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440.いつメンと合流する。

やっと集合したよ!

 翌朝、夜明けと同時にランディさんが、皆を連れて戻ってきた。三人組とカスミさんとマルジンさんですね。アンダル氏は多分今回も留守番で、サクシュカさんは流石にいない。あの人忙しいしねー。


「お嬢様ご無事ですか!!ああっ内出血などあるじゃございませんか、カナデ様、治療をお願いいたします!」

 カスミさんが二言目に半袖の下にできた青タンを見つけてしまって悲鳴を上げる。慌てすぎてちょっと口調がおかしくなってないですかね……?


「え、一晩ほったらかしてたのそれ。僕の初級だと怪しいからうさぎ君呼んで」

 そしてカナデ君は一目であたしの状態を識別してお手上げポーズ。


「あー、いろいろあったからすっかり忘れてたわ……〈召喚:二角兎ジャッキー〉」

 うん、内出血起こしてること自体頭からすっぽ抜けてた。こういうの、出来た時は痛いけど、その後は触らなければ痛く感じる事はあまりないし、痛みと言っても大したことないから、結構忘れちゃうのよね。


【おうマスター、無事だったかー!治すのは……なんで昨日のうちに呼ばないの!シル君呼んだ時におれも思い出してよ!】

 そして呼び出したジャッキーには、だん!と後足で床を派手に叩く仕草と一緒に、速攻で叱られました。いやマジで済まぬ。


「ごめん、出来た時以外はそこまで痛くもなかったんですっかり忘れてたのよ」

 そしてあたしが謝ると同時にくるりと描かれる聖獣式の魔法陣。後ろでモリアンさんがほー、と感心の声を上げる。


「聖獣式の治癒魔法って初めて拝見しました、綺麗な魔法陣ですねえ」

 そうでしょうそうでしょう!ジャッキーの使う魔法陣はほんと綺麗なのよね。


【おれはこんな風に描くけど、種族でもちょっと変わるよ。おれの先生のはもう少し模様が大きいんだ】

 発話もすっかり流暢になったジャッキーが解説してくれる。へえ、種族差があるんだ。麒麟くんはジャッキーのを見て学んだからか、彼と同じ魔法陣を使っていたけども。

 ジャッキーの先生はカラドリウスのサリム先生だけど、そういや彼の治癒魔法はまだ見たことないな、あたし。


【ムルラッハ!!!!!!!!!!!!!!!!ケガさせてるじゃないですか!!!!!】

 遥か上空の方で、本体モードのセレンさんの雄たけびが聞こえる。あー、お気付きでなかった。音声が急激に遠ざかっていったから、恐らくマーレ氏の住んでいる丸い島の方に飛んで行ったんだろう。


「……奴に任せておくか……」

 極めて不本意、という顔でランディさんが呟く。自分でどつきに行きたかった、という感情が漏れて来る。いや多分セレンさんにやってもらう方が効果的だと思います。根拠はあんまないけど。


【いやはや、不覚でございました。敵対していないものなら大丈夫、などと思ってはいけませんな……】

 マルジンさんが、治療が終わったあたしの右肩にくっつきながら、執事モードの口調のままで耳をぺしゃんと下げて凹んでいる。


「ううん、むしろ一緒じゃなくて良かったわ。薄いとはいえ蜘蛛絹二枚重ねの上から内出血ですもの、マルジンさんやシルマック君が何時もの場所にいたら最悪骨の一本二本じゃ済まなかったかも」

 位置的に多分マルジンさんが今の場所にくっついていたら、恐らく翼だけじゃなく、下半身のどこかの骨をやられる。場合によっては内臓に損傷の行くあたりをだ。なので、あの時はあの状態が正解だったと思うのよ。

 あたしは魔法で彼を癒すことはできるけど、握られた状態のままだときちんと癒せないだろうから、手遅れになる可能性は充分すぎるほどあったから、ね。


「……サクシュカリアさんが事あるごとにやたらいい服をくださるのって、そういう理由もあるのかしら……」

 隣で、漂着時の顔見知りであるモリアンリージェさんと挨拶していたワカバちゃんがそう呟いて首を傾げる。実際問題、サクシュカさんが調達してくるあたしたち異世界人向けの衣装、特に希望がないと百パーセント蜘蛛絹になるからね。

