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462.カニカマ試食会。

最早サブタイでカニカマ呼ばわり。

 取り合えず一頭ぶんのカニカマ、いや完熟バロメッツの試食会をすることになった。


 キッチンを借りる都合上、シャカール族の皆さんや、リハ施設の職員さん達にも振舞うので、取りあえずトッピング扱いでいいか、と、サーシャちゃんが野菜と海藻のサラダの上にほぐしたカニカマをかけるパターンで制作していた。あとわかめときゅうりとカニカマの酢の物。ド定番ですねえ。


「うわあ、まごうかたなきカニカマだわこれ、しかも高級な方の」

 カニカマを口にしたワカバちゃんの感想にあたしも頷くしかない。蟹より身が均一にしっかりしつつもなめらかで、香りがそこまで強くないのが決定打なんだろうけども、まじで高級カニカマの味がする。


「そういえばホンハイだったかレメレだったかにもカニカマっぽい練り製品あったよね」

 以前どこかで似たものを食べたなあ、と思って聞いてみる。


「ああ、ホンハイにあったけど、あれは技術的制約でか、手作業で刻んだ製品だからな、ここまでカニカマらしくはなかったと思う……これだな」

 サーシャちゃんの即答。そしてひょい、とどこからともなくテーブルに載せられる、細く刻まれた、端っこだけちょっと赤みを付けた、白い練り物。ほぐし身イメージかな?

 うん、確かにちょっと見た目からして別物っぽいね。摘んでみたら、これもこれで美味しかったっていうか、こっち本物のカニの香りがしません?


「ああ、それは東海側でも穫れる、小型の蟹の出汁と身を使っているから、やや本物よりの味だな、材料の七割ほどが魚のすり身だよ」

 ランディさんから解説が入った。そうか、あれだけ異世界人仕込みの魚肉製品あれこれあったら、そりゃ当然そういうものも出来るよね。東海は大型の蟹の漁場が実質ないそうだし……


 シャカール族の皆さんにも、この実質カニカマは大好評だった。

 彼ら、食感が不思議なものを好む傾向があって、コッテションの煮物とか、かまぼこ類とかがちょいちょいリクエストされるのよね、介護組に。患者組の皆もやっと通常食に戻せた所に面白い食感シリーズが来たので、大多数がハマっている気配がする。

 あ、そうだ。今度こんにゃく食べてみて貰おうかな、確かサーシャちゃんがマッサイトで買ってたはず。


「いや、大陸の食べ物、面白いですねえ」

 最近よく言われるのがこれだからね。普通の魚はランディさんやセレンさんが時折差し入れていたそうだけど、流石に加工食品までは持って行った事がないからなあ、という話をランディさんから聞いた。


 なら加工食品じゃないバロメッツの肉なら配っても問題ないのだな?という事になったので、もう数頭、配送中のアルルーナルートワークから出して貰って完熟させたものを、真龍の島の皆さんにも振舞うことになった。

 数が多めなのは、褐色エルフの皆さんにも食べてもらうから、というのもあるし、流石に現状だと配下バロメッツが多すぎて、りこぽん君のリーダーとしての成長が少し遅れているから、ちょっと間引きたい、というのもあってですね。

 本当ならバロメッツリーダー、もっと流暢な念話を操れるらしいんだよね。異常な高魔力下にいたせいで、配下が過剰生成され過ぎていて、そっちに魔力や栄養を振り分け過ぎた状態らしいのよね。


 そんな訳で、今回はカナデ君が留守番となり、ランディさんとサーシャちゃん、あたしとワカバちゃんとカスミさん、執事モードマルジンさんという面子が、一人二頭ずつ完熟バロメッツを抱えて転移して貰う。


「まあ、バロメッツ、ですか?お話には聞いたことがありますが、実物は初めて見ますわ」

 ワカバちゃんとサーシャちゃん、それに手が足りないのでマルジンさんには褐色エルフの村の方に行ってもらって、他のメンバーでシャカール族の元へ。

 族長のシェラザードさんには当然びっくりされたけど、この島には野生のバロメッツはいないんだね?


