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545.第二回聖女巡行の完了。

なんかすっかり鶴=ギャグ要員に……

 改めて話を聞いたら、女性でも、薄っすらどころじゃなく、がっつりと髭が生える人がたまにいるんだそうだ、この島。

 ドワーフと混血した覚えはねえんだけどなあ!と豪快な口調で語る総族長さんは、ダグマーと名乗った。


 なお、女性の髭は、ドワーフ族もいるこの世界だと、あっても気にはならないものらしい。

 この島の場合、むしろ冬場に暖かそうだと羨ましがられるそうな。寒冷適応なの?


 そのダグマー総族長が捕えてきたドルメッセは、なんていうか、でっかいというより、あたしの身長より長くてニョロニョロした何か。といった感じだった。足もほぼヒレだしね。

 灰白色の皮膚は、生きているともっとピンクっぽい色をしているらしい。


「沖で絞めて血抜きまでしてきたからこんな色だが、これは旨いんだぞ、今が旬だという訳ではないが、それでもだ」

 皮も丁寧に剥いでなめして、今ダグマー総族長が着ている軽装の皮鎧や、船の帆に使ったりするらしい。布資源をほぼ輸入に頼る土地なので、船の帆も革製品なんですよね、この島。


 なお完璧に美味しく食すなら初夏、保存食にするなら秋のおわり、だそうだ。

 保存食にする場合、脂身がしっかりついてないといけないんだって。


「ああ、寒い所だと脂って重要らしいよな」

「お、良く知ってるな。おれもそろそろ脂肪つけねえといけねえから、ドルメッセのソロ狩りは今年の分はこれで打ち止めだなあ」

 なんかここの人達、夏と冬で鍛錬と食事の割合を変えて、体脂肪率を任意に調整してるらしいよ。


 我々は長期滞在するわけではないので、一泊してドルメッセ尽くしの料理を戴いたら翌朝には普通に帰る、はずだ。


【族長よ、それはそうとしてだな】

「ああカーチャン、悪い、この気温だとドルメッセはちゃっちゃと調理したい。お前さんの分もあるから待ってな!」

 カーチャン?霊鶴さん、カーチャン呼ばわりなの?声は雄だよね霊鶴さん?!


【いい加減その呼び名は卒業せいと何度言えば!ってああもう!】

 霊鶴さんに声をかけた総族長さんは、でろんとした、あたしより長いドルメッセを三匹担いで、あっという間に走っていった。


 恐る恐る呼び名の理由を聞いたら、ダグマー総族長は孤児か何かで、何故か霊鶴さんが育てる羽目になった子、だそうだ。


「鶴が子育て……」

【我とて化身くらい持っておるわ】

 呟くワカバちゃんに秒で霊鶴さんのツッコミが入る。

 そうだよね、高位の聖獣様だもんね、化身くらいするよね……言われてみればその通りだわ。


「其方の化身姿など随分見ておらんが」

【それはお主が滅多にこの地に立ち寄らぬせいだろう。まあ我も奴が成人してからは化身姿は使っておらんが……】

 ランディさんがどんなんだったかな、みたいな顔をして、霊鶴さんが嫌そうに羽根をぶわりとさせながら答えている。

 ふむ、夏はやっぱりダウン少なめになるんだな、ゼロにはならないようだけど。


「……あー、もしかして、化身姿の時にシルキーって名乗ってなかった?」

 そして要らん事を知っている系元勇者が心当たりのある顔になったよ!


【な、何故小僧が……ってお主、異界の元勇者ではないか!何故縮んでおる!?】

 サイズ差で気が付いてなかったと白状する霊鶴さん。


「そんな驚くほど縮んではいないと思うんだが……まあ久し振りだねシルキーにーさん。化身姿って相変わらずあの優男タイプ?」

 そして続くアスカ君の台詞で察した。


 この島で人族風で優男タイプだと、顔が良ければうっかり女性に見られかねない、そして聖獣の化身は基本大体顔はいい。なるほど把握。


 ええ、実はダグマー総族長さんは、この島の人族女性の、ほぼ標準体型です。

 もし見るからに細い人が居たら九割九分エルフ族の人だし例外は観光客だよ!


 冬は男性とエルフ族しか見てなかったから気が付かなかったんだけど、今港の外側を往来している人たち、服装の上からでも判るレベルで、子供以外のほぼ全員が、見事な上腕二頭筋とか胸筋が判る方々でして……


