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戦国日本を世界一豊かな国へ!  作者: わびさびわさび


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第60話 新春日山

1546年(天文15年)3月上旬 越後 春日山城



春日山城の天守近くの物見の櫓、其処からの景色は、晴れ渡った青空の下城下町であある府内、直江津の港が一望でき、その先に日本海が美しく広がっている。港には白い帆を張った帆船が静かに進み、多くの軍船、商船が停泊しているのが見える。海の向こうには、佐渡の島が霞んで見え、まだ雪に覆われた、その山々が神秘的に立ち上がっている。


俺の、お気に入りの景色である。

3月に入って、やっと積雪も少なくなり、こうして此処まで来られる様になった。

俺達は、冬の間は殆ど春日山城の麓に有る舘で生活しているからな。


「旦那様、府内の工事も順調の様ですね」


今日は、少し時間が空いたので3人の嫁と近習達を連れて遠足気分で、此処までやってきた。この光景を初めて見る近習達は感嘆の声をあげている。


「ああ、順調だな。この調子なら年内に目処がつきそうだな。」


俺の春日山城及び、その城下町府内、直江津港を含めた地域の〈世界遺産化計画〉

は既に始まっている。


その計画としては、春日山城、府内、直江津、それらを全てを市域化し、その市域を総延長20キロメートルに及ぶ長大な水堀と石垣で囲む総構えの城塞都市である。


この壮大な事業の為に、この時代を代表する石工集団、織豊時代、安土城の石垣を施工したことで有名で、主に寺院や城郭などの石垣施工を行った技術者集団である近江の穴太衆あのうしゅうや畿内で有名な番匠(大工)達などの職人を、俺は日本中から搔き集めている。


この計画のメインの一つが、この春日山城の全面的な改装工事だ。

現在の春日山城を本丸として、その麓の平野部に御殿や各種政庁、重臣達の館を配した巨大な二の丸を新たに設け、その周囲をまた巨大な水堀と石垣で囲む。

本丸は現在の武骨な土塁、板張りでは無く、総石垣に城壁や櫓には白の漆喰を施され、春日山の頂には6層の大天守を建設予定である。

更には春日山城防御機能としては、東側の平野部には先程も述べた通り巨大な堀と城壁に守られた二の丸で守りを固め、山岳地帯と成る西側と南側には壮大な石垣と堀切により鉄壁の防護力を誇る。残りは北側の日本海側だが春日山北方の北国街道と日本海を望む五智山に大規模な砲台を築く予定である、海上から攻め上がるにしてもこの砲台を落とすのは、ほぼ不可能だ。

その威容は、日本海を往く者達からも称えられるものとなるだろう。

この春日山城は、防御と共に魅せる事を、特に意識している。城内の至る所に桜や梅の苗木が植えられ、それらの木々は、春になれば一斉に開花し城内や麓に住む者たちの目と心を潤してくれるだろう。


壮大な城塞と桜のコラボは、想像するだけで心が躍る。

その幻想的な風景を求めて、何百年も後には日本はもとより、世界中から多くの人々が此処にやって来る事となるだろう。


この城を造りあげる事によって、この城が人々を感嘆させ畏敬の念を与える事により、長尾家の権威を高め、平和の象徴、日本人の心の拠り所の様な城になって貰いたいと考えている。


完成が楽しみである。


そして、その市域であるが、先ずは市街を碁盤の目状に区分けし、街の通りは雨でも泥濘む事が無い様に石畳や煉瓦で舗装された通りとなっている。上越平野を流れる関川、矢代川の豊富な水を活用しその流れを変え、市街を流れる無数の運河として利用する。運河の周辺には瓦屋根の多くの商家が立ち並び長尾家や商家の蔵が建てられる予定となっている。その運河は春日山城の二の丸の水堀を経由して、やがては日本海にまで続いている。これにより春日山城から直接海へ出られる事となる訳だ。


市街は大きく分けて4つの地区に別れる、北国街道が通る海沿いの北側は商業や職人が多く住む商業区域、春日山城に近い西側が長尾家の家臣や軍の駐屯所、訓練場等の軍関係の施設が並ぶ軍事区域、東部は一般庶民が多く暮らす住民区域となる。

そして、南部区域は諏訪大社、善光寺、俺の実家でもある蔵田家とも所縁のある伊勢神宮の分社の他にも、八坂神社、南禅寺、建仁寺、高台寺といった応仁の乱から続く戦乱で荒れ果てた京の神社仏閣等が立ち並ぶ予定だ。


