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第11章 接触


 父親が物のように扱われ回収された翌日。




 玄関のチャイムが鳴ったとき、


 アイラは一瞬、息を止めた。




 昨日から、音に敏感になっている。




 扉の向こう。


 誰かが立っているだけで、


 また何かを奪われる気がした。




「……アイラ?」




 聞き慣れた声だった。




 扉を開けると、セナとユウトが立っていた。


 二人とも、普段より言葉が少ない。




「…来ちゃった」


 セナが、視線を落としたまま言う。


「……ごめん、こういう時なんて言わないといけないか分からなくて…」




 アイラは、少し遅れて頷いた。




「うん」


「ありがとう」




 部屋に入ると、


 二人はすぐに異変に気づいた。




 揃っていたはずの家具の位置。


 戻しきれていない引き出し。


 空気の、落ち着かなさ。



2人は見回している。




 説明しようとすると、


 喉の奥で言葉が引っかかった。




 そのときだった。




「……あれ」




 セナが、窓の外を見て立ち止まる。




 高層ビルの外壁。


 通路沿いに、背の高い影が立っている。




 身長二メートル級。


 交通整備用のロボット。




 学校の行き帰りで、何度も見たことのある型。




 ——ただし。




 目の位置にあるランプが、


 紫色に灯っていた。




「……あんな色、あったっけ」




 ユウトが、冗談めかして言う。


 だが、笑っていない。




 次の瞬間。




 チャイムが鳴った。




 間違いなく、この部屋だ。




 アイラの背中に、冷たいものが走る。




 そのとき。




「驚かず、聞いてください」




 足元から、声がした。




 掃除ロボットのポチだった。


 いつも通りの丸い目。


 いつも通りの合成音声——ではない。




「私は、警察・治安部門を統括している


 埋め込みデバイス適合者、桜井と申します」




 セナとユウトが、凍りつく。




「今、玄関に来ている訪問者」


「建築分野の適合者です」




「危険です」


「彼の管理するロボットは、都市構造そのものに干渉する」




 ポチの視線が、リオに向く。




「要件だけを聞いてください」


「何にも同意せず、そのまま帰して欲しい」




 一拍。




「……出来ますか?」


「警察ロボットをここに向かわせます、少しの時間でいいので凌いでください」




 リオは、少し考える素振りを見せてから、


 静かに頷いた。




 玄関に向かう。




 扉を開けると、


 そこに立っていたのは——




「よう」


「急で悪いのう」




 交通整備ロボットの向こう、


 通信越しに、低く太い声が響く。




「ワシゃ黒川じゃ」


「建築の適合者や」




 砕けた口調。


 だが、声に一切の遠慮がない。




「昨日の葬儀屋ロボットの件な」


「ありゃあ、警察側の差し金なんじゃ」




 リオの表情は、変わらない。




「ビルを荒らしたんも」


「探しもんしとったんも」


「全部、あんた絡みじゃろ?」




 黒川は、ふっと笑う。




「地表のガス、どんどん上がっとるから、時期にここも住めん様になるけぇ」


「安全なんは最上層だけになる」




「一緒に来んか」


「嬢ちゃんも匿う」




 アイラの心臓が、強く打つ。







 黒川の声が、ぴたりと止まった。




「……来よるな」




 遠くで、重たい足音。


 通路を巡回する、警察ロボット。




「ほらの」


「もう始まっとる」




 黒川は、低く笑った。




「二日後じゃ」


「また来るけぇ」




 交通整備用ロボットは、興味を失った様にどこかに向かって歩き始めた。




リオが部屋に戻る。


それを待っていたかのように、ポチが再び口を開いた。


「警察ロボット来たでしょう?良かった立ち去りましたか」


「私を信用してください」




 静寂。




 リオが、ぽつりと口を開く。




「……どうして」




 ポチを見る。




「どうして、あなたは」


「このポチの中にハック出来た?」




 一瞬。




 ポチの動きが、僅かに遅れた。




「それは——」




「答えなくていい」


「あなたも一旦引いてください」




 リオは、目を逸らした。




 桜井は、何も言えなくなったまま、


 通信を切った。




 部屋には、


 誰も信じられない空気だけが残る。




 そのとき。




 ゴーグルが、静かに振動した。




《検視結果通知》




 差出人は、


 人間工場と揶揄される、病院機関からのものだった、




 アイラは、息を呑む。




 知りたくない現実がそっとこちらを見ていた、、、









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