629.御神鶏ズ、進化する。
直接メインバトルに参戦こそしなかったけど、身体張ったコッコずにも当然ご褒美はあるのだ。
んんん?んんん?
二度見して、改めてロロさんとココさんを見直す。
わあ!
「御神鶏ズがなんか種族変わってる……!」
【うっかり聖獣化しましたが、何故か見た目が変わりません】
(え、ココだけ喋れてるのずるい!)
ココさんが、しっかりした発話で話す。
本鳥の申告通り、見た目一切変化しないまま、聖獣化してますね。
ロロさんも同様に聖獣化自体はしているんだけど、発話がまだ使えない様子。
「ロロさんも練習すれば発話が使えると思うわよ。
帰ったらうちのジャッキーにでもコツを習うといいわ」
ただ、種族名はロロさんが[御神鶏・絢爛]、ココさんが[御神鶏・錦繍]、と別になった。
それぞれが、違う道を行く傾向は以前からあったから、恐らくは既定路線、なんだろうけど。
「なんで見た目変わんねえんだ、そんな大仰な名が付いたなら、それこそもっと絢爛豪華になるもんだろ、普通は……」
普段の化身姿に戻り、神気もすっかり、本当にきれいさっぱり綺麗にひっこめたアンダル氏が呆れている。
「それもだがアンダル、なんであれだけぶっこ抜いてんのに完全に神気隠蔽できてんだ」
「仕様?」
サーシャちゃんの問いに、雑な一言で返すアンダル氏。
そっかー仕様かーってそうじゃないわ!
【あー、把握しましたしました。今のわたしたちは化身モード。
本体モードがそれぞれ別にあるようですよー】
そしてココさんが自分の姿をあれこれ確認してから、結論を出す。
(化身と本体……あ、これか!)
そして、ロロさんの方はおもむろに、化身状態から本体姿を披露してくれた。
ロロさんは茶色い雌鶏だった。
本体姿もベースは金茶色の羽毛だけれど、首や翼や尾羽、蓑羽が長く伸び、それらが五色の彩を纏い。
その羽毛一枚いちまいが虹色の光沢をもつ、正に絢爛豪華、といって過言ではない姿。
【あ、こっちになったら発話の仕方が判った!妙なものねえ】
そう述べると、ロロさんはいつもの茶色い雌鶏姿に戻った。
「うわあ、ロロさん綺麗だったねえ!ココさんも見せて?見せて?」
【しょうがないですねえ、今だけですよ?】
カナデ君の称賛と要請に、ココさんも化身を解除する。
ココさんは白い雌鶏だ。
新たな本体姿は、体型はロロさんの本体姿と似た感じ。
全身白銀の羽毛が、こちらはお腹以外が全体に長く伸び、その末端に金色と青緑の彩が爽やかに、バランスよく配されている。
蓑羽が艶やかな緑系、尾羽は白っぽいけど金色の輝き。
こちらも錦繍の名にふさわしい美女っぷりですね!
ん?美女?
「ロロさんココさん、ノーマル鶏姿が化身だというけど、人型にはなれるの?」
聖獣格といえば一部例外はあるけど人型化身だ。
ここは確認したいですよね!
【現状だとあたしは無理ねー?必要な気もあまりしないけど】
【わたしも今は無理そうです。将来的にはあり得ますが、あんまり興味が沸かないですね】
おきゃんなロロさんも、理知的なココさんも、現状でそれはないという解答。
まあ幻獣化の時ですら、あれだけ普段の姿に拘っていたふたりだものね、そんなものよね。
「おねーさんおねーさん、この子達、また手触りが良くなった!」
カナデ君が元の姿に戻った二羽を纏めて抱えるなりそう言うので、早速あたしも軽くモフらせてもらう事にする。
仕事中?もう終わったし!!!
モフらせてもらったら、これがまたなんとも言えない極上の手触りと羽毛の密度!
凄い!トゥーレの霊鶴さんと張れるよ君たち!!
以前からココさんはお日様のような香り、ロロさんはアーモンドを連想させる香りがしていたんだけど、今回それがさらにはっきり判るようになった。
そういや今回の仕事では呼べなくて暫くご無沙汰だけど、ジャッキーも最近は香りがするのよね、グリーンノート系で爽やかな感じ。
聖獣種族がそういうもの、らしいのだけど。
【本当におねえさんはモフり上手よねえ、気持ちいい】
【才能だと思います。ありがとう】
ロロさんとココさんにモフ技を褒められたのであたしもご機嫌ですよ!
