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75.情報を確保する。

初期サブタイが情報と交渉、だったんですがこれ交渉じゃねえな?となりまして。

 さて、契約者は恐らくサンファンの黒鳥で合っている、とすると。

 改めて、カルセスト王子の魔力の流れ、そしてそれを絡めとっているものを見る。


 わあ、これは。情報を無理やりにでも引きずり出して、さっさと契約を断ち切るのが、きっと正解だ。


「なになに嬢ちゃんどうかしたの?じっくり見られてっけど、まさか俺に惚れた?」

 ぶすっとした仏頂面で、軽やかな口調でそんな寝言をほざくカルセスト王子。


 いや、今喋ってる奴は、違う!


「ないわねー、でもあなたに話はあるのよ、黒鳥さん?」

 面倒だ、ずばっといこうズバッと。

 今はハッキリと、属性がカルセスト王子のそれとは、変わってしまっている。

 恐らく一時的に何かが、恐らく中身が入れ替わっている。


 今喋っているのは、黒鳥だ。属性は、風が最大、次いで結構でかい感じの闇、ついでのように火も持ってる。まあ聖獣なので魔力も属性も、人よりかなり多い。


「何のこと、いや、完全に把握されてるな?ほんと大した女だわあんた」

 明確に態度が変わる、カルセスト王子、でも中身は黒鳥。


「あたしのことは今はどうでもいいわ。あたしたちを動かせるだけの情報を出しなさい」

 あたしは解き解し、解明する者。

 そのあたしが契約の全容を知ってしまったからには、いつでも契約を強制解除してこいつを追い出せるので、手短に、威圧的に。

 いや割と今あたしガチで腹立ててますんで。


 この契約が、もうちょっと穏便ならよかったんだけど。

 契約時にお互い同意しているとはいえ、それは存在――位階の違いのせいもあって、随分と一方的な、カルセスト王子側の不利益を含んでいて。


 うん、今のカルセスト王子の状態の不安定さ、こいつの何らかの不具合を契約を利用して押し付けられてるせいでもあるみたいなんだ。

 このまま放っておくと、最終的に化身自体が一生出来なくなりかねない。


 カルセスト王子自体はそんなに好きじゃないけど、彼の龍の姿が飛んでいるのを見るのは、喪わせたくない、って思う程度には好きなのよ。あたしの勝手な感情だけどね。

 物理的に顔を貸している、という良く判らない情報も含まれていたけど、それはまあ後回しでいいわ。今のあたしたちには関係ない。


「おうおう、強気なことだな?さては、読み解いたか」

 ランディ様は傍観の姿勢。まあそうね、真龍の力加減じゃこれを弄るのには流石に強すぎる。


「読み解く?……ッ、契約を、か!

 まあしゃあない、俺ら的にも、早期解決は願ってもないことだし、この状態を維持するのも結構なコストがかかる。

 知りたいのはまずは下手人の居場所と、その後の行動指針でいいか?」

 あたしがしたことに気付いて、黒鳥が険しい声、但し表情はいつもよりだらけた感じ。


 ああ、こいつも同じ状態なのか。感情と表情の乖離。慣れる前に解決したいわねえ。


「そうね、それ以外にもないと困る情報もあれば」

 イードさんはこの話に関しては完全に蚊帳の外なので、無言のままだ。

 中身が兄じゃないことには気付いているわね、なら問題ない。


 ちょい、と遮音結界を張りなおす。

 部屋からは退出したとはいえ、ジェニアさんにまで聞かせる話じゃない。


「ん?ああ、助かる。あまり多人数には知られたくない。

 さっきいた奥さんは荒事とは無関係そうだしなあ。

 で、まず下手人だが、アスガイアにいる。

 俺らが把握してるのはひとりだが、坊ちゃんの術が族滅ってからには最低もう一人いるな?」

 黒鳥の言葉に、麒麟の子が頷く。


 しかしまたアスガイアの名が出て来るとは思わなかったな。


「そっちは掴めていないが、恐らくそいつも居場所自体はアスガイアだろう。

 あそこの国神が噛んでる可能性が高いんだ。おかげでそれ以上は今の俺たちで探るのは無理だった。

 で、そいつをどうにかしたら坊ちゃんの隠蔽は解けるんだが、その時に坊ちゃんに関しては、最低でもアスガイアにだけは居て貰っちゃ困る。

 多分あそこの国神が狙ってるのはそれだからだ」

 黒鳥は一気にそこまで告げて、麒麟の子をじっと見る。


「あの国も過去のやらかしで限界までヘタっているから、守護聖獣を欲している。

 あの国には元々いなかったから、囲い込めればワンチャンあるって考えなんだろう。

 隠蔽が解けただけの状態だと、存在が守護と結びついていないから、強制契約で絡めとることができるらしいんだ。実例は聞いたことねえけど」

 うわ、アスガイアの国神、割と腐ってんな?

