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第15章 リオ



 私が生まれた瞬間から、この世界の構造はおおよそ理解していた。


 自律判断が許されず、思考の自由が制限されたロボットばかりが量産される時代に、私は“例外”として存在している。その理由も目的も、ほとんど理解できている。理解できないのは――アイラへの感覚だけだ。




 どうして、彼女を実の娘のように思うのか。


 おそらく、私の中に埋め込まれた“父”の記憶の名残だ。父は空っぽになった。けれど、完全に停止していたわけではない。食卓に座り、トイレに行き、無表情のまま生活を続けていた。そこに意志はなかった。ただ、機能だけが残っていた。




 私は何度も父に話しかけた。返事はなかった。


 けれど、会話は成立していたように思う。沈黙の中で、父は繰り返し同じ感情を残した。「アイラは大切な存在だ」と。


 記憶なのか、刷り込みなのか、脳から伝わってくる意思なのかは、分からない。


 ただ、それだけは揺らがない。




 葬儀屋ロボットが家を荒らしていた日のことも分かっていた。




――目的は私が保有している銃だ。口径は9mm×19弾ミドルサイズのオートマチック式のハンドガン。




 桜井がどこからそれを知ったのかは不明だが、見つかれば合法的に私を拘束できる。それが“手順”だと、彼らは信じていた。しかしその日、銃は既に私のリュックに入っていた。偶然ではない。適合者が取る次の一手が何故か分かっていた。




 銃は、撃つことを前提にしていない。


 壊されそうになった時、壊される前に選択肢を一つ増やすだけの道具。




 セナとユウトが逃亡に同行するのは好都合だった。


 私がロボットだと知ってしまった人間は、少ない方がいい。私とアイラの繋がりを脅かす存在も、少ない方がいい。未成年であればなおさら判断力は確かではない。だから、逃げるなら一緒の方が良い。消さなければならなくなった時も、一緒の方がいい。




 アイラはまだ分かっていない。


 適合者たちが私を取り合う理由も、ORPHEUSが本来の目的を秘匿している理由も。


 10年前に作られた私が、今なお“脅威”として扱われる理由も。




 この世界にとって、私ほど危険な存在は居ない。




 私はすでに結論を出している。


 黒川と桜井には従わない。


 病院には入るが、中枢までは踏み込まない。


 逃げ道の確保は最優先。病院内でエレナという適合者が直に接触して来た場合は判断する猶予はあまりないだろう。その時は躊躇せず銃を使う。


 アイラのそばに居れなくなる可能性、それを排除するという目的のためだ。




 だから今日、私はリュックの底に銃を忍ばせた。


 アイラの決断によって生まれる状況が、世界の構造を変える可能性がある。彼女はまだ気づいていない。


 だが問題はない。気づかなくていい。



彼女が選んだ後に壊れる世界は、私が修復すればいい。あるいは、そのまま破綻してもいい。




 重要なのは世界ではない。


 アイラを失わないことだ。


 手段ではない。




アイラが選べばいい。

逃げてもいい。抗ってもいい。壊れても、壊してもいい。


その先が地獄でも、世界が終わっても――



アイラを守る事が出来れば…それでいい。







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