番外編:水晶龍事変 エピローグ
何故だ、何故3話に収まらなかったのだ……
城砦の状態を確認したら、結構な破壊っぷりで、イードさんが使っていた部屋は完全に瓦礫の山になっていた。
ずっと彼が愛用していた、ヘンチャナの香りが残っているのが、侘しさを感じさせる。
ただ、他のメンバーの部屋はちょっと壁にヒビが入った部分があるだけだったから、カナデ君に応急処置で〈固着〉を掛けてもらう感じで当面は凌ぐ事にした。
壊れた部分を一旦雑に撤去し、取りあえず人が入れる状態に戻してから王都に帰還したら、すっかり朝だった。
ざわつく王城だったけど、意外と平穏だな、と思う。
一斉に鱗、そして化身能力を喪い、いわば元・龍の王族になった皆は、思ったより大きな変化や混乱はなさげに見える。
魔力も属性力も、増えた人はいても減った人はいない。
ただ、皆、髪の色はメッシュが消えただけで大体そのままなのに、琥珀色だった瞳が全員、色がバラバラに変わってしまった。
「あ、カーラ嬢、多分今朝がた辺りからサクシュカ姉がいないんだけど、知らないかい?」
普段通りの調子で、空色の瞳になったカルホウンさんに問われたので、一旦首を横に振る。
だって、あたしが知っているのは、ラハーリ・ファリーゼ様の行方だけ、だ。
なお、彼等の記憶からも、二十番目の弟の存在は、消えていた。
何がどうなっているものか、戸籍記録にも、一切残っていなかった。
あと一つ驚いたのが……
……マグナスレイン様が、なんか、縮んだ。
元は異様に体格のいいひとだったのだけど、二回りくらい、小さくなった。
あれも鱗を余分に持っていたせいだったのか……!
なおマグナスレイン様の瞳は、最初に会った頃に一瞬だけ見えた、綺麗な青になった。
あの時のあれは、どうやら本来の色を何らかのすり抜けで、透かし見ていたものらしい。
魔力量は亜竜級で変化がないので、髪は魔力の黒のままね。
水晶龍様の不在の方は、シンプルに、ついにこの日が来たのだな、で終わった。
どうも、早くからそうなる可能性は示唆されていた、らしい。
そう言われてみれば、魔物の発生があからさまに減り出してから、彼らの訓練内容から、化身での飛行が極端に減っていた、そんな気はする。
そうしょっちゅう訓練風景を見ていた訳じゃないけどね、あたしもあっちこっち飛び回る生活してるし。
「そうだ。其方たちの討伐報告の翌日だったかに、太母様の訓示があってね。
サクシュカリアが、子供の頃から我らが太母様と繋がりがあったのは知っていたから、我も納得して、国軍の方針を切り替えた。
今後は警備隊共々一般兵を増やし、魔の森そのものの探索に力を入れる事になるだろう」
マグナスレイン将軍自らの解説に納得するしかない我々です。
「じゃあ今の俺達の活動はそれまでの先遣隊みたいなもん、ってことでいいのかな」
サーシャちゃんの言葉も、すんなり肯定されて、あたしが個人的に雇う形だった三人組とアスカ君は、正式に国からの依頼を受けた調査隊として再編成された。
「オレは村の移転絡みで、そこまで頻繁に参加はしないけど大丈夫だよな?」
「どうせ猫の国へはひとっ飛びなんでしょ?」
アスカ君の発言には、そこまで変わらないのでは?と突っ込んでおく。
転移持ちの機動力を、本人が甘く見てませんか?
「いや、それをアテにされて移動依頼が来る可能性があるわけで」
アッハイ。あたしも国単位の移動の時はアテにしてます。ごめん。
国内なら大抵の場所には、フライステップ君や、今後はハイウィンさんで事足りるんだけどねえ。
超級召喚師の一人が、データ丸ごと喪失した結果なのか、何故か、今朝がたになってあたしの召喚師称号が超級見習いに変わっているのに気が付いた。
見習いなのは、まだ超級枠を誰も呼んでないからですね。
恐らく、超級指定に必要な四種四体を呼べれば、見習いが外れるはずだ。
今の超級契約は……ハイウィンさんとイルルさん、イスカンダルおじいちゃん。
うん!足りない!
「また見習いが増えた」
サーシャちゃんに突っ込まれたけど、だってしょうがないじゃん!
「超級の契約数が足りてないのよ。呼び出し四体が確定条件だけど、契約が三人なのよね」
あえて後半を人、とカウントしたのは、イルルさんが混ざっているし、ハイウィンさんも頻繁に化身姿を披露してくれるからね。
「あ、数は足りております……あたくし、八尾で超級に上がりましたわ」
なんですと??確かにカスミさん、八尾で格段に炎術の火力が上がったらしいけど!
