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十三歩目 登録



 「そういえばまたギルドに行くの?」


 路地を出てひとまずソノラが言った装飾品の露店を目指しながら、フワワがカナカにそう尋ねる。

 「ギルド?」

 「ネスタくんとソノラちゃんのパーティー登録をしに」

 「パーティー登録ならもうしましたよ」

 「えぇ!? いつ!?」

 カナカの代わりに先頭を歩いていたソノラが返事をする。

 それにフワワが驚きの声をあげれば、ソノラはおかしそうに笑いながらとんとんと自らの胸元を軽く叩いた。


 「【神の雫】に宣言したでしょう。脱退したい時も宣言するんですよ」

 「そ、そうなんだ。えと、じゃあ、最初にギルドでする登録は?」

 「ギルドがどんなパーティーがあるか把握しなくてはいけないからだな。俺の前のパーティーみたいなところがあったら、要注意人物としてギルドで共有するんだそうだ」

 「なるほど」

 次いで説明するネスタの言葉を聞いて自分の【神の雫】があるあたりに視線を落としたフワワは、すごいなぁ、と感心する。


 「お金も数えられて、ステイタスも見れて、パーティーまで登録できちゃうの、すごいよね」

 ね、とカナカに笑いかけるフワワに、まぁな、と素っ気ない返答があった。

 ソノラもネスタもカナカのぶっきらぼうな返しに最初は気になっていたが、一緒にいるフワワがにこにこと全く気に留めていない様子をしているためそういう性格だと思うことにした。


 出会ったばかりのソノラやネスタはともかく、二日ほど行動を共にしているフワワが全幅と言ってもいいほどの信頼を向けているのが透けて見えるからこそ、分かりにくいだけで良い方なのだろうと。

 何よりもソノラにとって「話が通じない人たち」だったセーレやディックみたいな様子もなく、ネスタにとってのビザルのような偏った思想も見受けられない。


 フワワと同じ十三歳だと考えると、年相応の少し生意気な態度だと思えば微笑ましさすら感じられた。


 「……あ! でも、宣言って、勝手にしても入れちゃうんじゃ……?」

 「それはありません。リーダーが認めない限りは駄目ですから。脱退もなので、元リーダーはあれやこれや言いながら別にいいかと速攻許可したって事ですね。すごく腹が立ってきました」

