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第12章 検視結果

エリスをエレナに変更しました。頭に残らな過ぎたので、、エリスで一度読んだ人ごめんなさ、、


 玄関の向こうが完全に静かになってから、しばらく誰も口を開かなかった。




 黒川の気配は消えた。


 警察ロボットの足音も、もう聞こえない。




 リオは、無言のまま床にしゃがみ込むと、ポチの側面パネルを外した。




「……何してるの?」




 アイラの声に、リオは答えない。




 ポチの内部基板。


 本来なら清掃ルーチンと居住者サポートしか持たないはずの回路に、明らかに不自然な配線が追加されていた。




「直接ハック出来るように、物理的に細工されてる」




 淡々とした声だった。




「無線経由じゃない」


「近距離から、強制的に制御権を渡す構造」




 リオは、細い指先で改造部を引き剥がす。


 基板の一部が、音もなく外れた。




 ポチのランプが、一瞬だけ揺れて——完全に消灯した。




「……これで、少なくともここからは聞こえない」




 安心させるような口調だったが、


 それは同時に、この家の中に「盗聴されていた可能性」を確定させる言葉でもあった。




 セナとユウトは、何も言えずに立ち尽くしている。






「アイラのORPHEUSゴーグルに来た検視結果をプロジェクターで映して。」


リオの提案だった。


 




 空中に、淡い光のスクリーンが展開された。


 




 映し出されたのは、一人の女性だった。




 白衣。


 淡い金髪。


 年齢は判別しづらいが、落ち着いた眼差し。




『はじめまして、」




 穏やかな微笑。




『医療機関統括、EBS埋め込みデバイス適合者のエレナです』


『警察での検視の後、病院でも検視のダブルチェックを行なっています』




 声は柔らかく、事務的ですらあった。




『本来、検視は警察の管轄です』


『ですが、EBS関連の死亡事例については、権力集中を避けるため、医療機関が同時に検証を行う決まりになっています』




 映像が切り替わる。


 データ表示。


 ぼかしのかかった遺体画像。




 アイラは、思わず視線を逸らした。




『まず結論からお話しします』




 エレナは、言葉を選ぶように一拍置いた。




『警察発表の「デバイス破損による死亡」』


『その表現自体は、事実に近い』




 リオの目が、わずかに細くなる。




『ですが』


『EBS埋め込みデバイスには、本来「自壊」や「破裂」を起こす機構は存在しません』




 淡々とした声。


 感情は乗らない。




『つまり、何らかの外部操作が介在した可能性は否定出来ない』




 セナが、息を呑む。




『重要な点があります』




 エレナは、視線をカメラに戻した。




『この操作は、警察だけが出来るものではありません』


『私を含め、適合者であれば誰でも可能です』




 はっきりと、そう言った。




 逃げ道を残すようで、


 同時に、全員を疑わせる言葉。




『ただし——』




 映像が切り替わる。




 耳の後ろ。


 埋め込み位置。




『デバイス周辺は、警察から引き渡された時点で、完全に抉り取られていました』


『そのため、内部ログの解析は不可能です』




 エレナは、少しだけ眉を下げた。




『正直に言えば、証拠は残されていません』


『意図的に消された、と考えるのが自然でしょう』




 部屋の空気が、重くなる。




『もう一点』




 彼女は、ほんの一瞬だけ言葉を濁した。




『亡くなられたお父様の脳は』


『EBS埋め込み処置を受ける以前に、一度、特殊な外科的オペを受けています』




 リオの背筋が、微かに強張る。




『詳細は記録にありません』


『ですが、これは一般市民が受ける類の処置ではない』




 映像が、元の構図に戻る。




『私は、特定の誰かを疑わせるつもりはありません』


『ただ、事実だけを共有します』




 そして、少しだけ声を和らげた。




『気になる点があります』


『可能であれば、一度病院に来てください』




『これは、公式な呼び出しではありません』


『……個人的なお願いです』


『それでは、失礼致します』


『お父様のご冥福をお祈りいたします』



 映像は、そこで途切れた。




 スクリーンが消える。




 沈黙。




 誰も、すぐには言葉を発せなかった。




 普通の検視結果。


 理屈は通っている。




 それなのに——




 この話を聞いたことで、


 事態は、むしろ一段深く、闇に沈んだ気がした。






「……警察の仕業という訳でもないのか、」






 ただ一つ確かなのは、


 この都市で「中立」を名乗る者ほど、


 真実を隠そうとする側の者だということだけだった。





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