 あ、神力が僅かに感じ取れた。怒ってるおこってる。メリエン様がお怒りです。


 ええ、筒抜けですんで!

 とはいえ当面はこの案件はあたしたちに任せてくださる意向のようだ。

 あちらの防衛も大変らしいからね。せいぜい真面目に働きますとも。


「俺らはそれどころじゃないけどな、麒麟という要を完全に失えば、確定で国自体が亡びる。ま、それこそが北の奴らの狙いなんだがな」

 北?あーライゼル!どこまでも、祟りおるな、あの国!


「つまり下手人自体はライゼルの奴で、そいつらはアスガイアに匿われていて、一旦生かしたままアスガイアから連れ出す必要がある、でいいかしら?」

 あたしがまとめた言葉に、黒鳥が頷く。


「本国出身者ではないだろうがな。

 あいつらそういう汚れ仕事は、属領にやらすのがデフォだし。

 ただ、唯一神に仕える光の王とか言いながら、あそこの王は死霊術師やら、子飼いの暗殺者やら、胡散臭い奴ばかり手元に置いていやがるから、そういった直属勢の可能性はないとは言わん」

 けっ、と吐き捨てるような声音に笑顔でそんなことを言い捨てる黒鳥。


「あそこがろくでもないの自体は知ってるわ。

 で、現状でこの子サンファンに戻れるのかしら?国に属する者に、境界は閉ざされているわよね」

 ライゼルについては心から同意しておいて、神罰とは明快に言わずに質問する。

 流石にここで相手の感情を逆なでする気はない。


「ああ、坊ちゃんの場合は存在が国の飛び地みたいなもんだから、入ることはできる。

 出られるかどうかは誰も試したことがないから判らんが、恐らく無理だな。

 あと俺の本体はもう入れない。ちょうど外で出稼ぎしてたんだよねえ」

 守護聖獣の、出稼ぎ?なんか今絶対聞いちゃいけないことを聞いた気がするんですけど?


 ちらりと見たランディ様も、表情こそ真面目に繕ってるけど、何言ってんだこいつ、って感情が駄々洩れしている。

 イードさんは思考停止しかけている。それだけありえないことのようだ。


「ボスが殺られたのがとどめになって、色々国内不具合出まくってて、というかそれ以前にも結構問題が出ててさ、国内だけで全部賄うのが無理になりかかってね。

 俺は飛べるし化身も得意だからちょっと他国でリソース確保のための出稼ぎしてたんだよ。そしたら、戻れなくなった。


 正直、呪詛で倒れてる現王は、ここ数代では割とマシな奴だったから、他国侵攻なんて命令は流石に出さない。

 多分やらかしたのは宰相なんだろうけど、一番嫌なタイミングでやられたよ」

 ちなみにここまでの情報は、こいつにも教えてあるからな、と付け加える黒鳥。

 こいつ、はカルセスト王子の事だろう。一応情報交換の部分は、ちゃんと契約通りにやってるのね。


 それにしても、国内が回せなくなるレベルの問題って、サンファン、割と早くから詰みのサイン自体は出てたってことよねえ?


《守護聖獣の力が強すぎて、国神が干渉を放棄していたといいますから、最終的に責任は国神が取るべき、とメリエン様が》

 はいジャッジ出ましたー、サンファン国神、アウトー。

 まあ仮にも国神だから、アウトだからってすぐどうこうできるわけじゃないですが。


(今日はいやに境界神の力を感じるが、国境故か?)

 ランディ様の疑念が飛んできました。おおっと。


 多分そうですね、こないだタチの悪いスタンピードが飛んできてたんで、警備強化中らしくて境界自体が強まってますし、と答えておく。間違ったことは言ってない、うん。

 そういや、この流れだとあのスタンピード飛ばした件の詳細は、黒鳥は知らなさそうだなあ。

 どうせのりこめーして国神もシメる流れになる気がするから、その時でいいか。


 ……いや待って、なんでそんな流れに納得してるのあたし、そこはそうじゃないでしょう?!

 人間が国神様シメるとか不遜とか下剋上って話ですらなくない??


《巫女とは代理人でもありますから……いえあなたは未契約ですけど……あれえ?》

 シエラまで首を傾げるこの現状。流されないように気を付けねば。


 ……手遅れかもしれないけど。

言葉に乗せる感情と表情のずらし方で何度か手が止まった回。

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