根に持ってんのかよ。


 「あのなぁコロッケは……『拓也、明日私はセーレとヴォラクと悪魔を探しに行って参ります』


 さっきまでのテンションとは打って変わって、その表情は真面目そのもの。

 いきなりのテンションの差にこっちが若干ついていけない。


 「さっきまでと全く違うな」

 『オンオフの切り替えは大事ですよ。なぜ何もない時までしんみりしなければならないのです』


 いやまあそうですけど。正論ですけど。

 でも悪魔を自ら探しに行くって事は、今のところ情報が無いからしらみつぶしに探すのか、それか情報が見つかったから偵察に行くのか。見つかったんなら教えてくれてもいいのに。


 「悪魔が見つかったって事?」

 『いえ、見つかってはいませんが、恐らく悪魔がいるであろうと思われる場所を調査して、そのついでに他の場所も調べる予定です』


 ふーん、見つかったら連絡来るか。

 セーレは契約石にエネルギーが溜まってる状態なんだろうな。だから他の場所を契約者である俺無しで回れるんだろう。契約石にエネルギーが溜まってない状況で契約者から離れると、エネルギーが供給されなくなり、悪魔はこの世界にいる事ができないからな。


 「で、国内?国外」

 『国外です』


 そっか、そりゃそうだよな。日本探すより世界探した方が見つかるわけで、俺を狙ってるせいかもしれないけど日本に結構の数の悪魔がいたが、世界にも悪魔はいるんだ。七十二匹全てを倒すまでは世界中を回らなきゃいけない。

 それにしてもストラスが行く場所ってどこなんだろう。



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