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554.空路の旅と収納魔法。

移動中の雑談回。

 今回の移動もテイスパス君のお空ワゴンだ。


 公式訪問団十五人に加えて、あたしとトリィ、三人組、アスカ君、ディスティスさんという七名とカスミさんが乗っても、ワゴンの中は結構余裕がある。


 そりゃそうだ、最初に利用した時はハルマナート国とフラマリア国の調査団十二名ずつと、あたしと三人組とランディさん、だったから今回より五人くらい多かった。

 それでもちゃんと余裕持って乗れたんだもの。流石に荷物はワゴンの上に括ったけどね。


 今回も訪問団の荷物はワゴンの上だし、更に後ろからもう一羽、荷運びの為に赤くてでっかいペリカンさんが付いてきている。

 あたし達はトリィとディスティスさんの手荷物以外ほぼ手ぶらだけど。収納魔法万歳だよ!


「皆様も収納魔法をお持ちなのですね」

「異世界人組はだいたい持ってますね、あたしは除外ですが」

 オルスモード殿下が尋ねてきたので、そう答える。トリィとディスティスさんは地元民だからはなっから除外ですね。ふたりに空間属性がないのはチェック済みだ。


「一番魔力の多い方が収納をお持ちでない……?」

 そして、その辺に地元民にしては詳しいらしいオルスモード殿下が首を傾げる。


「ねーちゃんは異世界人だけど、空間属性自体を欠いてる。理由はなんかあるんだろうが、本人にそこまで調べる気がないらしい」

 サーシャちゃんが勝手に補足説明をする。


 今の、念話系ネットワークを仮構築してる状態なら調べられるっぽいんだけど、ないものはないでいいじゃない?で、あたしが調査を断ってるのは事実ですね。


「調べても多分使えるようにはならないから、まあいいかって」

 どっちかというと、うっかり調べられて、機密事項が漏れるほうが怖い。


 多分ね、あたしの空間属性だったものは、〈書庫〉の魔法に食われている、そんな気がしているのよね。

 じゃないと流石に記憶・記録容量の無限に近いでかさが説明できないのだ……


《あー、確かにそうかもしれません。物理容量を転用してなら、この壮大な記録容量は理解できなくもない……》

 シエラからも、明快にではないけど、あたしの疑惑を肯定する言葉。


「お嬢様の荷物はある程度あたくしが収納しておりますから、日常的には全く問題ございませんので……」

 カスミさんがそっと口を挟む。


 カスミさん達舞狐族の収納魔法は、ちょっとだけ時間経過のあるタイプだから、生ものはあまり入れられないけど、そうじゃないものは良く頼んで出し入れして貰っている。

 嵩張る本や着替えとかはだいたいカスミさん預かりだ。


 あとは果物やおやつを入れてくれていることも多い。

 以前貰った分はとっくに食べ切ったから、今は日持ちの利くお菓子しか入れてないらしいけど。


「そうだ、舞狐族も収納魔法をお持ちでしたね。貴方方も由来は異世界、それでなのでしょうかね」

「異世界だから、というより、元の世界に居りました当時から持っていたスキルだったようですわ。あたくしはこちらの生まれで、元の世界は伝聞でしか存じませんけれど」

 そして王子の言葉へのカスミさんの回答がこれだ。


 そういえば、お米やお餅や種籾を収納に入れてこの世界に持って来たのに、全部魔力変換されたって話は聞いたことがあるわね。



 空路の旅は、今回はちょっと距離が長いので、オラルディ国とマッサイト国の国境が近い辺りに入った所で休憩だ。

 テイスパス君もごはん食べないといけないからね。


 余談になるけど、この大人数用ワゴン、トイレ個室が二つ付いている。魔法で排泄物は乾燥してコンパクトに片付けてしまえるからこそ付けられた設備だそうな。


【んまーい!】

【これは滋味】

 テイスパス君にはサーシャちゃんがレンビュールさんに売っぱらった、皮だけ剥いだ魔兎一歩手前《イライラ兎》肉が盛られ、ペリカンさんにはレンビュールさんの在庫からお魚盛り合わせが出た。

 ええ、レンビュールさんも異世界人、当然のように収納魔法を使っています。


 あたし達も、テイスパス君のワイルドなお食事の様子があまり見えない方向にテーブルをセッティングしてお昼御飯だ。

 ペリカンさんの食事風景ははべろんごっくん!なのでむしろ見てて痛快なんだけどねえ。


 今回はサーシャちゃん提供の出来合いの食事が並びます。


「今日は人数多いんでピッツァなー。カット済みだから一ピースずつ取るように!

