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第15話 分かり合えない

 次の日、学校が終わってドイツに向かうことになったため学校帰りにマンションに向かう。で時差-7時間なんだよな。今が十七時だから向こうはまだ朝の十時だ。大丈夫なんだろうか?

 あまり早く行き過ぎてもする事ないし、俺明日も学校だしなー



 15 分かり合えない



 澪は今日無理だったけど、バトンタッチするかのごとく光太郎は今日いけるらしく二人で帰りにマンションに向かう。今回はストラスがピリピリしてるもんな、大丈夫かな?


 錬金術師なんて嫌な思い出しかない。また悪魔ザガンみたいに汚い手を使われたらどうしよう。あの時は光太郎がいなくて中谷がいたんだよな……すごく中谷が怯えてたのを覚えてる。おんなじ思い、光太郎にさせたくないな。


 ストラスの友人みたいな奴だって聞いた、だからきっとザガンよりも遥かにマシな悪魔であることは間違いない。光太郎も話を聞いて複雑そうにしている、確かにいつも冷静なストラスが調子狂ってたら、こっちまで不安になるよな。分かるわそれ。


 「よーっす、我が家のペットちゃんの様子はどうだ?」

 『私は貴方のペットではありません。何度言わすのですか』


 不機嫌全開で睨みつけてきたストラスはなぜか妙な威圧感が漂ってフクロウなのに少し恐い。ガチ切れされると思ってなかったから、小さく謝って光太郎と隅っこに避難。こりゃ相当機嫌悪いぞ。いつもはこのくらいで小言は言うけど睨み付けてきたりはしないのに。


 一喝された俺を見てシトリーがケラケラ笑ってるけど笑い話じゃない。家でこんな仏頂面のフクロウがいたら直哉が恐がるじゃねえかよ。


 俺達の声が聞こえたのかセーレがリビングに入ってきて今回の契約者について教えてくれる。相手の老人はドイツのテューリンゲン州エアフルトって所にいるらしい。結局俺はよく分からないけど、緑に囲まれたのどかな村って感じな場所なんだそうだ。そんなところで悪魔と契約してる人がいるなんて、なんだか少し悲しい。


 とりあえず十八時になったら向かうことになったので、母さんに帰りが少し遅くなるって連絡して俺も準備をする。二十時くらいまでに帰れればいいんだけどな……


 今回はヴアルとアスモデウス、ヴォラクが留守番だ。行きたがるヴォラクをヴアルが止めてたって感じ。付いてきてもよかったんだけど、ストラスが余り大人数で行きたくないって言ったからこうなった。


 でもヴォラクとヴアル、アスモデウスがいなくて大丈夫かな?攻撃陣をほとんどマンションに残してきたと言ってもいい。パイモンがいれば安心だけど、せめてヴアルは連れて来れなかったのか?やっぱ遠距離担当がいたら心強いんだけどな。


 「人生二回目のドイツ……!」

 「あーそういえばシトリーってドイツ人と契約してたもんな」

 「ここは俺の第二の故郷だ」

 「は?何言ってんのお前」


 光太郎の鋭い突っ込みも何のその、人生二回目のドイツの俺と自称第二の故郷に足を運ばせたシトリーのテンションは高い。流石セーレだな、当たり前になってるけど本当はこんなに早く着くはずないんだし。本当にできれば、今度長期休みの時に世界一周とか連れて行ってくれないかなー。各国滞在時間三時間程度で。


 少しだけドイツの景色を堪能した後にパイモン達が調べた、その老人の家をシトリーの案内の元、訪ねることになった。小さなのどかな町はおとぎ話に出てきそうな雰囲気だった。ゲームの町とかこんな感じだよな。


 「シトリーってそういやここに来たことはあるのか?」

 「いや、全然ねえよ。ケビンはフランクフルトに住んでたからな。ただ、足がつかないために事件起こすのはフランクフルトから離れた場所にしてたからよ。その時に公共交通機関の使い方とかドイツのマナー的なの学んだんだよ」


