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628.『かみあそび』。

 物理バトル回でーす。

「んじゃあ、遠慮なく行くぜ!」

「おう、どっからでもかかってこい、今回の勝ちは俺が貰ってやらぁ!」

 そんな、如何にも不良の喧嘩シーンの開幕みたいな台詞から、サーシャちゃんとアンダル氏のバトルは開始された。


 魔力の薄れた土壌が、神殿だったものの瓦礫が、二人の踏み込みの一足ごとに砕ける。


 今回のタイマンバトルはのっけから、結界張ってなかったら我々死にますね!レベルのとんでもないパワー押し展開だった。


 だからといって、スピード感が薄い訳でもない。両者は、並立している。

 むしろ洞窟内という限定空間ではないぶん、スピード自体も増しているように思う。


 なんと、サーシャちゃんがね、小さくないんですよ。


 神核を砕いて取り込んだ時にはまだ小さかったのに、どうやってか、十年分くらい成長しました!みたいな……

 スレンダーながらも筋肉の流れも軽やかに見事な美女になってまして。


 ちょっとアンダル氏の変化に気を取られていた隙に変わられたんで、どうやったのか、判らない。


《霧が一瞬出ていたので、こちらも観測できていませんねえ》

 シエラの報告によれば視界を遮っていたそうなので、どっちみち見ることはできなかったようだけども。


「思ったよりボンっとしねえんだな」

「やかましいわ!!あんな邪魔なもん要らねえし!女なの、ガワだけだぞ俺!」

 アンダル氏の軽口に、本気で嫌そうな声を出すサーシャちゃん。


 あ、そういえばサーシャちゃん、性自認男性だった、すっかり忘れてた。


 その割に女湯での混浴には慣れたらしいけど。

 多分おもちゃにされ過ぎて感覚がマヒした奴?


「むしろ女嫌いのケがあるよねえ」

 私たちにも原因があるけど、と、悪びれない笑顔でワカバちゃんが述べている。


「つまり、ワカバ、周囲の人を止めたことないんだね?」

 カナデ君の質問には、無言の笑顔だけが返されて。


「……今までの我々の周囲の女性陣、あたしとワカバちゃんで止められる人いたかしら?」

 あたしも、正直言うと、止めようとしたことはない。

 初回のトゥーレの頃は隅っこでぐぬぬってるだけだったから、そもそも放置してたけども。


「あー、偉い人とつよいひと……」

 カナデ君も納得したようで、観戦に戻った。



 最初にアンダル氏と遭遇した時のバトル同様、今回も二人は無手だ。

 当時と違って、アンダル氏の方も普通の手指で、特に凶悪な爪を装備したりはしていない。


 まあ今回のアンダル氏、腕は六本あるんだけども。


 その六つの腕をフルに駆使して、風のようにハイスピードで突っ込んできたかと思えばひらりと位置を変えて死角を狙うサーシャちゃんの攻撃を悉くいなし、時折踏み込んで反撃に転じ、更にそれを回避されて位置を入れ替え。


 大量に舞う土埃は、マルジンさんが風魔法で随時吹き飛ばしているので常時視界は維持されているけど、恐らくそれは我々が観戦するための補助であって、本人たちは目視をあまり重視していない動きだな、と思う。


 あからさまに、というかどう見ても物理的に相手の手数の方が多いにも関わらず、基本的にサーシャちゃんがずっと攻勢だ。


 初回遭遇時のアンダル氏の時とは逆かな。

 あの時は、アンダル氏の方が殺意マシマシで、攻勢をかける側だったように思う。


 今回のバトルは、双方とも、相応の本気でやってはいるんだけど。

 ……思いのほか殺気の類は感じない。


 多分これ、単に過剰になったエネルギーを放散する為の儀式のようなもんなんだと思う。


 創世神だったものだけあって、何であんなきっちり隠れてられたんだ?と疑問を呈するレベルには、食われた神核のエネルギーは大きかったので。


《分析結果が出ましたよ。ライゼリオン神の核でズボラの核を包んでいたもののようです。

 国神としての力に隠蔽させていた、ということのようですね》

 ライゼリオン神のものだった神体の崩壊と同時に核も崩壊し、ズボラのそれだけが残ったのだという推測がシエラから渡される。


 天の声は、もうあたしには聞こえない。


 シエラの方は〈書庫〉経由で現存するこちら側の神々とは連絡が取れるから、間接的に情報を受け取る事自体はできるけれど。


「そういえば、完全に倒しちゃったなら、ズボラ呼ばわりはもうしなくていいんだっけ」

「今更本名とか、どうでもいいから知りたくもないかなあ」

 そういやその辺の隠蔽は解除されたのかしら?と思って呟いたら、カナデ君から割ともっともな答えが返ってきた。


「そうでもない、世界の名すら伏せられてたから、現在地情報としては必要なんだよな、少なくともオレには、だけど」

 アスカ君の方は、バトルから目を離さぬまま、その情報はまだ必要だという。


 そういえば、世界の名前も秘されていたんだったっけ?