 おかわりはあるからいっぺんに余分は取らない方がいい!見た目より腹に溜まるぞ」

 サーシャちゃんの解説と共に出されたピッツァに、全員が目をキラキラさせている。

 うん、予想はしていたけど、フラマリア人、異世界由来の食べ物に慣れ切ってる。


「うちの国だと小さい一人用サイズが主流なので、カットされたタイプを食べるのは久しぶりですね」

「あ、あれ屋台だけの傾向じゃないんですね」

 王都アフルミアには、当然ピッツァの屋台もあったけど、掌に載せられる程度の、結構小さいサイズをワンホールで売る店ばかりだったのよね。


「市販品のピザカッターがねえんだよ。うちはアンダルに作らせたからあるけど」

 そしてサーシャちゃんのシンプルな説明。あー、技術的制約がそんなとこにも。


「金属の精密加工道具の生産に世界の制約が掛かっているのがひとつ、小さめサイズを一つ丸ごと、女性でも普通に食べるので、カットするまでもないかな、という市民感情がひとつ、ですかね。

 違う味のものをシェアしたい時には普通の包丁で切っていますよ」

 オルスモード殿下がその辺の事情を教えてくれる。

 そうね、地元の人も結構皆さん健啖家だもんね。特にフラマリアやハルマナートの民は、普通の人でも魔力が高めだし。


 食事のあとはサンファン国の境を越えたところまで進んで、野宿だ。

 流石に王都間を一日で結ぶのは、テイスパス君をもってしても無理らしい。


 まあ野宿といっても、天幕設営はどっちの集団も慣れたものです。

 フラマリア国の王族は、王を含めて、フィールドワークを伴う学術の研究者ばかりなのだそうだ。

 流石に王に即位してしまうと、フィールドワークは余りやれない、そうだけど。


「これは現王家の伝統ですね。はじまりは、祖へのお付き合いだったという者もいます。真偽は祖が語って下さらないので不明ですが」

 訪問団のワゴンの上の大荷物は、野営セットだった。

 ペリカンさんが運んでいる方は、リミナリス妃殿下へのお土産と言う名の各種支援物資だそうだけど。


「トイレは……今回はワゴンのを利用でいいか」

 サーシャちゃんは、サンファン視察団の時に、ランディさんが持っていた簡易トイレ施設を二つほど譲り受けている。

 今回は空輸ワゴンに備え付けがあるから、慌てて出すことはないな、という判定だ。


「あ、例の簡易トイレがあるなら一つ出して置いて頂けると。

 人数的にもう一つ二つあった方が、朝混雑しなくていいんじゃないですかね!」

 レンビュールさんにそう指摘されたので、ワゴンの横にインダストリアルデザインな簡易トイレが二つ並んだ。


「じゃあ出しとくよ。ワゴンのと使い方は一緒だから」

「はーい、ありがとうございます!そうですね、このワゴンも師の師に手を入れて頂いてますからね!」

 なるほど、この大型ワゴンもランディさんと自称勇者様のセットで手掛けたものか。


 夜も朝も、取り立てて何事もなく、だ。

 高度をやや低めにして、王都の手前まで飛んだところで、走鳥の集団が走ってくるのが見えたそうなので、降下して貰う。


 うん、今のこの国の王都エリアは、ほぼ荒野だから、どこにでも降りられるからね。

 王都の周辺で畑に戻せた場所もあるけど、面積としては知れたものだ。手が足りないからね。


「うぉうでっかい……!ってこちらフラマリア国からの訪問団の皆様で宜しいでしょうかー?」

 間近に見た大鷲のサイズにびっくり顔の走鳥騎兵の先頭は、旧傭兵団時代の団長さんから第二軍の副団長を経て、今は近衛連隊のトップをやっているダンジェラーさんね。


「いかにも!わざわざの出迎え、ありがとうございます。割と適当に降ろしてしまいましたが、大丈夫でしたかね?」

 オルスモード殿下が代表して答えて、そういえばこの場所どうだっけ?と首を傾げる。


「ああ、この辺りから王都の門までの区間は、地面を掘り返さなければ特に問題のない空き地なので、大型ワゴンの駐機も問題ないですよ。大鷲さんには退屈な場所かもしれませんが」

 ダンジェラー連隊長が回答しているのを聞くに、どうやら争乱前は町か村があった場所のようね。

 流石にあたしも、争乱前のサンファン国内の町村分布までは記憶にない。


 ただ、この場所だと流石に王都からちょっと遠く、なおかつ王都内には駐機可能な場所がないというので、王都の門の手前まで移動し直して、そこに停めることになった。


 門前に置くなら、門番さんについでに見といてもらえる、のかな?

いや流石に賓客の車両には専属で警備付けますって。

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