「そういえば島の北端にしかバロメッツはおらぬなあ、其方等は見た事がないであろうな」

 あ、いない訳でもなかった。生息域が遠いだけか。


 ランディさんが加工と調理をしている間に、大陸側の病人さん達の回復状況をお知らせする。


「あとは体力回復支援で、一般的な普通の生活をできる程度に回復できれば、こちらに戻すこと自体は可能だと思うんですけど……」

 ここにきて、ちょっと問題が、というか……若年層の患者さん達や介護勢がすっかりあちらの生活を気に入ってしまって、これだけ普通に扱って貰えるなら、こっちに住みたい、って自分達から言い出しちゃったのよねえ。

 ご年配の人達は帰りたいなって話なんだけど。


 なお例のトラップは、実はまだ稼働状態だ。世界そのものが噛んでいるから、長老の一存では解除できないと言われた。確かにそれはそう。

 あたし達も、元々トラップそのものには手を出さない予定だったしね。


 なので、患者さん組の過半数はこの島には現状では戻せないのも、残念ながら決定事項だったりする。長老が相殺に使ってた分は暫く浮くけど、それでも確定で、いつかは再発しちゃうからね……


 おまけに現状だと再発までのスパンが判らない。

 実は光属性が中に落ちちゃった人が数人いて、その人達はもう戻しても大丈夫なんだけども。

 というのも、おじいちゃんによれば、光大以上じゃないと反応しないんだって、あれ。


「差別や危険は本当にないのですね?」

 戻せる人とそうでない人がいる、までの、全ての話を聞いたシェラザードさんがそう念を押すので、少なくともハルマナート国においては、魔物絡み以外に危険はないだろう、という話はしておく。

 これは隣のフラマリア国でも同じではあるのだけど、そもそもの問題として、国神のいる国を現状では選択肢に選べないっぽいという話もあったので、現状ではハルマナート国だけが移転候補地なのよね。


 そういや国神のいる所だとなんでだめなんだろ?そこを、あたし自身が説明されてないな?


《そういえばそうですね、確認してみましょうか……えー?禁則事項?どうして?》

 問い合わせようとしたシエラから困惑の声。どうも世界の成り立ちに関わるレベルの何かがあって、あたしたちクラスにも公開できないっぽいな?今までの話の流れ的に、真龍達はある程度知ってるっぽいんだけども。


《そうらしいです。というか何やらズボラ以外の皆様と真龍の方々との間に何やら協定があるのだそうで、そちらに抵触するのだそうです。真龍の方側から明かされるまでは知ってはならぬ、ということのようですけれど》

 つまり真龍側が何らかの主導権を持っている案件があって、それがこの真龍の島の住人関連でもある、っぽいな。

 じゃあこの件は一旦真相は棚上げでいいわ。無理に探る必要もないでしょう。


「移転を視野に入れるにしても、急激な環境変化は心身に影響を及ぼすこともあろう。当面は希望者だけで大陸の今の世界を観光して来る程度でよかろうよ」

 ランディさんはそう述べる。確かに観光から始めるのはアリよりのあり、ね。


「そういう事ですと……一度私も実地を確認しないといけませんね……ここまで伝聞だけで、大陸の実態を見たこともないのに判断はできません」

 シェラザードさんがやや不本意といった顔でそう述べる。もしかして:出不精?


(そういえば、聞いた話だが、此度の族長はエルフ村に出向いたりもしていない、らしいな。副族長がよく出かけるのでバランスは取れておるようだが)

 ランディさんから念話で解説が入る。

 やっぱりかー、引き籠りの才能があるタイプが地味に仕事の多いトップ職に就いて余計出不精が加速する奴だな……!


「あらあら、族長ちゃんやっとおでかけする気になりました?村に引き籠りは上に立つ者としてよくありませんからね、是非行ってらっしゃい、なんなら妾が送迎してもよろしいのよ?」

 そこに都合よく現れたセレンさんまでダメ押しの一言。


「うっ、あっ、はい……いえ、送迎は白の方にお任せで大丈夫、です……」

 シェラザードさんがしどろもどろになってそう回答したので、彼女を筆頭参加者とした観光ツアー挙行が決定しました!


 とはいえ、いきなり王都は刺激が強そうだし、まずはお見舞い経由で開拓村方面の方がいいかなあ?いや、それよりも食べ歩き系の方がいいかしら?


 なおバロメッツのカニカマは、今回はほうれん草と合わせた和え物でお出しされて、これまた大好評を博した。

 これ、繊維質を纏めてちょっとした塊というか、棒状に取ることもできるみたいだから、今度フライにして貰おうかな、絶対美味しいよね。

カニカマフライ好きなんです、作者が。

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