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61.室内なのが悪い!

光魔法に攻撃が少ないのは仕様。

 ああそうだ、サクシュカさんには効果が薄いっていうから使った事なかったけど。


「〈ライトブレス:マリーアンジュさん〉」

 マリーアンジュさんは普通の人間だから、守護魔法も効果がそれなりに出るはずよね?

 あたしが今使える守護魔法は〈ライトブレス〉一択だけど、相手がデーモンだから丁度いいといえばいい。


「あらカーラ様、有難うございます。守護魔法、結界だけでなく強化もお使いになるのね。昨夜の結界もなかなかの規格外でしたし、賢者とか目指せそう」

 そう言ってうふふと笑うマリーアンジュさん。


「いやー、流石にそこを目指すのは難しいんじゃないかな……」

 そもそも、目指してもいません、というか多分あたしには無理だしね。

 賢者の称号に必要なのは、全魔法系称号中級以上、かつ称号の等級が揃っている事。中級で小賢者、上級で賢者、超級で大賢者、だそうだ。まあシステム的にはシンプルですね。全系統超級の大賢者は、この世界の歴史上一人もいないそうだし、賢者も数人しかいないんだそうですけど。治癒の上位が使える人が少なすぎる事と、何よりも治癒持ちそのものの少なさがネックだそうな。

 あたしも光属性こそ極大だけど、実は光には超級攻撃魔法がないので、大賢者は逆立ちしても無理。風は属性値がそこまで高くないので中級くらいまでしか使えないっぽいし。

 まあ、称号を揃えるって条件が多分達成不可能なので、賢者称号自体が無理ゲーでーす。


 というのも、あたしの場合、魔法陣さえ覚えれば治癒は超級が確定しちゃってる。例の賦活が超級でしたハイ。

 ただ、この〈生命賦活〉、ここ数百年使った人がいない疑惑があって、魔法陣の実物を見る機会があるかどうかが怪しいっていう罠があったけど。

 そもそも治癒は初級に限定しても使える人がかなり少ないから、神殿が、結構必死に使った実例や魔法陣の記録を収集しているそうなんだけど、中級まではいざ知らず、上位治癒はかなり実例が稀、超級である〈生命賦活〉に至っては、見たことのある人すら激レアだそうで、使われた記録は辛うじてあるけど、魔法陣の記録がない可能性が高い、らしい。

 ソース?昨夜、眠気覚ましの雑談で神官長様とマリーアンジュさんに聞いて、シエラに裏取りました。あ、流石にあたしがそれらしいものを使える、って話まではしてないです。

 国王陛下の治療の時も様子見で気持ち強めのギリギリ初級〈治癒〉だったからね。聖女様は〈上位治癒〉使ってたので、魔法陣はひっそりこっそり覚えさせてもらったけど。

 実は、あたしの賦活だと身体的に若返ったうえに呆けた状態が残るなんて悪夢がありそうだったんですよ……そう、如何にあたしの光極大属性プラス馬鹿魔力がいろいろやらかせるといえども、できないことはある。大抵の呪詛本体は消せるけど、それで魂が傷ついてしまっていると、そっちは治せないの。それは、神様の領分だ、人には無理。


 なおこの生命賦活の件でも検索ベース君は反応しない。なんていうか、初級魔法陣でもゴリ押しすりゃ賦活まで上げられるしええやん、というスタンスの気配がする。

 まあマルチロックかけても十人くらいまでに賦活じゃない方の上位治癒、って条件なら余裕で魔力足りちゃうもんな、あたし……それ以上は流石にコントロールのほうが怪しくなるんでやらないようにしてるけど、魔力面でだけ言えば、一番低く見積もっても、その三倍までは恐らく余裕だ。

 なおあたしの魔法では、初級クラスから上級とか最上位にすっ飛ばしてるけど、治癒中級は〈回復〉、所謂リジェネレーションだそうです。魔法陣が違うそうなので、これもいずれは覚えたい所存。


 さて、なる予定もなれる気もしない賢者の話は置いといてだ。

 室内にはびっしりと張り巡らされた、蜘蛛の糸ならぬ紫の髪。それが随時増えたり動いたりして攻撃も防御もお手の物、といった様子だ。まあ現状相手は半分以上蜘蛛だしね。

 ただ、あたしが部屋に放り込んだ〈灯〉の魔法の周囲にだけは、近寄ってこない髪の毛。灯そのものがだめなのか、光属性に怯んでいるのか、それとも?


