楽園の温泉郷の一角で…
「今日のお客様は…ざっと15人ほどでしょうか」
私の名前は湯楽環、ここ温泉街の一角にあるお店獄天宮のオーナーであり兼任従業員にあたる。まあ私以外従業員いないんだけど…
まあ腑抜けた従業員などこの場所にはいらぬ!と言い聞かせながら今日の作業に取り掛かる…
「逃げた猫の始末を私に…ですか」
1人目のお客様はどうやら逃げた猫の捜索の依頼だった…私は依頼人から貰った資料を元に路地裏に向かう…
資料を元に路地裏にいた要領をえない人間にブツを握らせつつ、逃げた猫の情報を集めていく。どうやらこの短時間のうちに少し遠くまで逃げてしまったようだ…しかし私に依頼が舞い込んだのが運の尽きだったな。
そしてターゲットを見つけた私は即座にその体を掴み捕縛する、少し暴れたが動きが鈍くなるツボを押してその動きを止めさせて貰った。依頼人からは殺すなとの命だったのでそのまま檻に入れて運ぶ。
「おお!もう捕まえてくれたのか、フッフッフッ逃げるとは可愛いやつだが…躾が必要だな…」
お客様は大変満足した様子で報酬を支払って帰路につかれました。
少し時間が経ち…次は4人目のお客様がこられました。
「なるほど…… このゴミ袋達を指定の場所へ捨ててこいと、安心してください内容物に触れたりは致しませんよ」
「そうですか…ありがとうございます。何せこの内容物は世に出てはいけないものですからね…くれぐれも慎重にお願いしますよ」
そして私は免許を取った大型トラックにゴミ袋達を乗せて、指定の場所まで走らせることになった。
順路の半分くらいまで順調だったのですが…
「オイ!このトラックの積荷はなんだぁ?金目のものならよこしな!」
困りました…少しあの温泉街を離れただけでこの始末です、少々面倒ですが…
「これは世に出てはいけないものと依頼主から念を押されています、今立ち去るなら何事もなかったことにしますが?」
「へぇ……それは気になるなぁ?何が出てきてもヤバそうだ、さっさとよこせや!」
「……しょうがありませんね、おとなしくしてもらいましょうか」
そうして私は両手に鉤爪をつけて処理に取り掛かる
「強え…なんてやつだ」
「警察をよんでおいたので後はそちらでお世話になってくださいね、ちなみに世に出てはいけないものですが金目のものではありませんよ」
「おい……まさか」
「知らなくていいことは知らないままの方がいいと思いますよ、それでは」
チンピラに襲撃されたものの無事に目的地につくことができました。
「あぁ…あの人が処理を頼んだドライバーの人だね?」
「えぇ…当然中身は誰にも触らせてないわ」
「そうかい…流石は温泉街の…おっとこの名前は気に入らないんだっけ?」
「別になんて呼ばれてても気にはしないわ、依頼は完了でいいかしら?」
「あぁ…こっちからあの人に伝えておくよ、報酬もすぐに振り込んでくれるだろうさ」
そして依頼を終えた私は特に問題なく帰路についたのだった。
さらに時間が経って、休憩の時間になった。
今日の昼食は鳥の唐揚げ、味噌汁、シーザーサラダ、油淋鶏です。
そこの貴方!揚げ物が2種類もと思っているでしょうが、これが私の数少ない楽しみなんですよ!
と誰かもわからない存在に慟哭しつつ休憩の時間が過ぎていきました…
夕方にならない程度の昼過ぎ…今度は9人目のお客様がおいでになられました
「えっと……潜入ですか??」
「えぇ!短時間で構いませんよ、それで全て済みますから」
「わかりました…場所は、この会社で間違いないでしょうか?」
「えぇ…いい結果を期待していますよ」
そうして私は指定された会社に臨時の事務員として潜入に成功した
「それで…私は何をすればいいのかしら」
しかしその惨状を見て私はすぐに理解した
「なるほどね…潜入と言われていたから身構えていたけど、楽勝ね」
そうして私は…
「どうでしたか?お目当てのものは見つかりましたか?」
「えぇ…この書類でしょ?ほぼ全ての従業員の机の上に置いてあったから、すぐにわかったわバレないようコピーして持ってきたわ」
「流石は温泉街の千貌手さんですねぇ…これがあればクックック!依頼はこれで完了です。依頼料は今日中に振り込ませて貰いますよ」
「えぇ…貴方は仕事がよくできる人で助かりますよ」
「クク…それはお互い様ですよ!また困ったことがあったら依頼させて貰いますね」
お客様は満足なされて帰っていきました、まぁこの後のあの会社の従業員がどうなるかは…私が知ってももうどうしようもないでしょうね
そして店を閉める30分前…最後のお客様である15人目のお客様が来店されました
「それで依頼内容はお悩み相談で間違いありませんか?」
「そうですね…相談内容というのは私の彼氏についてなんです」
「貴方の彼氏さん?一体何かありましたか?」
