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488.婚約と結婚と誓いの言葉。

一気にそこまで飛ぶの?いやいやまさかそんな。

 さて、今日の用事は野営地到着でだいたい終了したので、まずはタイセイ君も連れて、全員でヘッセン国大神殿に戻る。


「ではまた近日中……は難しいかもしれませんが、出来るだけ早いうちに」

 リミナリス殿下も流石に今日は自国にご帰還だ。挨拶を残して、ランディさんの転移で消えていく。


「お疲れさまでした。じゃあこの後は正式な婚約に関する決定を……裁可は王太子殿下でいいのかしら?」

 滅多にないであろう長時間騎乗をこなしつつ、リミナリス殿下共々、無事に当面の最適解まで持ち込んだアデライード様をねぎらいつつ、首を傾げる。

 そういや今この国の諸々の裁可って誰が出してるんだ?王太子殿下はまだ未成年だよね?


「おかえりなさい。もうそこまで話が進んだのですか!素晴らしい成果ですね……

 裁可に関しては宰相立ち合いのもと王太子殿下が行う事になっておりますよ」

 聖女様や神官長様共々、待ち構えていたらしいマリーアンジュさんがそう教えてくれる。


「リミナリス殿下が結構焦ってらっしゃった事もあって、割と食い気味に話が進んだ感がありますね。一般論で考えるとしょうがないところもありますし、あちら的にも早めに話が進むほうが都合が良いそうだったので、利害が完全一致したということです」

 とっくに完全に外堀が埋まってる状態だったんだから、はなっから時間の問題ではあったんだろうけど。


「取りあえず、わたくしは王太子殿下が成人するまでは代行の仕事がありますから、先にリミナリス殿下が冬の間に嫁がれて、その後、うちの殿下の戴冠式を待ってからわたくしが行くことになりそうです。

 ただ、輿入れは後先になるものの、あくまでも王妃並立であり、リミナリス様との序列は付けない事で合意しておりますわ」

 そう、流石に同時結婚式って訳にはいかなかったのよね。これは純粋にヘッセン国側の都合だから、仕方ないのだけど。


 ただ、実質の結婚式はそうなんだけど、対外的なお披露目に関しては、お二方が正式に妃殿下となってから、一緒に披露宴を行う予定だ。そうしないと、妃の序列問題があると見なされかねない、という、これは政治的な事情の為ね。


 なので、現状のスケジュール概案は、冬にリミナリス殿下、来年の夏にアデライード様が輿入れし、秋に披露宴を開くという感じなんだけど……


 ……恐らく、披露宴は更に後ろ倒しになるはずだ。喪中という概念はこの世界にもあるので。

 特に父母のそれは、一年を静かに過ごし、各種祭典には不参加を通す、という割合長期間に至るものだからね。亡くなったのが祖父母や子供の場合だと半年くらいだというけれど。


 ただ、現状の国力が疲弊のどん底にあるサンファン国の場合、多少遅れるほうが都合がいい側面もないではない。そこらへんは、どちらがいいとも言えないのが現状ね。


「そういえば、国神が居られない国での結婚式って、何に誓うのでしょう……」

 同席していた聖女様から、素朴な、そしてこの世界の民としては根本的な疑問が飛ぶ。


「ハルマナート国では天地、というか世界の全てに誓いますね」

 実例を知っているから、ここは即答だ。サクシュカさんは要素を分解して述べていたけど、あの祝詞の後半は、ありていに言えば世界の全て、ということだ。


「まあ!それは素敵ですね。世界の全てに愛を誓うなんて」

 聖女様はそういうタイプの恋愛小説、お好きだものね。案の定軽く頬を染めるなどしている。


「成程……参考にさせていただくべきですね」

 アデライード様の方は、真面目な顔で検討を開始している。恐らくあとでリミナリス殿下にも、手紙でこの件は共有するのだろう。


「どちらかというと、あの国に今現役の神官がいない方が問題かもしれません。王都で生き残ったお三方をはじめとして、生き残りの神殿勢も組織としては解散してしまって、既に全員還俗して、それぞれ違う職に就いておられますから」