《本体ならともかく、末端パーツが怯んだり光を恐れるということはなさそうに思えますが……》

 デーモンは出現数がとても少なくて、資料があまりないそうで、シエラもはっきりとしたことは言えない様子。


「サクシュカさん、デーモンって初見です?」

 一番知っている可能性のありそうなのは、やっぱ龍の王族ですかね、とサクシュカさんに聞いてみる。飛んで来る髪の毛槍は都度結界やシンプルに光魔力で弾く。


「一回だけ見たことはあるけど、その時はもう当時の将軍が倒しちゃうところだったから、あまり実態は知らないのよねえ。光魔力でごり押ししたって本人は言っていたけど」

 少々考えながら、サクシュカさんが答えてくれた対応策、まさかの光魔力でごり押し。


「ええと、つまり、いつもあたしがやってる事ですね?」

 思わずそう返事をしてしまった。ええ、自覚はあるんですよ、自覚は。


「まあそうとも言うわねー。とは言っても、室内だから〈ライトレーザー〉は流石にだめよねえ?」

 あはは、と敵の前とも思えない笑いと共に、サクシュカさんに言われました。ですよね、貫通はだめよね。


「ら、〈ライトレーザー〉ですか……流石にそれはちょっと遠慮して頂けるとありがたいかもですね……」

 案の定、マリーアンジュさんから使うな宣言がされました。デスヨネー。あたしも高級品破壊犯にはなりたくないですハイ。でもあなたさっきウィンドエッジ使ってましたよね。あれも確か貫通では?まあ実際には髪の毛さんが全部受け止めてたけどさ。

 褒賞と、今回後で貰えるはずの手数料で懐に余裕はあるといっても、王宮の、王妃の部屋の調度品弁償するとかはきっと無理。絶対無理。


「とはいっても、そうすると他に光には攻撃魔法がない気がするんですよねえ」

 ない、でいいよね?全部知ってる訳ではないんだけど。


「ないですねえ。ただ、光弱点のものって攻撃魔法以外でもダメージが入ったり怯んだりしますからね。今だって〈灯〉を避けているでしょう?」

 マリーアンジュさんの解説。なるほど、光属性そのものに怯んでるのか、これ。


「へえ?〈灯〉」

 言われたサクシュカさんが、あたしと同じくらいの大きさの灯の魔法を灯して部屋に放り込む。

 あたしのときほど劇的ではないけど、やっぱりずぞぞ、と光から逃げる髪の毛。

 ただ、やっぱり〈灯〉では怯みはするけどダメージはなさそう。


「うーん、怯むだけっぽいですね」

 魔力を光に調整、練り練り。何となくコツが判ってきたので、練り時間が大分短縮されつつある。ああ、さっさとこれを片づけて、検証ターンに入りたい。


「ではお試しに〈消去〉」

 魔法は基本的にターゲットを指定しなくても発動する。その場合は一番近くの目標に着弾するのが仕様なんだけど、なるほど本体にすっ飛ぶ〈消去〉。まあマルチロックの時も端末から辿って本体に飛んでたもんね。あの頃はまだそういう、本体と末端の区別も付けられなかったけど。


 防御する髪の毛を貫通して本体に届く〈消去〉。ただダメージは入ったようだけど、使った魔力に対する効果としては、正直物足りないってレベルじゃない。

 ぶっちゃけ〈ライトレーザー〉撃っていいなら、ちょっと強めの一発で終わるレベルな気がしてるんですけどねえ?室内だし使うなって言われるとそれも納得しちゃうのよ。

 そのレベル貫通させたら、確定で天井か壁に穴開きます。断言できちゃう。


「一応効果はあるのね?」

 サクシュカさんが首を傾げる。


「魔力を調整する時間と使用魔力に対して効果が微妙過ぎますけどね」

 問題点をさっくり提示して、この作戦は諦めるあたし。

 いくら普通の人からみて無尽蔵に見える魔力量を持つあたしといえども、ちゃんと限界は存在している。光属性に調整して練って圧縮、の過程で意外と消費が大きいから、今の効果量だと流石にこっちがじり貧になる、だってあいつちょっとずつ再生してるし。


「再生していますね……?」

 そこに気が付いたマリーアンジュさんが嫌そうな顔をしている。


「そうなんですよ、〈ライトレーザー〉なら落とす自信はあるんですけど、壁か天井確実にブチ抜く自信もセットなので……」


 いやもうなんで室内引きこもってるのよ!〈灯〉でも本体は動こうとしないし!

そりゃもうそこを狙って出てこないに決まってますがな。

まあ初期状態でそういう判断しただけで、言葉を発さなくなった時点で新規思考はできなくなってますが。

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