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548.夏休みはサンファン国へ。

まさかの:ここに来て脇道に逸れる。

 世間はもう八月だ。つまり、学院も、夏休み。


 そして聖女巡行も、夏休みだ。うん、あちらも後回しにしていた公務が溜まっててね。



「赤ちゃん!見に行きたいです!」

「夏休みになりましたから!」

 ハルマナート国に戻って、王立学院に顔を出した途端に、エルフっ子達に絡まれましたね!

 はっはっは、予想通り!


「ええ、行くわよ。行くけど……ごめん、今日はちょっと休ませて……暑い……」

 でも流石にねえ!もう夏休みだからって、タブリサから直行便乗ったら何故か結構しんどくてねえ?

 ……多分暑さのせい?去年までそんなに暑さが凄いとまでは思ってなかったんだけどなあ。


「あー、確かに、北から帰ってきたせいかもだが、今年この国ちょっと暑いよなあ」

「むしろ早めにサンファン入りしてあっちで涼んだ方が良くない?」

 あたし同様、今年のハルマナート国は暑いとぼやくサーシャちゃん、なんか魅力的な誘惑を口にするカナデ君。


「そうだな、それに、恐らく明日まで待っていると其方、教授勢に捕まるのではないかね?」

 ランディさんにまでそんなダメ押しをされたので、休憩は諦めて即日移動ですよええ。


「オレも行っていい?話に聞いてはいるけど、どのくらい変わったのか知りたい」

 そう言うアスカ君も連れて、みんなで避暑、いえ子供さんたちのお見舞いです。



「おう、なんかまた頭の黒いのが増えて、って……前にどっかで会ったな。確か、アスカとか言ったか?」

 ランディさんに王宮前に転移して貰って、早速門の中に入ったら、珍しく門のすぐそばで遭遇したカル君が、アスカ君を知っていた。あれ?


「あれ。……いやそうだな、確かにあんたはどっかで見た……どこでだっけ。結構前なせいか印象がはっきりしねえな」

 そしてアスカ君の方は相手を特定し損ねている。カル君、鱗失くしてから大分髪質とか変わったし、例の仮面もあるからかなあ。


「まあ嬢ちゃんの連れなら問題ないか。今日はちびっこが一緒だから、双子のほう?」

 カル君の方はそこら辺はさらっと流して、今日のあたし達の予定を確認する。


「ええ、子供たちはそう。あたしは先に妃殿下達の往診かしらね」

 そんな会話をしていたら、後ろの方から物凄い勢いで走鳥さんが走ってきた。

 走鳥って事は、軍の伝令かな?


「伝れええええい!!西部方面から!!エルフ族の集団が!!王都に接近しております!!!なお、およそ徒歩一日で到着致します!」


 ……は?エルフ族?


「え?集団??」

「え?エルフ族がここにも……ってああそうだ!カーラ様のところの、先王陛下と懇意にして頂いていた!

 ちょっとお伺いしますが、お二方は、緑髪ばかりのエルフ族の集団ってご存知ですか?!」

 集団、という単語で首を傾げたうちのエルフっ子達に一瞬驚いた顔をした伝令さんだけど、すぐにうちの子だと思い出して、微妙に謎な質問が飛んできた。


「ばかり、ではなかったと思うんだけど……」

「僕たちの出身の里ではないですね……」

 そして二人の答えは、微妙に歯切れが悪い。まあそうよね、恐らくもう一つの隠れ里絡みの事案なんだろうけど、この子達もサンファン国側に内緒にする約束くらいはしてただろうし。


「……緑髪しかいないエルフ集団?え?琅環氏族、現存してるの?」

 そして、例によって謎な知識を持っているアスカ君が反応した。三百年からここ百年くらい前の期間のどこかでサンファンにいた氏族ってこと、かな?


「琅環……?聞いたことないわ」

「エルフの琅環氏族……?いやそれ二百年くらい前までオラルディにいた氏族で、疫病で壊滅して現存しませんよね……?」

 そしてシェミルちゃんが再度首を傾げ、伝令さんも首を傾げた。というかこの伝令さんも謎知識持ってるな?


「琅環氏族が消えた原因は疫病じゃないぞ。ヒポグリフに集落を襲撃されて離散したんだ。

 襲ったヒポグリフは討伐されたって聞いてるが、奴らが絶滅したわけじゃないっていうんで故地を捨てたと聞いてる」

 そしてカル君がその謎知識を更に訂正する。え、人喰いヒポグリフが襲ったの、エルフ族の村だったんだ?