 そういえばこいつの前契約者のドイツ人て女性に乱暴働いてた最低な奴だったよな。結局つかまってないって話だけど、あんな男を野放しにするくらいなら捕まった方が絶対良かったよな。

 十数分程度歩いた先に見つけた目的の場所はこじんまりした小さな家で、益々こんな家に住んでる老人が悪魔と契約してるなんて思いたくはない。

 シトリーが扉を叩き、暫く待つと女の子が顔をのぞかせた。女の子は俺達を怪訝そうに見ている。


 「(貴方たち誰?何の用?)」

 「(ここはフェルディナントさんの家だよな。家にいるか?)」

 「(……用を聞かなきゃ入れられないわ)」

 「(伺いたい事があって来たんだ。別に怪しい奴じゃねえよ)」


 ドイツ語で会話してるシトリー、何を言ってるかは分からないけどストラスが少し緊張した面持ちで口を開いた。


 『力を使っていますね。まぁ家に入れてもらえないのです。シトリーの力に頼るしかありませんが……』


 あ、シトリーの力、ね。段々女の子の様子が変わっていき、頬を少しずつ赤らめさせていく。こりゃかかったな。本当にシトリーの“自分に好意を寄せさせる”力はすごい。相手に好意を持ってもらえば、家の中なんてすぐに入れてくれるもんな。やっぱシトリーがいるとやりやすいな。

 女の子が家に上がっていいと扉を開け、皆でお邪魔する。先頭を歩く女の子を見ているとシトリーが近づいてきた。


 「中々可愛い子じゃん、将来有望」

 「お前相変わらずだな。グレモリーとどっちが綺麗なの?」

 「グレモリーにかなう女なんてこの世にも地獄にもいませーん」


 光太郎と茶化しあっているのを後ろに緊張しているストラスを腕に抱いていると、なんだか俺まで緊張しちゃう。

 通された部屋には優しそうな老人が座っていた。温厚そうな老人はいきなり入ってきた俺達に怒声をあげることなく首を傾げたが、女の子が何かを言えば笑みを浮かべて座るように言ってくれた。

 本当にこの人が契約しているのかな。正直信じられないんだけど。


 「(初めましてフェルディナント。俺の名前はパイモンと言います。今日、貴方に伺いたいことがあってきた。単刀直入で聞きます。今回、貴方の家で発掘された品物の数々に少し疑問を持ちましてね)」

 「(そうですか?鑑定士は本物と言っていましたが)」

 「(ええ、だから疑問を持っているんです。貴方、何か良くない者を従えていませんか?)」


 パイモンが何かを言った瞬間、老人の顔から笑みが消えた。そして寂しそうな物に変わる。何かパイモンがまずい事を言ったんだろうな、核心を突いたんだろうか?

 セーレに小さな声で日本語に訳して教えてもらって、光太郎と顔を見合わせる。じゃああの反応は悪魔と契約してるんじゃないのか?結構怪しい反応してないか?


 「(良くない者、か……妖精さんなら家にいるがね)」

 「Fee?(妖精さん?)」

 「(君もそうだろ?妖精さんが言っていた。指輪をした少年が従えている者達は自分の同類だと)」


 パイモンとセーレ、シトリーの表情が変わる。そして訳してもらって意味を知る。この老人は指輪の事を知っている。悪魔と契約しているのは確定だ。でもどうして妖精さんなんて可愛い呼び方をするんだ?こいつ達は悪魔だ、そんな可愛い呼び方なんて似合わない。妖精さんなんてストラスが言われても笑うしかない。


 「(妖精さんにお迎えが来たってことなんだろうね。最低限の話は聞いているから説明しなくても分かっているつもりだよ。でも私は妖精さんとの約束を果たすまでは君たちに会わせられないんだ。三日後、また来てくれないか?)」

