第80話 世界紀行
1547年(天文16年)3月24日 越後 春日山城
「入るぞ。待たせて、悪かったな!」
「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」
フフフ、驚いてる驚いてる。
今回俺は、台湾の首狩族の大酋長から
『首刈りの王の王への、忠誠の証しだ。』と贈られた、やたらと派手な羽飾りや無駄な装飾が施された、何とも派手で不気味な頭がスッポリ収まる仮面を装着しての登場だ。折角贈られた物では有ったが、あまりに不気味で下手に装着しようものなら、呪われそうだったので倉庫に放り込んで、すっかり忘れていたのだ。
その倉庫の片隅に眠っていたのを先日思い出して、今回のお披露目となった。
因みに仮面を興味深気に見ていた、近習の山県昌景に試しに被せてみたが、何とも無かったので、呪とかは杞憂であったようだ。
この乱世を代表する様な、曲者達との面談だ。その、ファーストコンタクトは大事だからな!
現に歴戦の強者感が半端無い、中年の男と
ホントに坊主か?と言いたくなる様なとても堅気の方とは思えない初老の坊主が、口をあんぐりと明けて此方を見ている。
ヤンチャそうなガキンチョは、腹を抱えて笑っているがな、流石と言って良いかは知らんが、この状況で笑ってられるのは、流石はノッブだと思う。
「呪って、やろ〜〜かぁ〜〜」
虎と蝮が青褪めて口をアワアワさせてる⋯ウケるわ〜
「旦那様。流石に、戯れが過ぎますわよ。」
「新様、その仮面キモいです!」
「趣味が悪いですわよ。中将様。」
あ⋯⋯ヤバっ…………楽しくてつい、調子に乗り過ぎたらしい
嫁達に叱られた
まぁ、先制パンチはこの位で充分だろ。
真面目に、仕事をするとしようか。
「長尾景重と申す。遠路を越後までご苦労、歓迎致す。」
呪いの仮面を脱ぎ捨て、取り敢えず何事も無かったかのように挨拶して置く。
それにしても、流石に戦国乱世を彩った名将達その能力は半端ない
名前:斎藤道三 男
・統率:87/88
・武力:73/78
・知略:95/96
・政治:91/91
・器用:75/77
・魅力:71/72
適性:謀略 政務 商人
名前:織田信秀 男
・統率:85/87
・武力:80/81
・知略:84/85
・政治:88/90
・器用:77/78
・魅力:75/78
適性:軍略 政務 商業
名前:織田信長 男
・統率:61/99
・武力:68/90
・知略:85/97
・政治:75/100
・器用:80/95
・魅力:68/95
適性:軍略 政務 統率 商業 天運
道三や信秀もまさに、名将と呼べる能力を持っているが、やはり三英傑の一人信長の能力には成長前とは云え、特筆すべきモノがある。なんか、天運って訳の判らん適性まで持ってるしな。
「⋯あははは、やっぱり神童殿は面白い御仁だな。」
「イヤイヤ、お主も相当面白そうだけどな。」
「こら!三郎、余り中将様に無礼な口は!中将様!先ずは先頃の我息子の失態平に御容赦頂きます様、どうかお願い致しまする!」
そう、言っていきなり俺に向かって土下座してくる信秀さん。
一瞬何の事か判ら無かったが、そういや上杉君がノッブのやらかしを報告してたな。
「何も、謝る必要は無いな。寧ろ弾正忠殿は良き跡継ぎを持たれて居ると、感心しておる程じゃ。」
「⋯感心とは?」
「新たな軍船に逸早く興味を持ち調べるのも、うちの軍の強さに興味を持ち潜入する行動力、堀で泳いでおったのも、あらかた堀の深さでも調べておったのであろうな。そして、色々やらかして、俺の耳に届く様したのはおそらく、そのヤンチャ坊主の計算の上での事であろうよ。街のチンピラと揉めたのも、その一環であろうな。中々強かで、優秀な息子殿ではないか。」
「そう⋯言って頂けるのは助かりますが⋯」
「流石、神童殿じゃ良く判って居られる!何処ぞの、頑固者とは違うのぅ。」
「お前のぅ⋯儂が、誰の為に土下座をしとると⋯。」
