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閑話2 ニネアさんの忙しき日々のはじまり・前




 「おはようございまーす」


 少しいつもより忙しそうなギルドの受付内に顔を出したニネアに、ちょうど近くを通りがかったミリカが「あれ?」と首を傾げる。

 「ニネア、休みじゃなかった?」

 「ギルド長から急に出勤してくれって連絡あったの。何か問題でも起きたの?」

 「ちょーあったよー!」

 緩い口調ながら力強く言い切ったミリカについでに持ってきた郵便物を規定の場所に置く。

 仕分けの担当ではないため散らばらないように上に物を置いたニネアに、二、三歩近づいたミリカが耳打つ。


 「ティナが依頼受けてわざわざ来てくれた人を勝手にお断りして、上級パーティーに依頼変更しちゃったんだ」

 「えぇっ!?」


 思わず大きな声を出してしまったニネアは口元に手を当てる。

 周囲の視線が大声によって二人に向いたため、くるりと背中を向けるニネアに合わせたミリカが小声で続ける。

 「失礼なんてものじゃないわよ。なんでそんなことしちゃったの?」

 「来たのが13歳でソロの天才さんだったんだけど、わかる? ほら、去年くらいに《称号》がどうので話題になった子」

 あー、とミリカの言葉に一年前の記憶を辿る。


 当時、イグニス王国で歴史に類のない《称号》で話題になったアタッカーの少年。

 特に《称号》を気にするイグニス王国だった事もあってパーティーを組めなかったものの持前の優秀さと破格の威力と噂されるギフト魔法で、ソロで着々とランクを上げていった。

 そして、周囲が勧誘し始めた頃には他人嫌いを発揮して拒否。

 しつこい周囲を完全に突き放して、ソロにも関わらず最速で中級2になった天才少年。


 ニネアは元々《称号》が実力と関係あるとは思っていないが、この天才少年のお陰でなおのことそう思うようになった。

 それでも《称号》を気にする人は減っていないままだった。


 「………ティナは《称号》気にしてたわね」

 「注意しても聞かなかったもんねー。それで勝手に断ったんだってさ」

 「わざわざ来てくれたのに!? 要請依頼に急ぎってあるから結構な長距離を強行してくれたの確実なのにっ!?」

 「終わってるよねー」

 軽い口調ながらもミリカは呆れ返っており、ニネアは頭に痛みを感じた。

 

 「ギルド長がその人に謝ったけど、依頼自体はちょうど近くに居た上級パーティーが引き受けてくれて、もう動いてるから再依頼もできなくて」

 「今度はそっちにお断りいれちゃうことになるものね……。で、ティナは?」

 「もっちろん、謝罪に行ったギルド長に変わって副ギルド長がブチ切れ説教かましてる。ギルド職員教育実習再講習行きだと思うよ、あれは」

 「ギルドの信用問題だもん。しょうがないわよ」


 少なくとも依頼を断られた天才少年がニネア達のギルドの依頼を今後断っても、ギルド側は文句を言える立場ではなくなった。


 「移動の疲れもあるだろうから宿泊代とかぜーんぶギルド持ちだよ。まだ街は出てないみたいだけどうちにはもう来ないだろうねー」

 「その後始末で私は休日返上なのね。……今日のティナの担当は?」

 「受付でございまーす」


 空いている受付の席を示したミリカにニネアは「ありがと」と返して、気を引き締める。

 席に着いて応対可能にしようとする前に、隣の受付に座っている同僚がパッとニネアを見る。


 「よかった! ニネア、あそこの子、新人登録希望なの~! 待たせちゃってるからお願いー!」


 あそこの子、と言われて同僚が示す先には緊張した顔で受付待ちの席に座っている少女が居た。

 他の受付は魔石の換金や、書類の対応をしている。

 ティナの件が発覚したのは今朝だ。

 ギルド長直々に謝罪するために街に居る天才少年を探したりしたことで人手が足りずに待たせてしまったのだろう。

 待たされているパーティーは温厚な人が多いのか、気にしていないようだったのがギルド側としては一番の幸いである。


 「わかった。教えてくれてありがとう」

 「代出なのにごめんねー!」


 気にしないで、と言ってニネアは席に座らずに待っている少女の方へと向かう。

 新人登録というのはどうしてもギルドの職務の中で一番時間がかかってしまう。

 時間をかけてでも対応するべきことだから仕方がないとはいえ、すでに待たせてしまっているパーティーが多い状態で、更に一人減るわけにはいかなかったのだろう。


 白にも見えるほど薄い黄緑色の髪に青い空の色の目。

 不安と、期待と、緊張とが入り混じりながらもきらきらと輝く瞳が近づいたニネアを映す。


 「お待たせして申し訳ありません。はじめまして。貴方の担当をさせていただくニネアです」

 「あ、わ、よ、よろしく、おね、お願いしますっ!」


 慌てて立ち上がった少女が勢いよく頭を下げる。

 傍から見ても緊張してるのが見て取れる様子にニネアは落ち着いてもらえるようにできるだけ優しく笑った。

 「はい。よろしくお願いします。新人登録とお伺いしておりますので、まずお名前を教えていただけますか?」

 尋ねたニネアに顔を上げた少女が、緊張しながらも笑って応じる。


 「フワワって言います!」

 「フワワさん。それでは登録をしますので、奥の部屋の方に移動しましょうか」

 「はい!」


 緊張をしながらもきらきらとした目をしている、良い子だ。

 ニネアが先導しながら続く後ろでそわそわと周囲を見ている様子も、愛嬌がある。


 ――― 新人さんみんなこうだったらなー!


 と、心の中で叫んでしまうほど、少し緊張しすぎではあるが素直で善良そうな少女、フワワにニネアはすでに「あたり」だと思っている。

 「はずれ」と思うのは非常に失礼だとニネアも重々承知してはいるが、どうしても相性というものがある。


 新人登録の際は特に、ギルド職員側も新人側も相性が大事だ。

 ティナのような《称号》を気にする職員が《称号》で差別される新人を相手にする場合など、もう問題でしかない。

 気の強い職員や高慢な新人、様々いるのは仕方がないもので、気が合う合わないはどうしても人なので出てきてしまう。


 ニネアもおせっかいな性分をしているため、どうしてもつい重ねて「気を付けて」と言ってしまい、うんざりした顔で「もういいから」なんて言われることだってある。

 一番酷い時なんて説明をしようとしたニネアの話をぶった切って討伐に言って「聞いてない!」と怒ってくる人だっている。

 そりゃ聞いてないんだから聞いてないでしょうよ!と言い返さずにニネア達ギルド職員は平謝りして、せいぜいが要注意人物として書き留めておくくらいしかできない。


 わぁ、と通された普通の部屋にも期待を持って見ているフワワに、ニネアは「頑張るぞ!」と気合を入れた。



 ――― その気合もフワワの【神の雫】に記されたジョブによって折れそうになるのは後少しのこと。




御覧くださりありがとうございます。

後編は明日1/18(日)更新予定です。

よろしければお付き合いください。

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