そして、何故か流れでカスミさんの本体もモフらせて貰うことになった。
ロロさん達をモフっているのを見ていたら、モフられたくなったんだって……
【あらあら、まあまあ……なんてこと!】
そして、蓮花の香り漂うカスミさんの尾が、増えた。
「まさかこんな短期間で八尾に至ってしまうなんて……九尾は目指しておりませんのに……」
流石のカスミさんもすっかり困惑顔だ。
でもこれはあたしのモフりだけが原因ではない。
「あー、契約してるから何となく判るんだけど、イナメさんの尾が増えたらしいのよ。
近い親類だと影響が出るみたいよ?カガホさんも増えたっぽい」
そう教えたら、カスミさんが愕然としていた。
「なんてこと……!伯父上はできるだけ八尾以上にはなりたくない、と気にしておられましたのに!」
デスヨネー。あたしもその話は聞いているから、ちょっと気になってる。
これは帰ったらまず舞狐の皆さんの様子見かしら。
サーシャちゃんとアンダル氏が暴れまわった結果、昼頃まではちゃんと神殿だった場所の瓦礫の山は見事に粉砕され尽くし、粉々に砕けた残骸の山に変わり果てている。
その代わり、しつこく張り付いていた瘴気も大体吹き飛ばされて、だいぶんとマシな様相になってはいる。
これは二人が今の身に余る、過剰な神気を放出するために戦っていたからであって、当然の結果といえる。
いや、アンダル氏の方は特に余らせてる感じは、はなっから、全然ないんだけど。
このヒト、神としてとっくに完成したうえで、あれこれ綺麗に覆い隠してる。
ただ、王宮側の建物は、神殿の接続部のあった場所以外はまるっとそのままなので、これはきちんと浄化を試みないと帰れないんじゃなかなあ、我々。
仕事が終わったと思ってたのに、残務を見つけてしまった残念な気持ち。
「この最後の瓶は、神殿にお使いの予定でしたでしょうか」
カスミさんが水晶の小瓶の、最後の一本を取り出す。
「至聖所は埋まったままだから、多分そこに使うことになるかしら」
そう述べたものの……なんだかそうじゃないな?という感じがする。
光超級攻撃魔法という、本来なら異世界人にも手に余る魔法を使った余波による技能の一時停止も大体解除されてきたから、ちょっと周辺を観察しながら、考える。
「あ、下は多分大丈夫だ。
あのズボラの核食ったから判るけど、あいつ魔物化するときに瘴気全部取り込んでるから、瘴気も魔力も神力の残滓もなーんにもない、ただの空洞になってるぜ」
そして、サーシャちゃんから情報が入り、技能もそれが正しいと判定する。
「それなら、あの存在自体が呪物になってる王宮を片付けるのに使うか……」
うん、多分それが正解だ。
「ああ。あれも完全に壊さねえとだめだと思うぞ。
カタチが残っている限り、怨嗟が残るタイプの呪物だぜ、あれ」
アンダル氏の言葉にも、技能は正解判定を出す。
まあ疑う余地なんてない程度に、あたしの目に映る王宮の姿も……あれは存在している事自体がダメだって、はっきり判るけど。
【壊すならちょっと試したいことが】
【そうね、一回やっておくのはアリだと思うわ】
そこに御神鶏の二羽が謎の立候補だ。
「構わないわ、好きにやっちゃって?怪我だけはしないようにね?」
特に異論も出なかったので、ロロさんとココさんにお任せすることになったのだけど……
【おっけー!じゃあやるわよー!】
【ねーさまのいう通り怪我だけはだめよー?】
気合を入れたロロさんと、心配顔のココさんが、再び化身を解除して――
――なんか、巨大化した。
絢爛豪華な美しい羽根を持つ二羽の巨鳥が、さながら鳳凰の如く空を舞う。
だというのに、やっていることは城の尖塔の全て、そしてそこから更に、上の屋根から順番に全ての構造物を、足と嘴で叩き折るパワープレイだ。
そういえば君たち、鳥類なのに鶏だからか、風属性持ってなかったね……
鳥類はこの世界でも、魔力がなくても、風属性がなくても、空は飛べる、のだそうだ。
でっかい霊鳥でも、それは変わらないらしい。
ましてや二羽は元々鶏で、空を飛ぶ習慣自体持ってなかった。
それにしては見事な飛翔っぷりだなあ、とぼんやり思う。
舞い散る土埃は、例によってマルジンさんが風魔法で吹き飛ばしてくれている。
お陰で、こちらは綺麗さっぱりなまま、三十分ほどで王宮建物の解体は雑に完了した。
【結構時間かかっちゃった、構造が面倒くさくて】
【流石に王の住まいだけあって頑丈でしたー】
全てを瓦礫の山に変えた二羽は、戻ってくる間に普通サイズに戻り、地上に降りた瞬間にいつもの鶏姿の化身に戻った。
結局最後の浄化の神薬は、風魔法を使って王宮の瓦礫全体に飛ばして処理することになった。
だってあんな瓦礫の山に不用意に降りたら、あたし絶対足挫くって。
いまだに自分の身体能力を信用してない主人公。
次回、いよいよ本編最終回です。