「三郎(信長)殿と言ったな、俺に話が有るとの事であったが、聞こうではないか。」
さあて、史実にて永く続いた日本の戦乱を終わらせ、革新者とも魔王とも呼ばれた男からどの様な話が聞けるのか、楽しみだな。
「神童殿には、尋ねたい事があったのじゃ。⋯この書に描かれておることは、全て真実なのか?」
ノッブが懐から取り出した、見覚えある書物の表紙には、大海原を往く帆船が美しく写実的に描かれており
【世界紀行】
著:長尾 景重
絵:長尾 綾
と記されていた。
そう、このノッブが懐より取り出した書物【世界紀行】の作者は俺だ。
この書物の中身は、俺の記憶に有る世界地図や世界の地理・風土・文化・風習・宗教・特産・建築物等、俺の識る限りの世界の有様を、引き籠り画伯に伝えそれを絵画として視覚化し書籍とした物だ。
俺は、今世では江戸幕府の様に日本を鎖国化する心算は無い。
江戸幕府が行った鎖国には、国内へのキリスト教の布教の阻止、250年もの長きに渡る平和等、確かに一定の成果はあった。
しかし、長きに渡り世界から孤立した結果、日本は学問、技術において欧米から大いに後れを取る事となった。
そして何よりも、欧米よりも圧倒的に地理的に優位だったにも関わらず、南方進出のチャンスを逃した。
江戸時代の250年の平穏の結果が、日本が後に太平洋戦争に突入せざるを得なかった主因だと考えている。
だから俺は、この時代の日本人には小さな土地を巡って日本人同士で争うのでは無く、もっと世界に眼を向けて欲しい。
この戦国の世から、日本を大航海時代に突入させる。
そう考えて、この【世界紀行】を世に出したのだが⋯⋯
「この、世界が平面では無く球体と云うのは真なのか?日ノ本を幾つか足しても足りん程の砂ばかりの地なぞ、本当に在るのか?この、氷しか無い島なぞ想像もつかん、夏にも溶けぬ氷なぞ有るのか?⋯」
次から次に俺に質問を浴びせて来るノッブ、その表情は真剣でその眼は少年の様に輝いている。
そうか、ちゃんと真剣に読んでくれた若者が居るのだな⋯
俺は、そんなノッブの真剣な質問に懇切丁寧に答えていくのだった。
「むぅ。その、スペインとポルトガルと云う南蛮の国が世界を2分して統治しようとしておると。」
「新大陸とやらでの、そのスペインが悪行、とても同じ人とは思えませぬな。これは確かに、日ノ本も内々で争っておる場合では有りませぬな。」
「………………………………」
「そうだ。こういった南蛮の国に対抗する為にも、日ノ本を一刻も早く統一し国を豊かにし、海軍力を高め南方へ進出せねばならんのだ。」
やけに、熱心なノッブに回答し続けて既に2時間、今では蝮さんや虎くんも興味を持った様で盛んに質問を重ねて来る為に、突如始まった、このプチ勉強会は一向に終わる気配を見せない。
やはり、日本人の好奇心は舐めてはイケナイ。
「うむ。決めたぞ!」
先程から、何事か考え込んでいた好奇心の塊の様なヤンチ坊主が、突然大声をあげた
。
「俺は⋯海に出るぞ!この狭い日本を飛び出し、世界にこの三郎信長が名を、知らしめてやろうてはないか!」
「⋯おい、馬鹿息子よ。威勢が良いのは結構であるが、具体的にはどうするつもりなのじゃ?」
「ふん。そんなもんは、決まっておる⋯」
ノッブが真剣な面持ちで、俺に睨む様な視線を向ける。
流石、魔王と呼ばれた男、若いながらも中々の迫力である
「神童殿⋯いや兄貴!俺を兄貴の弟分にしてくれ!俺は、世界を観てみたい。その夢を叶えるには、兄貴に付いて行くのが一番の近道じゃ。それに、兄貴に付いて行けば随分と面白い事と成りそうじゃしな!」
そう、言ってノッブが眼の前で俺に土下座した。
⋯⋯⋯⋯どうやら、俺にいきなり弟分が出来る様だ。
ノッブ⋯史実でも随分とせっかちな性格であった様だが、その性格は、そのまんまだな。まぁいい、ノッブには将来、海外遠征軍の総大将でも任せてみるかな。
それと、虎と蝮お前等にも少し話が有る。
こいつらには、少々、釘を刺して置かないとな。




