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戦国日本を世界一豊かな国へ!  作者: わびさびわさび


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第39話 北の大地

1544年(天文13年)8月上旬 蝦夷地 徳山館



蝦夷地のほぼ最南端に当たる地に開かれた松前湊には、長尾領はもとより敦賀や遠くは博多などから訪れた商人たちで賑わっていた。湊の露天で売られていたのは、乾燥させた鮭・ニシン・熊や蝦夷鹿の獣皮・矢羽の原料となる鷹の羽・昆布や鱶鰭、鮑といった海産物だ。


やはり本州地域ではあまり見かけることのない珍しい品が多かった。


千代や近習たちもそれらの露店を物珍しそうに眺めていたが、この松前湊から俺たちが案内された、大舘とも呼ばれる蠣崎家の居館、徳山館は、1キロほどしか離れていない至近にあった。


小高い丘の上に建てられたこの武骨な館は、船からも見えていたし、なんなら季広の案内もいらないぐらいである。


 館に到着早々、季広には蠣崎家の内情と蝦夷の現状を洗いざらい吐かせた。季広の話によると、やはり当主の義広の病状は非常に悪いようで、最早先は長くないとのことだ。これでは責任者の首を差し出してアイヌと和解という訳にもいかなくなった。


現状、蠣崎家は、渡島半島東部のシリウチ一帯に居住するアイヌの首長チコモタインと、半島西部セタナイ一帯に居住するアイヌの首長ハシタインと激しく争っているそうで、その支配領域はこの松前一帯と茂別館(現代の函館周辺)を辛うじて維持している状況だそうだ。


友好的なアイヌも確かにいるのだが、蠣崎家をというより和人を嫌うアイヌも多いようだ。俺が連れて来た3千の兵を動かせばこの周辺のアイヌを制圧するのは容易いはずだ。しかしそれでは短期的には良くても、長期的に見れば蝦夷の統治においてはマイナスでしかない。


俺が目指しているのは蝦夷の安定した統治なのだ。やはり蝦夷を統治するには本土と同じ手法では駄目だ。


アイヌからの税は取らない。まずは拠点を作り、交易を通して徐々に経済的に取り込んでいくべきだろう。幸い、アイヌは狩猟民族だ。

農耕民族とは、生活圏が被る事は比較的少ない。

上手く棲み分けることができるはずだ。そこで開墾した田畑で作った作物や、牧場の乳製品や肉、本土から持ち込んだ米などの食料や鉄器や様々な物品、それらを知れば彼らもそれらの物品に依存せざるを得なくなる。


だがそれらが欲しければ、今行われている物々交換では限界が来る。手に入れるには銭が必要となってくるのだ。


銭を稼ぐために家に雇われたり、和人に雇用される者も出てくるだろう。


そうやって徐々に和人の経済圏に取り込み、その一部としていく。


そうすれば、やがてアイヌの子供も学舎に通うようになるだろう。


そこで日本語を教え、文化を教える。神社を建て、参拝させる。ただ決して強制はしない。そこが重要だ。


そうやって彼らを日本人として取り込んでいく。


時間はかかるが、言語も習慣も違う者たちが共に暮らしていくには、それしか無いのではないだろうか。無理を通せば必ず軋轢を生み、争いとなる。


今の蠣崎家のようにな。


そうするためには、まずは争っているアイヌ氏族との和睦が必要になってくる。


そこで俺は、現在争っているアイヌの首長チコモタインとハシタインに和睦の使者を送ることにした。


使者は、アイヌとの付き合いが長い安東家当主舜季に頼んだ。


蠣崎家に散々騙し討ちを受けたアイヌが簡単に乗って来るとは思えないが、とりあえず話し合わなければ始まらない。


舜季に米や酒などの食料や硝子や陶磁器といった工芸品を土産に持たせ、アイヌの首長たちのところへ向かってもらう。


蠣崎家の仕打ちを知るに、簡単な任務ではない。会談場所も、流石にこちらに呼び寄せてもホイホイと来ないだろう。


俺がアイヌの集落に出向いてもいい、くらいに考えていたのだが。


3日後、舜季に連れられてアイヌの首長チコモタインとハシタインが、この松前にホイホイとやって来た。


この人たち、もっと警戒することとか覚えたほうが良いと思うよ……


最も、こちらとしては騙し討ちなどする気は無い。ありがたい話ではある。


早速宴の用意をして歓迎した。


その後、長尾家が新たにこの地の支配者になったことを伝え、長年争いの火種になっていた交易の関銭の割合を互いに利益の出る割合に改め、アイヌの各村々と松前などの和人集落への商人の往来を自由化させた。