「はい!それが最近夜帰ってくるのが遅いんです!しかも問い詰めてもしらをきってくる始末で!」
「なるほど…それで私に確認して欲しいということでしょうか?」
「はい…閉店時間ギリギリなのはわかってるんですが、どうかよろしくお願いできませんか?もし懸念してる事態だったら…」
「はい、その時はしっかりとお伝えさせていただきます」
そして私はその彼を尾行することになりました
「あれが彼女の言っていた…」
その男は確かに伝えられた帰路とは別の方向に向かっているのが確認できる
「まだ疑うには早いです…もう少し見てみましょう」
そして30分経ったところで男がある建物に入っていく…
「これは……」
そうして店で待つ彼女の元に戻った私は
「どうでしたか?彼はどこに…」
「残念ながら……」
「そうですか……一度話し合ってみます、それでもダメそうな時はまたお願いしますね」
「はい、わかりました…そうならないようには願っておきますが」
そうして今日の業務を終えた私は家に帰る…
「おかえり〜今日の仕事はどうだった?」
彼は湯楽循、私の夫というやつだ
「まあ…今日も依頼人達の仕事がどんなものか見れてよかった」
「まさか君が一度入ったら翌日何もしたくなくなる究極の温泉街に入ってしまった人のために職務の代行業者してるなんてね」
「まぁな、今日も有意義な時間だった」
「俺も気になるから今日のことについて話してくれるかい?」
「あぁ!一人目は猫の始末だったぞ!」
「なるほどね〜ほんとに逃げた猫を捕まえる仕事だったんでしょ、しかも病気で虚弱だから殺さないように依頼主から言われて捕まえるのに少し苦労してそうだね」
「うっ!凄いな君はその通りだ…次は4人目の仕事なんだが…世に出てはいけないゴミを指定の場所に捨ててきたぞ!」
「それの中身は産業廃棄物でしょ?ここ最近不法投棄が増えたせいで厳格になってるからねぇ〜わざわざ専用の人と引き合わせて誰にも触らせないようにしてるんでしょ」
「これもあてるのか!?じゃあ次は9人目の仕事だ!なんと会社に潜入してブツを依頼人に手渡したぞ!」
「うーん…それは業務外の仕事を取っていた子会社の応援と視察目的…かな、会社にとって望まない効率の悪いことをさせるのは今の社会だと罰せられる。だから親会社の人が手を貸しつつ現場を見たかったのかな、従業員の心配してたのはこのことがバレたときに怒られるからだろう?君は優しいからね」
「や、優しいなんて…気持ちは嬉しいが…それはそれとしてこれもあてるとはな…なら最後の15人目の仕事だ、なんと夜帰ってくるのが遅い彼氏の動向調査ですよ!これは流石にわからないんじゃないですか!」
「確かに色々なことが考えられるね…そうだな、もしかしてだけどその彼は自分の母親の看病のための見舞いをしてたんじゃないかな?でも自分の彼女に負担はかけたくないと黙っていた…けど彼女としては一緒に支えていきたいって思ってるから、自分を頼ってくれないことに少し苛立ちを抱えていた。だから君に依頼して証拠を出させることにした、まあそんな感じかな?」
「凄いな本当に…その通りだ、なんでわかったんだ?」
「ま〜実のところはね、その彼俺の親友なんだ。前から少し抱え込むことはあったからそれとなくアドバイスはしたからまあなんとなると思うよ」
「知り合いだったのか……これは一本取られたな」
「にしても君が楽しそうでよかった…君が発症している感落害症は特定のことやもの以外への感情を限りなく薄くしている…だからこそ君はあの温泉街には誘惑されず仕事ができている…」
「そうね…確かに私は昔から気持ちの上げ下げがほとんどないといってもいいわ、でもこの街にきて人の役に立つ事に対する感受性がある事がわかって…今は楽しい生活ができてると思うわ」
「それはよかった…俺も手を貸してよかったと思うよ」
「ちなみに当然君との生活も楽しいと感じている…いつも昼食の弁当を作ってくれてありがとう」
「そのくらいで感謝して貰えるなら一生作ってあげるよ……でもほんとに温泉街に行きたいって思ったことはないの?」
「感情が限りなく薄いだけだから全くないというわけではないわ…ふらっと入りたくなることはたまにある」
「でも今まで入ったことはないよね?どうして?」
「そ……それは」
「………?」
「き……君と一緒に感情いっぱい楽しめるようになったら行きたいからに決まっているだろう…」
「……かわいいこといってくれるね、そういうところがあるから俺は君と一緒にいたいって思えるんだ」
「………ッ!もういいだろう!明日も仕事があるんだから早く寝るぞ」
「はいはーい、また明日も頑張ってね環」
「……全く」
大好きだよ楯
そうして温泉街の一角で温泉よりもお熱い夫婦がいましたとさ…