 「(貴方のそれは妖精じゃない。そいつの名前は……)」


 パイモンの言葉を遮って老人は首を横に振った。それ以上先を言うなとでも言いたげだ。


 「(それを聞いたらいけないんだ。すまないね、それ以上は言わないでくれ)」


 老人はニッコリ笑いながらも有無を言わさない強い口調で杖をつきながら席を立ち上がる。三日後までは待ってくれ、そう頑なに言うもんだから、どうしようもない。


 悪魔が姿を現す気配もなく後ろで老人の孫である少女が睨みを利かせるように監視してくるお陰でここで暴れる訳にも行かず、仕方なく俺達は出直すことにした。あの老人に攻撃を仕掛けない限りは姿を現さないだろう。つまり、悪魔と対面できるのはあの老人の言う三日後ってことだ。


 でもそれまでに悪魔が攻撃を仕掛ける可能性だってあるわけで、何もしないまま三日待つのは流石にできないとパイモンが告げ、三日後までは毎日この場所に来て様子だけを確認できるように老人に提案した。


 相手は躊躇いもなく提案を受け入れたため、これから三日間、この老人の話し相手をすることになってしまった。しかしこの人の言っていた妖精さんとの約束って一体なんだろう?


 一旦今日は日本に戻ると言って、部屋を出たパイモン達について行くと少女が玄関まで見送りに来てくれた。靴を履いて頭を下げた俺を見て、少女が少し気まずそうにしながらも話しかけてきた。


 「(ごめんね、話聞いちゃった。でも何となく全部分かったよ。信じたくないけどね)」

 「Weißt du, was?(何か知っているのか?)」

 「(うん。家にはね、おじいちゃんしか見えない住人がいるの。それが妖精さん)」


 この子は何かを知ってる。とりあえず話してもらうためにパイモンが続きを促すと、少女は頷いて俺達を庭に連れて行った。

 周囲に人がいないことを確認した少女は壁に凭れ、少しだけ寂しそうに教えてくれた。


 「(私はレナーテ、おじいちゃんの孫なの。去年、ぐらいかな?おじいちゃんの独り言が増えたの。最初は訳が分からなかったけど、盗み聞きしてたときに聞いた。おじいちゃんが妖精さんと話してるのを)」


 女の子はレナーテって言うらしい。自己紹介されたからパイモンも軽く自分達の事を紹介する。その後にレナーテは再び話をした。


 「(うちね、超貧乏なの。この家も差し押さえられるんじゃないかって話が出てたくらいに。その話が出たときから、うちで沢山のお宝が出てきたの。掘り起こしたわけじゃないし探していたわけでもない。学校から帰ったらおじいちゃんがお宝だって言って持ってたの。でもそれが本当にお宝とか思う訳ないじゃん。私なんて偽物って思ってて鑑定に出すお金すら惜しいって思ってたし。でも、おじいちゃんは鑑定士に見てもらう前に家から出た絵が本物だって知ってたの」


 その話が本当なら、タイミングが良すぎるって思うのも仕方がない。現にレナーテもこのタイミングで家から発見されたお宝に半信半疑だったようだ。


 「(そういうのが続いてさ、うちからお宝を探す企画なんてテレビ局まできてさ、正直意味が分からなかったんだよね。私も現実味が湧かなくて、どうしていいか分からなかったときに見たんだよね。おじいちゃんが妖精さんと話してたの。おじいちゃんにしか見えない妖精さん。でもね、その妖精さんが来てから不思議なことはまだ起こってるの。うちの宝物がどんどんなくなっていくから)」


 宝物が無くなる?それってすごい絵画とかそういうのじゃなくて?


 「(うちの宝物って言うのは、ただ私たちが大事にしてるだけの物だよ。例えば私が初めてコンクールで賞を取った絵とか、おじいちゃんの息子……私のパパが子供のころに描いたおじいちゃんの似顔絵とか、私のおばあちゃんが大切にしてた食器とか、ね……歴史的価値の高い宝物が発見されるたびに、私たちの宝物が無くなっていく。不思議でしょ?なんだか恐くなっちゃった……)」