「あーあーあー!オラルディで、ヘッセンとの国境に近い里が消えてたの、それか!疫病って聞いてた割に建物が派手に打ち壊された状態だったから変だと思ってたんだ」

 そしてアスカ君の台詞は、どうやら現地を訪問したことがあるそれだ。


「まあ氏族がどれかはさておいて、どういう感じで移動してる集団なの?」

 謎の解明に勤しんでいるダンスィ達はほっといて、肝心の集団の情報を確保しましょうねえ!


「地味な衣装で徒歩のエルフ族の集団、男女比は不明ですが子供も連れています。

 人数はおよそ百人前後で、荷駄、家畜と、何故か狼の集団を伴っています。

 ほぼ無表情、無言で真っすぐこの王都を目指しているようですが、地図などを持っている様子はありませんでした」

 そしてさらさらと重要そうな情報を出してくる伝令さん。


「真っすぐここにって事は、何か目標になる、彼らが知っている者がいる、のかしら。先頭は大人のひとだった?」

 そしてシェミルちゃんが何か心当たりがあるのか、そんな質問をする。


「ええ、集団の前半分は大人の男性、中盤に子供と幼児を抱いた親御さんたち、後半に大人の女性、という編成をしていましたね。

 それに続いて鳥類のような家畜が多数、見慣れない外見の恐らく牛と、あとは山羊が十数頭ずつ、それら全てを囲むように狼、です」

〈おう、伝令の届く範囲までやってきたか。彼らは我の招いた客人だ、無理にもてなすまではせんでいいが、失礼のないように頼む〉

 そしてここで答え合わせ。なるほど狼経由でレイクさんが呼び出したのか……でもなぜ?


(なに、春先に狼が里を見つけてな。このご時世でいつまでも里に引き籠っているのも良く無かろうと思って、一度会いたいと言ってみたのだが……まさか老人以外の全てを引き連れて来るとは想定しておらなんだ)

 そして念話で事情説明が届いたけど、それ、老人は保護しに行かないとだめなやつでは……?


(そちらも最低限の面倒は見させている。たまたま別の知り合いが近くにいたのでな)

 むぅ、レイクさんの最低限の基準が判らないな……


「銀狼の旦那の客人か。角が立たないよう非武装の部隊で迎えに行ってくれるのがいいか。届け先は王宮ではなく裏山だな。俺は陛下に事案を奏上してくる」

「はっ!」

 そしてカル君がさっくり指示を出して踵を返し、伝令さんは軍の本部の方に走っていった。


「……人数が多くて幻獣車までは出さないだろうから、お見舞いからでいいわね」

 置いてきぼりのこちらは最初の予定通り、エレンちゃんと妃殿下達のお見舞いからだ。

 現状の技能判定では、彼らに会うのは明日、彼らが王都に接近してからで大丈夫。


「そうね、子供もいるなら、今日中には流石に着かないだろうし」

「こっちの予定を済ませておく方がいいですよね」

 エルフっ子達もそこら辺は理解しているようなので、いつも通りの顔パスで王宮入りだ。


「今日は人数が多いのですね」

「うん、この子見た目に反して大分あたし達より年上でね。最近のこの国を知りたいっていうから連れてきたの。王宮がまずいなら王都を見て回るのでもいいけど」

「いや、出来たら今代の麒麟に会いたいな。先代にはオレが引き籠る前に会ったんだけどさ」

 入り口の衛兵さんと話していたら、アスカ君から想定外の要望が出た。


「あ、そうね。なんならモトハクさん呼び出してもいいわよ」

「うん、そのつもり。爺さん、麒麟の存在、何故か気にしていたし」

「カーラ様がそう仰られるなら大丈夫ですね。ええっと、王宮にはお初の方ですからこちらの通行証をお持ちください」

 そして衛兵さんはあたしの発言を雑に認証して、アスカ君に通行証を出してくれた。


「……気のせいではなく、ねーさんがVIP扱いな件」

「当然です!カーラ様なくして今の我が国はございませんから!」

 アスカ君の言葉に、食い気味に衛兵さんが答えている。まあ事実だからね……


「何やらかしたの」

「立ち話でするには長いから、後でね」

 やらかしたというか、どっぷりがっつり関わったのは間違いないから、あとで話すとだけしておく。


「そういや俺らもそこらへんはあんまり詳しく知らないな、俺らと合流する前の話だから」

 サーシャちゃんがそういえば、と気付かなくていい事に気付く。


「面倒だから夕食後にでも纏めて話すわよ、今はお見舞いから!」

 いつまでも門前でうだうだ話しててもしょうがないので、全員をせっついて移動する。


 とはいえ、これ何処から何処まで話していいんだっけ?

いや赤ちゃん見に来るのは予定通りなんですけども!


琅環氏族、本当は違う字を使う予定が環境依存ッなろうで使えない!というわけで渋々今の文字に。

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