窒息死
今日の昼間、久々に外に出た。
前に出た時より冷たい空気に喉が凍えて、マスクを付ける。
もうそろそろ冬支度もしなきゃな。
薄手の上着だけじゃ寒くなってきたのを、痛いくらいに実感した。
好きだった金木犀も、いつの間にか匂わなくなっていて、地面を明るくしている。
気付けば、深緑だって、橙色に衣替え。
少しばかり外に出ない間に、風景は大きく変化していたようだ。
自分の上着のチャックを閉めながら、置いていかれたような寂しい気持ちが、心に注がれていった。
学生という身分のくせして、ずっと外の世界に足を運ぶのを躊躇していた自分が、今は心底憎らしい。
外に出る、というのは案外簡単なことだ。
服を着替えて、髪を整え、鞄を手に持つ。
玄関の前で一度深呼吸をして、扉を開けて、歩き出す。
ただそれだけのこと。
だが、僕には“それだけ”のことでさえ難しいことだった。
なんと言えば良いのだろうか。
胸の奥が締め付けられる感覚を覚えてしまう。
行かなきゃいけない、もちろん分かっている。
けれど、無理に行くと、心が窒息する。
息を止めるのさえ快感だったあの頃が懐かしい。
今は随分と臆病になったものだ。
そんな僕が、今日、久々に外に出た。
まだ世界は綺麗に見えない。
けど、それぐらいが丁度良いのだろう。
駅の改札にICカードを翳すと、臆病ながらも、少しずつ、ゆっくりと歩き始めた。
これが僕の大事な一歩だ、と言わんばかりに。