 世界自体に名前がない事もよくある雰囲気だったから、気にもしていなかった。


 せいふぁーりあ 好みの名ではないが


 どこかから、声がする。


 多分、あたしにしか聞こえないそれは、世界の意思、そのものだ。

 前から時々接触はしてきてくれていたよね。


 この情報も、ズボラが喪われた結果、やっと正確なところが判明した。


 あたしの称号の一つ、[境界の巫女]とは、この世界の意思に繋がる為のものでもあるんだそうだ。


 つまり、最初から、この世界はあたしにいろんな働きかけをしてくれていたのだ。

 その積み重ねが、今のあたし達という訳ね。


「セイファーリア、が世界の名前だそうよ。

 ズボラが自分の名前から直接付けたせいで巻き添えで秘されていたのね」

 アスカ君の問いには回答しておく。


 何故か技能がそれが必要だと申しておりまして。


「ふむ……よし!!回路接続!ってだめだー!外に出るには魔力が足りねえっ」

 そして、回答を聞いたアスカ君からは、謎の台詞が。


【……ヤグス、外にということは其方、転移魔法が解禁されたのかね?】

 上空で風魔法を駆使していたマルジンさんが驚きの声。


 なぬ?転移魔法???


 あ!でもそうだ!彼の来歴を聞いた時に、転移魔法の話あったじゃん!

 マルジンさんの世界で唯一の、転移魔法を使える勇者にして魔法開発者、って!


「おう!よし、マップと同期できたから、行った事のある場所になら飛べるぜ!」

「まさか全部終わってからランディお兄さんに頼らなくて済むことになるとは」

 晴れ晴れとした笑顔のアスカ君の宣言に、カナデ君がタイミングぅ、なんてぼやいている。


「いや、あいつが存在している限り絶対に解禁不可能だった感じだから、必然だよ必然。

 帰りが楽になるのだけでも喜んで?」

「まあ!お嬢様がどうにかなると仰っておられたことは、本当にどうにかなるのでございますねえ!」

 アスカ君が苦言を呈し、あたしが戦闘突入前に言っていたことを覚えていたカスミさんがどっちを称賛しているのかよく判らない台詞を述べる。


「えっ何?直帰できんの……うばぅっ!」

 そして、見事にこちらのやり取りに気を取られたサーシャちゃんが、アンダル氏の腕の一撃をまともに喰らってそのまま抑え込まれた。


「そこで気が散るのかよ!という訳で俺の勝ち、その神核の力は没収な!」

 六本の腕でサーシャちゃんを完全ホールドしたアンダル氏が、さっくり勝利宣言したかと思うと、何らかの力を発揮する。


 うん、完全にこれ神の力。それも、異界の、結構強力な奴。


「えっ待て、それまで持っていくのか」

「だってお前、もうちょっと背欲しいんだろ?」

 どうやら、サーシャちゃんが元々持っていた何かの一部も奪い取ったらしいアンダル氏の発言に、一瞬で元のサイズに戻ったサーシャちゃんがうっ、と怯む。


「このくらい奪っておけば、普通の人間より少し遅いくらいの成長速度でいけるだろ。

 カナデもワカバもその権能はまだ完全定着させるには心身が若すぎる。それもちょい預かる」


 シゴデキ男がてきぱきと、ネットワーク上の、問題のある権能というデバイスを回収しているのが、マップの為に一時的にネットワークへの融通をしているだけのあたしにも、知覚だけはできる。


 へえ、こんな繋がり方してたんだ。


 今の彼らのネットワークは、アンダル氏が中枢演算装置的な存在となって、主管理者がサーシャちゃん、副管理者がアンダル氏自身、サーシャちゃんの直下にワカバちゃんとカナデ君、アンダル氏の直下にタイセイ君、そんなカタチだ。


 鶏たちはその更に下、カナデ君の直下にいる。

 ……んんん?

バトルというより、暇ならぬエネルギーを持て余した神々の遊び、って奴ですね!


という訳で無事全部決着したので、次回はおまけ感のある鶏騒動。

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