 というか衣服の胸元が皆どーんと開いていて、個人差はあるけど、いろんな意味ででっかいのが上半分丸出しなんですよね……


「こんなすごい所だったのですね。以前のお手紙にはなかったような」

「冬は全然人通りないのよ、この島。

 雪かきの時もびっくりするくらい厚着で体型見えないと思っていたしね。

 それに、泊まったお宿を営業してたのは大陸から来た人だったし、もう片方のお宿はエルフさんだったし」

 トリィの疑問に解説を入れておく。

 ……まあ冬の雪かきの時に見た人達が、そこまで厚着じゃなくて自前の筋肉と脂肪がメインだったのは、今回初めて判った事だけど……


「夏とはいえ、そこまで暑くないのにあの露出度なの?」

「日光を浴びられるうちに浴びておかないと骨粗鬆症とかの元になるからな。多分自然の知恵じゃね?」

 ワカバちゃんが目のやり場に困る、とでもいうように視線を彷徨わせ、サーシャちゃんが医学的な側面から解説をしている。


 前回とは別の宿を霊鶴さんに指定されたので、そちらに移動する。


「はいはい、総族長様のお客様ですねーいらっしゃいませ!今総族長様自ら調理されておられますので、晩御飯は期待してくださいねー!」

 このお宿の主は淡色エルフさんだ。冬に最初に泊まったお宿の女将さんは、大陸からお嫁に来た人だったらしくて、普通の体型の人族だったんだよね……


 あとで聞いたんだけど、地元の人族が女将さんをやると威圧感がありすぎるので、あの宿の御主人だけは、必ず大陸からお嫁さんを迎えるのが家訓なんだそうだ。

 そうまでしても、遅くても三世代目くらいにはこの島らしい体格になってしまうそうだから、環境要因、極端なんだなこの島……



 ドルメッセ料理は、基本的に豪快を旨とする、らしい。


 うん、一本丸ごと開きで焼かれてくるのは想定外だった。

 ドルメッセの姿焼き専用の皿があるってどんだけ?


 それ以外にもぶつ切りにした肉と根菜のミルク煮とか、モツのトマトペースト煮とか、脂の中でじっくり加熱したオイル煮のようなものとか、うん、煮物が多いな!


「揚げてあるのとはまた違うんだね」

 オイル煮をつつきながら、カナデ君が首を傾げている。


「どっちかというと製法としては魚で言うツナ缶が近いかな?うん、こいつ、脂がうめえな?」

「これでペミカンを作ると美味しそうね」

 サーシャちゃんが類例をあげ、ワカバちゃんがアウトドア愛好家みたいなことを言っている。


 確かにこのドルメッセという生き物、脂が美味しい。甘みがしっかりあって、そこに不思議な爽やかさのある香りもあるのよね。

 お肉も柔らかめで美味しいのだけど、脂があってナンボという感が否めない。


 豪快料理と言いつつ、でっかい焼き物も焦げ過ぎず、そのくせ生焼けの部分は一切なく、綺麗に食べつくせる見事な調理っぷりでした。腕良いなあ総族長様。


 そして翌朝、帰りの船を港から出したところでケートスさんと再会です。

 ケートスさん、でっかくて港には入れないからね、しょうがないね。


【ふむふむ。今代の聖女殿は良い友人をお持ちだね】

 そこ来るか―。いやケートスさんには前にも一回お会いしてるから、知己と言えなくはないんだけども。

 ただあの時は、会話してたのはランディさんとだけだった、そんな印象だ。


【イスカンダルは我が古き友でのう。あれを救ってくれた上に、聖獣種族どころか、亜竜に引き上げてしもうたとは、いやはや、小さき人の娘も、やりおるのう】

 ご機嫌で鼻歌でも歌いそうな調子で、ケートスさんがそう述べる。

 そういえば、以前の歌のお礼もまだだったな。


【礼など要らぬ。あれは、必要であったから歌ったまでよ】

「ああ、あの旋律は本当に、陸で聞いていても素晴らしいものでしたわ……」

 あたしの思考を読み取ったようなケートスさんの言葉に、トリィが反応する。

 そういやヘッセンの神殿にまで聞こえたし、当時もすっごく感動したって手紙、くれたものね。


【ヒトには退屈なものであろう?我の力は地上には届かぬしのう】

「いいえ、浄化の御力こそ届きませんでしたが、かの歌声に心が安らぐという者が沢山おりましたわ。わたくしの周囲では、退屈という声は聞いておりません」

 ケートスさんの言葉を、強めに否定するトリィの言葉は、当時の手紙の通りだ。

 まあ聖女も嘘は付けない縛り、巫女程強くないけど持っているからね。


 その答えにまんざらでもなさそうな雰囲気になったケートスさんとは、名残惜しいけど今回はお別れだ。

 そう、そろそろ大陸に戻らないと、あたしだけサンファンにすっ飛ばされる!

 契約違反ダメ絶対。


 いや、実の所、違約金は困らないけど、トリィはちゃんと責任もってヘッセン国まで送らないとあたしの心情的にだめなのよ!


 幸い帰り道にも、全くノートラブルで、フラマリア沖から北上するルートでヘッセン国には無事到着した。


 次の相談をする前にサンファン国にすっ飛ばされたけどね!!仕様!!

難民案件で大分尺がヤバイ(こら

夏は機動力の為に脂肪は少なめ、冬は保温の為に脂肪多め……らしい……

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