 やっぱりパイモン達の勘は正しそうだ。契約してる悪魔が錬金術師なら偽者の絵を錬金術で本物に変えるなんて造作も無さそうだ。そうやってあの人は借金を返していた。

 あの老人が借金に苦しんでいるって言うのは事前に話を聞いていた。だから、ハアゲンティって悪魔の能力は喉から手が出るほど欲しかったんだろう。大切な孫に苦労をさせたくないって思う気持ちもわかる。でも、レナーテはこの不思議な事件に怯えている。


 「(すまないが、事前にお前たちの事情は調べさせてもらった。借金があると言う話をな……)」


 ある程度は調べていったからレナーテが両親に捨てられたってことは知ってる。でも何か他に情報を掴むためにパイモンも少し遠慮を含んだ感じで聞いた言葉にレナーテは乾いたように笑った。親に捨てられるってどんな気持ちなんだろう……この人たちにとってあの老人は大切な家族に変わりないけど、それでも実の両親に捨てられた傷が癒えるはずもない。


 「(私と兄のヨルクはね、パパとママに捨てられたの。起業に失敗した借金を全部おじいちゃんに押し付けて。私たちはね、お金がかかるだけで価値のない子供なんだって)」

 「(……それを、言われたのか?)」

 「(お酒を飲んで酔ってたパパから言われたの。だから、多分本心だよ)」


 そんな言葉を父さんに投げかけられたら、ショックで立ち直れないだろうな。でもレナーテはそう言って捨てられた。それを助けてくれたあの老人を慕うのは当然のことだろう。

 その時、誰かの足音が聞こえ、レナーテが弾かれたように顔をあげて気まずそうにしている。シトリーが言うには多分兄のヨルクが帰ってきたんだろう、だって。レナーテが家に入りたがったため、俺達も帰ろうとしたとき開けっ放しの玄関から大きな怒声が聞こえてきた。


 「(うるせえんだよクソ爺!俺に構うなって言ってんだろ!俺は、お前らのせいで不幸なんだよ!!)」


 声とともに出てきたのは一人の青年だった。レナーテに何となく似てるからヨルクって奴なんだろう。ヨルクは俺達に目もくれず、帰ったばかりだと言うのに荷物を持って走って家を出て行ってしまった。慌てて玄関に向かった先には寂しそうな顔の老人がいて、レナーテは老人のところに走っていき、俺達も一度戻ることになった。


 ***


 パイモンが約束を取り付けたため、これから三日間は毎日老人……フェルディナントさんの家に向かう。何も起こらないよう願っていたのが無意味なくらいに平穏な時間を過ごしていた。


 話し相手をしていてわかったことがある。


 フェルディナントさんは孫のヨルクと仲が悪い。原因は分からなかったけど、この間の怒声を聞けば何となく仲が悪いのは頷ける。そのせいでレナーテもヨルクが苦手らしく、ヨルクは友人たちの家を泊まり歩いて帰らないこともザラなんだそうだ。昨日も荷物を取りに帰ってきただけらしい。


 その間もハアゲンティは姿を見せず、結局何も状況が進展しないまま約束の三日目が来てしまった。


 その日、フェルディナントさんに会いに来て、玄関を開けようとした時、扉が勝手に開いて中から出てきた相手に目を丸くした。


 「(あ?あんた達、最近家に入り浸ってる奴らか。レナーテの友達か?)」


 ヨルク!?やばい……怖い!!

 ドイツ人ってガタイもいいし掘りも深いから睨まれると相手が怒ってなかったとしても威圧感を感じる。現に警戒心むき出しで睨みつけてくるヨルクは恐い。セーレが何かを伝えれば怪訝そうな顔をして家を出て行ってしまった。でも今日確かめたい、何でヨルクはフェルディナントさんを嫌っているのか。


 「あの、なんでフェルディナントさんを邪険に扱うんだ?いいお爺さんだろ」


 俺が聞いた事をセーレがドイツ語に訳せばヨルクは振り返った。その目が怒りに満ちており、たった一言で相手の地雷を踏んだことを理解したが時すでに遅し。

 歯をギリっと食いしばり、ヨルクは俺に近づいてきた。だから怖いってばぁー!