 流石にエレンディアちゃんが巫女だからって、妊婦さんに代役をさせるわけにはいくまい。

 リミナリス殿下の輿入れ希望時期は、一番日数の少ないこの世界式でも、絶対まだ生まれてない頃合いだもの。


「そこは其方がやればよかろう。どっぷり関係者なのだし」

 話の途中で戻ってきたランディさんが速攻でそう突っ込む。あーはいはいはい……ですよねー。あたしが最適任ですよねー……知ってた。


「有資格者じゃないんですが、ってそうか、国神がいない以上、資格の有無は関係ないんだ」

 神殿組織自体が完全に解散してるから、咎められる立場の人間がそもそもいないんだわ、あの国。まあだからこそ、あたしにお鉢が回ってくるんだけども。


「そういう事になりますな。カーラ様なら誰も文句は言わんでしょうし」

 神官長様までそんな後押しをしてくる。そっかなー?いや、サンファン国内でなら確かにそうかも。


 サンファン国に関しては、今主に支援しているハルマナート国とフラマリア国にお任せ、というのが一般的な他国の反応だ。

 むしろ今回ヘッセン国が、昔の縁談を蒸し返して王女を送ると決めた方に驚かれる可能性があるレベルなんだよね。

 実際には選択肢が他にない状態だから、それに気付いている国ならなるほどな、って思って終わりの可能性が高いけど。


 王族は、多すぎても国家の予算を圧迫するけど、少なすぎると天災、人災などで一気に人数が減った時に、慌てるでは済まされない事態になる。

 サンファン国は皮肉にも、多すぎから一気に少なすぎに転じた事で、他国にも強い警告を与えたらしい。


 オラルディ国、それに実は現在のヘッセン国も、現状新たな直系王族が少ないので、要注意扱いなんですよね。

 一方で、レガリアーナ国の方は、レッゲスト家が分家も入れると相当人数が多い家系なので、そこまで困ることはないだろう、というのが現状の見方ね。


 その結果、最近ではマッサイト国への視察が流行っているという。

 あの国、昔から少ない王族貴族で頑張って国を回しているって有名だからね。

 でも実はあの国、少ないと言いつつ最低条件どころか、最高条件を上振れクリアした人材がきっちり揃ってるから、見ただけではあまり参考にならない罠があったりする。


 ただ、去年あった違法薬物の流通とか、禁猟区指定の不正とか、人手不足に起因する細かい犯罪の発生率とかの方を参考にすべきだろうな、というのがあたしの所感だ。


「ところでアデライード殿下は、本日は王宮にお戻りになられますかの?」

 神官長様が、話の切れ目にふと思い出した、というようにそんな、そう、どことなくわざとらしい台詞を述べる。ん?なんだ?トラブルの予感がしたな?


「そうですね、少し不在が続きましたから、そろそろ戻るべき頃合いかと。少し気は重いのですが」

 そして不思議な答えを返すアデライード様。あ、これ何か織り込み済みの奴ですね?


「ふむ、では丁度良い機会ですから、カーラ様にちとご依頼をさせて頂きましょうかの」

 そして、神官長様は、あたしに向かって謎の依頼発言をした。

 まあ内容が現在不明だけど、ここまでの技能判定的に、受けないという選択肢はない奴だ。


「詳細はわけあって今は語れませんのですが、まずはアデライード殿下の本日の護衛をお願いしたいのですよ。ちと面倒な輩がおりましてな」

 ……つまり、神殿内での情報をある程度抜ける立場の人間、もしくはそういう人間に強い繋ぎを持っている輩に……ちと面倒、レベルだから、生命に危険はないタイプ。だけど名誉的にヤバいとかそっち系?


「カスミさんとマルジンさんは同道するけどいいかしら?」

「聖獣様ですか……警戒されましょうなあ」

 つまり、アデライード様を囮にしようって魂胆ですか。神官長様、意外と黒いとこあるなあ。


【見えなんだらよかろうよ】

 マルジンさんがぼそっと呟き、カスミさんがにっこりしたので、どうもそういう事になるらしい。二人とも隠蔽得意だもんなあ、あたしには通じないってだけで。


「んじゃ俺も付き合うか。白いにーちゃんは目立つから待機だろうし」

 そしてサーシャちゃんも気楽な様子で参加を希望する。

 確かにサーシャちゃんはこの世界でも子供にしか見えないからなあ、たまに男子と間違われる事はあるけど、この世界の初等学校を出ている歳には見えないからね。


 さて、何が出ますかね?

なんかもうこの時点でバレバレな気もしている。

というか組み合わせが謎過ぎてサーシャが混ざっても普通に警戒されるのでは?

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