俺は、政治に口を出さない限りは、宗教勢力にも寛容である。

戦乱で窮していた京の坊主達も、長尾家が保護と援助を申し出たら、喜んで春日山までやって来た。勿論、政治に関わらない事と、長尾家の法を守る事を条件として彼等を保護する事となったのだ。

将来的には、それらの神社仏閣を目指して多くの観光客や参拝者が訪れる事となるだろう。有り難い事である。


他にも南部区画には、多くの学舎、美術館、博物館、劇場等が並び、文化区域としての趣を持つ、住民も芸術家や学者と言ったインテリ層が多く暮らすと予想されている。

その他にも、街のほぼ中央に回遊型の日本庭園を備えた緑溢れる公園を配し、街には複数の公衆浴場を設置し、公営の競馬場や賭場等も運営していく予定となっている。


街には上水道を完備し、病院や学舎、駅馬車等の公共インフラも充実しており、ごみや排泄物は定期的に回収され、郊外の処理施設で発酵させて肥料として活用される。

この時代では、考えられない程の先進都市となる予定である。


勿論、この街造りには莫大な資金と労力が必要となるが、それだけの価値がこの新たな街造りには有ると。俺は考えている。


この戦乱を真の意味で終わらせるのは、武力だけでは不可能、それが俺の結論だ。


この乱世の〈人から奪うのが当たり前〉〈弱ければ全てを奪われるのは当たり前〉

そんな常識、倫理観から変えていかねばならない。


人々の大半は衣食住足りて初めて他人を思いやる事が出来るようになる。


そして、新たな文化の創造、発信もその倫理観を高める上で大きな助けになる。


そういった意味でも、この新たな都市は未来の日本にとって、重要な意味を持つ事となるだろう。


 俺はこの新たな街を、様々な商業・産業・文化・芸術を生み出す、後世の日本人が世界に誇れるような美しい都市としたいのだ。


俺はこの春日山を、新たな世界の文化、芸術の中心、その発信地、数百年先までも残る、世界に誇る歴史都市にしたい。


目指せ、未来の世界遺産である。


それに俺が、多額な投資をするに十分な意味がある。


そんな、壮大な街造りの構想とその意義を嫁や新たに加わった近習達に、自慢気に話していた所。


「ふぅ~ん。中将様、街造りって意外に儲かるのですね。」


「殿様、なんか悪巧みしてない?」


諏訪ちゃんと凪である


思わず〈ギクリ〉としてしまった


諏訪ちゃんはその卓越した経済感覚から、凪は動物じみた直感からその結論に達したようである。


確かに、新たな街造りには大量の資金と労力が必要となる。


しかし、新たに開発する都市には多くの商人・職人・労働者・長尾家の関係者等の居住希望者がいる。中には京の公家や地方の豪族が一族の安全を求めて居住を希望する者も居る程である。


この一帯は長尾家の土地である。そして建設中の家屋の何割かは長尾家名義の建築物となるのだ。


長尾家は、それらの都市の住人に対して大家となるのだ。

土地を貸し与えたり、建設した長屋の地代や家賃が毎年長尾家に入る仕組みとなっているし、都市の住人からは毎年収入の5%~15%の住民税を徴収予定である。

他にも収入の2~4割が税収となる。

この都市の当初の人口は10万人、最大人口は凡そ30万人を見込んでいる。

現在日ノ本最大の人口を誇る京の人口は、この当時5~10万と言った所だ。

当初の見込みからして既に京を越え日ノ本最大の都市になる見込みである。

長尾家に今後継続的に齎される、その税額はとんでもない額となる。


投資した資金は財務局の計算によると


『10年程で元が取れるのでは。』とのことである。



そう『意外と、街造りって儲かるのね』と云うのが、俺の正直な感想である。



そんな裏事情も有るのは確かだが、この街に込められた俺の想いも確かなものだ。


この先、数十年も経たぬ内に政治・経済の中心としてのこの街の役割は、終了するだろう。信濃川の改修が終われば、越後の中心は広大な平野を誇る新潟に移るだろうし、関東、畿内を平定すれば、その中心は江戸、京、大阪、もしくは名古屋辺りに変わっていく。そんな事は承知の上だ。


だからこそ、都合が良いとも言える。


江戸や大阪、名古屋といった大都市となる可能性を秘めた土地に歴史的な街を残そうとしても限界がある。古い物は時代の流れと共に消えていくだろう。

この春日山城下位の大きさが丁度よいのだ。


願わくば、俺の造るこの城や街が何百年も先の世まで、その往時の姿を留めてくれることを祈る。


それは、きっと未来を生きる日本人に誇りと勇気を与えてくれるだろう。


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