ただし、アイヌの村々を訪れるのは暫くは長尾家が許可を与えた商人だけにしておく。


別にアイヌとの交易独占を狙っている訳じゃない。


だって……この人たち、簡単に騙されそうだから。それが火種となって反乱とか勘弁してほしいからな。


チコモタインとハシタインの両首長は、

俺のことを「神位得位(神のように素晴らしい友)」と称えながら、帰りに持たせた土産を満面の笑みで受け取って、満足そうに帰って行った。





取り敢えずこれで道南のアイヌの問題はひとまず大丈夫そうだ。


しかし、この蝦夷地は広い。俺の主要な目標は、日本で関東平野に次いで2番目、3番目に大きな平野である石狩平野(札幌・千歳周辺)と十勝平野だ。


次いで道東地域の広大な丘陵地帯。これらの地域は、現代でも日本有数の穀倉地帯だった。そういった地域にも、それぞれ定住しているアイヌの人々がいる。できることなら、そこで暮らすアイヌの人々とも良き関係を築いていけたらと願うばかりだ。


まずは函館に港を造り、そこを起点にして小樽、苫小牧、十勝、釧路、根室に拠点となる港を造っていく。そうして拠点となる港から徐々に蝦夷の内陸部へと浸透していく。長い戦いとなるが、日本の食料自給率を上げるためには、この蝦夷地の開拓は避けては通れない。


ただ、気合いだけで開拓が成功するほど、北の自然は甘くはないだろう。開拓を成功させるために、俺は幾つかの物を開拓者たちに提供する予定だ。


1つは気密性の高い住宅。冬は-30度にもなる北の大地で、隙間風の入るような家ではとても過ごすことはできない。木材の規格の統一と工法の見直し、ガラス繊維を使用した断熱材の開発で、冬でも快適とは言い切れないが、なんとか冬を越せるほどの室温を保つことができる。これは春日山城近くの、冬の妙高高原で実証実験済みである。他にも薪ストーブなどの暖房器具、寝具、衣服など厳寒装備も用意した。


開拓者の皆には、何としてもやり遂げてもらいたいものだ。


それから5日ほど松前に滞在した。周辺のアイヌの村を訪ねたり、逆に館を訪れたアイヌの首長と面談したり、周辺の散策を楽しんだりと、忙しくも充実した日々を送らせてもらった。そして最終日には船で港の建設予定地である函館に向かい、千代や近習たちと共に函館山に登った。


あの100万ドルの夜景で現代で有名な場所だな。最も、この時代は夜に登っても漆黒の闇夜が広がっているだけだろうが。


「なんと、壮大な風景なのでしょう。」


「新様、一体どこまでこの大地は続くのですか?」


頂上付近の岩場から見た光景は、まさに絶景だった。森というより樹海と呼べるような、遥か先まで続く緑の海。その中に点在する湖沼。人の手が全く入っていない原始の森だ。


素直に美しいと思った。本来なら、人の手を入れず、このままこの自然を護っていくのが正しいのかもしれないが、今の日本人にそんなことを言っている余裕はない。

この大自然になんとしても打ち勝つ――いや、共存を果たし、日本の未来を少しでも良くしたい。


そんな思いを胸に、俺は蝦夷地を後にしたのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰路の船中


「いやぁ、蝦夷地とは中々見所が多かったですな。」朝信


「そうだな、安東水軍との戦も大勝であったし、良い経験ができた。」一益


「海の旅は初めてであったが、随分と性に合うようじゃ。」可成


「俺もそうだ。甲斐は山国で海など見たことが無かったからな。そういえば、対馬に向かった大殿と宗滴様はどうなったのであろう?」信友


「天下に名高い名将が2人も揃っているのだ、大勝利間違いあるまい!」一益


「う~~ん、大丈夫かな?あのお爺ちゃん2人で。」凪


デッキで海風にあたっていると、そんな近習たちの会話が聞こえてきた。


……ん?


何かが引っかかる……。


……そうだ!


凪の話だ。「大丈夫かな?あのお爺ちゃん2人で」これだ。


良く考えると、戦ジャンキー×2で送り出してしまった。


片や生涯百余戦と言われる狂犬と、片や「死に場は戦場」と公言する筋金入りの戦好き。


負ける……とは露ほども思わないが……


『クククク、思わず島民皆殺してしまったわ!』


『ハハハハ、九州沿岸を手に入れましたぞ!』


とか平気でやりそうな2人である。


1+1ではなく、ジャンキー×2なのだ。


下手な相乗効果を生みそうで怖い。


急に不安に襲われたが……海の上、今更如何ともしがたい。


きっと……大丈夫だよな?


一応、歯止めとして勘助も付けている……頼むぞ、勘助。

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