 「Was willst du Bastard, ist nicht unabhängig.(何だよてめえ、関係ないだろ)」

 「いや、そうなんだけど……でも、か、関係ある!あんな態度取ったら可哀想だろ!」


 売り言葉に買い言葉。こっちも怖さを隠すために少し声のニュアンスを強くしたら向こうの逆鱗に触れたらしい、まくしたてるように怒られた。


 「(うるせえな!あいつが親父とお袋を助けてくれなかったからだろ!?あんな絵があって借金が返せるなら、さっさとそうしてくれりゃ、家族で昔みたいに暮らせたんだよ!)」


 それだけを大声で怒鳴るように告げてヨルクは出て行ってしまった。

 な、なんだよ今の理由。確かに気持ちは分かるけど、だからってこんな言い方……フェルディナントさんは悪魔と契約して行った行為なのに……そんな言い方!

 その時は気づかなかった。俺達がもう少し早くたどり着けば、フェルディナントさんは大変な目には遭わなかったんじゃないかって。


 「Opa!(おじいちゃん!)」


 フェルディナントさんの家に行けばレナーテが必死で名前を呼びかけていた。そこには倒れているフェルディナントさんと、それを見下しているフードを被った男がいた。

 なんだ、これ……

 ストラスが毛を逆立て、フードの男の下に飛んでいく。


 『ハアゲンティ!』

 『Oder Strass, du bist eine lange Zeit.(ストラスか、久しぶりだな)』

 「Was? Wer seid ihr Jungs!?(なんなのよ……あんた達何なのよぉ!?)」


 泣き叫ぶレナーテにセーレが慌てて救急車を呼ぶように指示をしている。


 「セーレ、どうなってんだ!?」

 「わからない。胸を押さえて蹲っている……心筋梗塞かもしれないな。急いだほうがいい」


 心筋梗塞って……まずくないか!?

 とりあえず救急車を……あー!俺ドイツの救急車の電話番号わかんないしドイツ語話せない!!

 なんとか泣き崩れているレナーテに救急車を呼んでもらい来るのを待つ。フェルディナントさんを抱きしめているレナーテをハアゲンティと呼ばれる悪魔は無表情で眺めていた。


 『約束の日が近づいている。明日か……』

 『これは貴方が!?』

 『私ではない、そやつの元の寿命だ。そやつの寿命が明日で切れるのだ』

 『なっ……』


 混乱して泣き叫んでいるレナーテ。日本語が分からないからハアゲンティが放った言葉の意味も判らないだろう。でも俺達は固まってしまった。寿命が明日で切れる?


 「ふざけんなよ!なんで明日で切れるなんかっ!」

 『元々短い寿命だったが、私と契約したことで、私を使役し寿命をすり減らした。その結果、明日で寿命が切れるのだ』


 悪魔と契約したら寿命が縮まる。それは知ってた、悪魔が行動する為には人間のエネルギーがいる。それを契約石から吸収して行動するため、エネルギーを吸われれば吸われるほど寿命をすり減らす。

 でも光太郎と中谷、澪にそんな点は見られなかった。だから気にしながらも平気だって思い込んでた。でも違う、フェルディナントさんは寿命をこいつに渡したせいで明日死ぬ。

 これが、悪魔との契約なのか!?

 ハアゲンティは泣いているレナーテの元に足を運ばれた。


 『(この男はな、お前達の親の借金を返し、お前達に資産を残すために私に命を捧げたのだ。そして最後の賭けが明日待っている)』

 「Was zu sagen?(な、にが言いたいのよ……)」

 『(私との契約条件だ。莫大な資産を与える代わりに、あるゲームをした。奴の望みが果たされた三日後までに私の名前を当てられれば、見返りは求めん。だが私の名前を当てられなければ、奴の魂と与えた資産全て奪わせてもらう)』

 『ハアゲンティッ!』


 ストラスの怒声が聞こえ、ハアゲンティはゆっくりと消えていった。残されたレナーテは目を丸くしている。その直後、救急車が到着してフェルディナントさんが運ばれる。


 俺達はただ、泣き崩れるレナーテを支えるしかなかった。



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