 例外は現状では成長途中だからあまりいいものは、って遠慮してるカナデ君くらいだけど、彼もあまりに成長がゆっくりなので、数枚の蜘蛛絹の肌着を既に持たされている。


「あれは過剰在庫の処分も兼ねてるけど、基本的にはその考え方でいいんじゃないかな。洗濯も他の素材より明らかに楽だから、生活上も楽になるよね」

 お洗濯をする人にとっては、マジで夢の素材といっていいからね、蜘蛛絹。どの布素材よりも丈夫だし、手触りはいいし、水吸いも木綿には負けるけど結構いいし、そのくせ汚れは頑として吸わないし。お値段に目を瞑れば結構高性能な石鹸と、ある程度の自然系漂白剤はあるけど合成洗剤は当然ないから、重要ポイントなのよね、お洗濯の楽さって。

 ……それを余裕でぶち破いてダメにする龍の王族幼少期ェ……


「で、ねーちゃんは此処の問題を解決するつもりではあるのか?」

 サーシャちゃんが周囲を見回していたかと思ったら、そんな風に懐疑的な口調であたしに質問してくる。まあ実質誘拐からの協力ってあんましたくない気持ちはわかる。


「申し訳ないけど、微妙なところではあるわね。一応謝罪は受けたけど」

 そもそも、あたしの技能のどれかが、今のあたしの能力では、これは解決できない、という予感を齎している。それ以上の事は実際に病人を観ないと判らないんだけども。


「そもそも小娘に検知できるタイプの異変であるなら、治癒師の出番ではあるまい?」

 ランディさんもあたしの認識に近い発言をする。そうなのよね、今サーシャちゃんは、説明されているはずがないのに、この場所に異変があることを察知してしまった。

 ……少なくとも、この集落では『治癒魔法ではどうにもならない問題』が発生している。


「ええ、多分。ただ、治癒師は現在の本業ではありますが、あたしの場合はそれだけでもないですしね」

 この集落には特に名がないという。人族のシャカール族と、褐色エルフ族の集落の二つしか集落がないので、人の村、エルフの村、だけで話が通じてしまうからだそうだ。

 そして褐色エルフ族の集落には、これといって問題は発生していないという。派遣されてきているお手伝いの人員も、二日に一回入れ替えしているけど、現状何も異変はない、らしい。


「あ、でも昨日交替の時にフリッセが変な事言ってたな。何かどこか判らないけど、時々歪んでるって」

 あたし達の会話を聞きつけた褐色エルフ族のおじさんがそんな事を言い出した。なるほど、丁度昨日交替したところなのね、この人たち。


「フリッセが?ってことはやっぱり治癒師じゃなくてまじない師案件なの?」

 モリアンリージェさんが眉を寄せる。聞いてみたらフリッセさんと呼ばれている人は、所謂巫覡系の技能持ちであるらしい。へえ、エルフ族には巫覡系って召喚師以上にレアで、基本的には出ないレベルって聞いてるのに。


「大陸にまだ居た頃、我々が生き延びるために、イメージ戦略と称して狭間の術を学んだものが過去に何人かおりましてね……その種の才を持っているのは今はフリッセ……フリシスセージュだけなのですけど」

 まあ結果としては成功とも失敗ともいえなかったのですが、と付け加えるモリアンリージェさん。

 確かに呪術系の術式を色黒種族が覚えるのってイメージ戦略的には危うい気がする。

 でも実際にはその狭間の術のいくつかのお陰で、褐色エルフ族は分断こそされたけど、生き残れたのだというから、結果としては落ち着くべき所に落ち着いた感はあるわね。


「……フリッセさんが検知したなら、それは少なくとも空間の歪みじゃないですね。彼女にそういうのが判らないのは、私が知ってます」

 ワカバちゃんがそう口を挟む。なんでも褐色エルフ族には空間属性持ちが全くいないらしい。ワカバちゃん達は、他はともかく、空間属性持ちなら、なんとなくそれが判るという特性を、ネットワークで繋がっている全員が持っているんだって。恐らく収納魔法の強力さに引っ張られてそうなってるんじゃないかとサーシャちゃんが解説してくれたことがあるよ。


「空間の歪みではないなら、外来の何か、の可能性はまずないわね……」

 取りあえず原因の可能性から一つ、排除だ。これは技能が判定しているから、そうそうミスはしないはずだけど……


 そういやシエラ、押し込められてからこっち、全然出てこないんだけど大丈夫なのかしら?

 真龍はこの世界の神絡みの仕込みや干渉を見破り、場合によっては排除できるといっても、シエラの事はランディさんが多分気が付いていないレベルの事案だし……いや、でもシエラ自身は真龍による干渉って断定していたな?マーレ氏が一切言及してないせいで、何したか実際には喰らったあたし側もよく判っていない不具合。

 

 うーん、どうなってんだこれ……?

シエラさん不在は合流してから初の事態ですね?

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