……うっかり尻尾が増えるようなモフり方したあたしのせいですね。はい予定調和。
ただ、八尾の段階では召喚師称号そのものに変化はなかったから、やっぱり世界がデータの不整合のつじつま合わせにあたしに役目を投げてきた感じがするなぁ。
”他に なれそうなものが 居なかったので”
世界さんのシンプルな解説が、その推測を肯定する。しってた。
「ねーちゃんなら、契約できれば白いにーちゃんの再現あれこれできそう、魔力量的に」
「名前も居場所も判らない子ばかりだから難しいと思う」
それに、世界龍への道で、多分そのうちの大半は喰われることになるような、そんな気がしている。
現状では彼の始めた活動は極秘だから、他の人と契約している子は大丈夫だろうけど。
とか思ってたら、国境城塞に戻った翌朝に、なんと、ヴァルキュリアさん達が訪問して来て、契約を要請された。
そうか、彼女達も異世界から来た存在だから、彼が食べられない勢か……!
なお、彼女達の契約は、個人名で契約したうえで部隊編成を行うという、割と難しい仕様だった。
呼び出すのにかなり訓練が要る奴ですよ、これ。
そんな調子で、ランディさんに契約を解除された、異世界出身組聖獣の皆さんが、気が付いたら向こうから寄り集まってきて、結局あたしが国境城塞の新たなヌシと化してしまった。
もちろん、召喚師も正規の超級になった。
なんか世界さん的には、超級召喚師は常時五人いてほしい、らしい。
契約勢の中には勿論モフでもっふもふな子達もたくさんだ。
手の空いた時にモフり散らかしていたら、もふもふマスターもカンストして……
……何故か、ビーストマスター、に称号が変わった。解せぬ。
鳥も相変わらず普通にモフれるし、称号の字面と中身が合ってないよなあ、これ。
せっかくだからと、超級召喚師としても活動しだしたら、これが案外と忙しい。
かつてのイードさん、よくこの城塞に詰めっきりでいられたよなあ。
今となっては、イードさんという存在を覚えているのは、あたしを筆頭とする異世界人組と、会いに来てもくれないランディさんだけだ。
あとは皆、そんな人がいたことを、忘れてしまった。
サンファンに行ったついでにカル君にも確かめてみたけど、彼もやっぱり自分の男兄弟は生死合わせて十九人だった、という認識に変わっていた。
真龍の島には、今もたまに出かけている。
以前と違って、ハイウィンさんを自由に呼べるようになったので、自力でだ。
いやね、島の北部住みのヴァルキュリアさん達から、訓練を見に来てほしいって要請されるんですよ。
彼女達とだけは、どっちが主で従か判らない契約になってしまっている。
ハルマナート国は、体制を調整しながら、現状では割と平穏な日々が続いている。
元・龍の王族達が龍への化身能力を喪った結果、ひとつ、大きく変わった事がある。
実は、龍の鱗を持つ男子には、生殖能力自体がなかったのだという。
それが、鱗の喪失により、解放されてしまった……らしい。
そりゃあ、あのダンスィずに浮いた噂がない訳だ……
マルロー殿下が例外中の例外とか、完全に想定外ですよ。
女子はそのままらしいんだけどね?
鱗を持たない女子もそうだったらしいのだけど、鱗の喪失時点で該当者がいない状態だったので、もし例えば、サーラメイア様が存命だったらどうなったかは、誰にももう判らない。
既に結婚していたマルロー殿下は、はじめっから子を成せない相手であるエルフ族のユスティーニアさんと最後までラブラブを貫き通す構えだと宣言したので、何事もなかったんだけど。
高魔力イケメン男子軍団が放出される可能性が何故か速攻で他国にバレて、縁談祭りが開催された。
まあ国防上の理由で大半はお断りされたようだけど。
魔物は減ったけど魔獣は増えているから、まだまだ彼らの力は必要、だからねえ。
あたしは現状維持だ。
いや結婚とかまだそれどころじゃないです。
巫女業としての魔の森探索と超級召喚師の仕事で、気が付いたらなんかもう、城塞に碌に帰れないくらい忙しいんです。
マジで召喚師の件を公表したのは失敗だった。
せっかくたくさんの手触りさいつよモフ達がいるのに、のんびりモフってる暇もない!
お願いだから!もうちょっと!モフらせて!!
という訳で、今度こそ完全に完結です☆
700ページ越え、人物紹介回などもいれたら250万文字近い大長編にお付き合いいただき、ありがとうございました!
え?カーラさんの結婚話?知らんなあ!