 「あわわ。そ、そのおかげでソノラちゃんがパーティーに入ってくれたから、私はすっごく嬉しいよっ!」

 にこにこと笑いながら機嫌が悪くなっていくソノラに慌ててフワワがそう言えば、良い子、と呟いたソノラがフワワの頭を撫でる。


 「ちなみにリーダーは一方的にパーティーメンバーを脱退できるんだ」

 「それは言わなくてもネスタの事で分かると思います」


 きっぱりと返したソノラの言葉にネスタがそろりとフワワを窺えば言葉なくにこりと笑い返された。

 カナカはどうしてわざわざ自分で傷口を広げに行ったんだろうと思いながら、背後でほんのり沈んだ気配のネスタに呆れた。

 「そういえば、他に買い物ないんですか? 出来立てパーティーだし、回復薬とか大丈夫でしょうか?」

 「ない」

 「そうですか。なら装飾品だけでいいですね」

 そう言ったソノラが少し手前を指さす。


 「あのお婆さんのお店ですよ」


 示される場所は確かに露店の終わり近くにあった。

 少しだけ人ごみの少なくなった、ひっそりとした場所にちょこんと座っている老婆の姿が見える。

 その前に並べられている品数は確かに最初の店よりも少ない印象だ。

 けれど近づけばソノラが薦めた理由がよく分かった。


 「わぁ!」


 目を輝かせて並ぶ装飾品を見つめるフワワから小さな歓声があがる。

 品数は少ないものの装飾品は派手過ぎないデザインをしており、何よりも魔石の輝きが先ほどとは段違いだった。

 品質の良し悪しを知らなければ魔石の大きさだけでもしかしたら最初の店を選んでいたかも知れない。


 「ソノラちゃん、ありがとう! すっごく綺麗だね!」

 「そうでしょう。デザインも可愛いのがあるんですよ」

 きらきらと輝く笑顔で言うフワワにソノラも嬉しくなって笑みを零す。

 店主の老婆はうつらうつらとしているのか、客の会話に割って入っては来ない。

 それを横目にカナカも装飾品を覗き込んで、へぇ、と質の良さに納得した。


 「フワワはまだ買ったことないんですよね? 無難にブレスレットから試してみましょうか」


 手前にあった一つを手に取ったソノラが差し出すそれは細い金色と銀色の鎖状が緩く交差している赤色の魔石がついたブレスレットだった。

 「魔石の色とかはなんでもいいの?」

 「えぇ。ほら、腕に通してください」

 火を彷彿とさせる赤色を見つめながら尋ねるフワワに頷いて、ソノラがフワワの手を取って持っていたブレスレットをその腕に通す。

 少しだけひんやりと冷たくて、けれど気持ちの良い感触にフワワはまじまじとブレスレットを見つめる。


 「これでどうするの?」

 「つけた時どう感じました?」

 「つけた時? ひんやりして気持ちいいなぁって」

 思い返しながらそう言ったフワワにソノラとネスタが笑みを零す。

 「あら。じゃあブレスレットなんですね」

 「すぐ見つかって良かったな」

 「え?」

 ソノラとネスタの言葉にフワワがきょとりと目を丸くする。


 どういう事なのかと言外に問うているフワワの瞳にくすりと笑ったソノラが次は別の装飾品を手に取った。

 ブレスレットよりは長く、かと言ってネックレスにするには短めのアンクレット用だろう装飾品だった。


 「今度はこっちをつけてみますね」

 そうしてフワワからブレスレットを受け取ったソノラがそういってフワワの手を取って、小ぶりの青い魔石がついた細い金色の輪をフワワの腕へと通す。


 「……っ」


 瞬間、フワワの背筋を悪寒のような気持ちの悪い嫌な感覚が走って、手を通って手首にいこうとしている途中の装飾品を拒むように腕を引いた。


 どくり、と嫌な風に心臓が跳ねている感覚に表情を強張らせるフワワに、ソノラが苦笑した。


 「聞かなくてもわかりますけど、どんな感じでした?」

 「な、なんか……いやな感じ? がして」

 「それが合わない装飾品の感覚ですよ。アンクレットとブレスレットは似ていますけどこれもエレメントを込めるタイミングが違うんですって」

 「そう、なんだ……」


 感心したフワワがまじまじとソノラの持っているアンクレットを見つめる。

 デザインは多少ブレスレットよりもシンプルなだけであまり違いがなく、パッと見れば同じものにしか見えない。

 それでも手を通す段階で感じるものが全く違った。

 いまだにどきどきと嫌な音を立てている心臓を落ち着けるために手を当てて呼吸をするフワワに、アンクレットを戻したソノラが次いでネックレスを手に取る。


 「一応人によっては二種類あるから、他にないか試しましょう」

 「えぇ!?」

 思わず悲鳴のような声を上げてしまったフワワにソノラは慣れたもので微笑む。

 「一回目だけの我慢ですから、ね?」

 「……うぅ。うん」

 窘めるというよりも諭すと言った様子で言うソノラにフワワは少しだけ沈んだ表情をしたものの素直に頷く。


 そうしてネックレスを腕に通されたフワワが、ひぃー、と嫌そうな悲鳴を上げて腕を引くのを横目にネスタがじっと指輪を見ているカナカに気が付く。


 「カナカは指輪だったか?」

 「あ? あぁ。お前のは左端のやつだろ。とりあえず一個選べよ」

 「あぁ。探してくれてありがとう」


 素っ気ないながらも教えてくれたカナカにほんわりとした、穏やかな笑顔を浮かべるネスタにカナカが嫌そうに顔をしかめる。

 そうして興味はないと言わんばかりに顔を逸らすカナカに、ネスタはそういえばよくフワワが見ていたあたりを追って笑みを深めた。


 少し赤くなっている耳には言及せず、言われた通りにネスタも武器につける装飾品へと目を向ける。

 品数は装飾品の中でもさらに少ないながらも魔石はどれも一定以上の輝きを放っている。

 横ではソノラがつけた髪飾りに裏表なく素直な性格のフワワは、ひゃー、と悲鳴を上げていたがカナカもネスタも、相手をしているソノラも。エレメンター全員が通って来た道なので心の中で応援するばかりだ。


 店主の老婆は三度目のフワワの悲鳴に、あらまぁ、とゆったりとした寝惚け声をあげて目を覚ましたようだった。








 「うぅ……。まだぞわぞわするよぉ」


 自らのマントをぎゅっと握りしめるフワワの腕には新しく買ったばかりのブレスレットが輝いている。

 「でもいいのがあって良かったですね」

 最初の予定通り防御を上げるブレスレットの中でも値段が安い方ながら、魔石はきらきらと赤く煌めいている。

 結局一番目に試したブレスレットと、もう一種類合った指輪を一つ買ったフワワはそれを右手の中指と右の手首に身に着けた。

 輪っかの部分が蔦をあしらったデザインの黄色い魔石のついた指輪を見て、フワワはソノラの言葉に笑う。


 「うん。付き合ってくれてありがとう。ソノラちゃん」

 「どういたしまして」

 「結局ソノラは買わなかったな」

 「私、装飾品の扱い下手なんです。以前まとめ買いした安いやつがまだありますからしばらく大丈夫ですよ」

 ネスタの言葉にあっさりと返したソノラの言葉にフワワが目を丸くした。

 「そうだったの?」

 「えぇ。まぁ、特に下手でも困らないので大丈夫ですよ。ウィザードは後方でしょう」

 心配そうな顔をするフワワに安心させるように付け加えたソノラに、ほっ、とフワワが安堵の息を吐く。


 「でも、念のため偵察はソノラを除外した方がいいだろう」

 「偵察は俺が出来るし別にいい」

 「風のエレメントだから感知の魔法、使えるよ!」


 ぴんと腕を上に伸ばしてきらきらと輝く眼差しで発言するフワワにソノラが笑いを零す。

 「じゃあ、カナカとフワワを頼りにさせてもらいます」

 「うん。任せて。ソノラちゃんの分も私すごく頑張る!」

 両手の拳を握って笑いかけるフワワの頭をソノラがよしよしと言いながら撫でる。

 もはやソノラの癖になりそうなそれに、フワワは少しだけ目を細めて照れ臭そうにはにかんだ。



 「おい、ついたぞ」


 朗らかな様子を嗜めるように、いつも通りのカナカが声をかける。

 その先にある入り口はエレメンターギルドのものだ。




御覧くださりありがとうございます。

次話は11/27(木)に更新できると思います。

お気に召しましたら次話もよろしくお願いいたします。

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