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45.ヘッセン国の基本情報。

世界観がふわっとしているのでこういう話は書きにくい……

 サクシュカさんのご機嫌、ただいま急降下中。


 いや正直、ヘッセン行きが決まってからずっと、サクシュカさんの機嫌はあんまりよくなかったのだけども。


 結局、非公式会談は男性が部屋に入った事自体を理由にして、向こうから途中で切り上げられました。


 というかあたしの感想としては、あの王妃様、完全に自覚なしにやらかすタイプだった。あれはいけません。


 そういうわけで、一旦王宮からは退去して、王城の中にある離宮の一つに落ち着いているあたしたち一行です。カルホウンさんも合流したよ。


 あたしたちは今回使用人の人とか侍女さんとか連れてきていないけど、身の回りの世話の人員は要らないと、王宮付きの使用人さんを全員追い出すサクシュカさん。


 ……我々全員、所謂この世界での軍隊メシ系しか作れませんが、ごはん大丈夫ですかね?

 いや、食えないものを作る人はいない、大丈夫、多分。



「そもそもあの人第二妃なのよ。今回の件、かなり相当思いっきりナメられきってるわ」

 遮音結界を構築したとたんに、ムッとした顔のままそうぼやくサクシュカさん。


 あれ、資料には王妃が二人いるとは書いてあったけど、格の違いとかは特に書かれてなかったような?

 あたしが不思議そうな顔をしたのに気が付いたサクシュカさんの顔がちょっとだけ和らぐ。


「ああごめんね、カーラちゃんに渡した資料は、時間がなくて、基本的に対外的に公表していることしか書いてないやつだったから」

 そう言うと、サクシュカさんが細かい事情を説明してくれた。


 この国の実質の正妃は第一妃のエメルディア様。レガリアーナ国の公爵家出身で、攻撃魔法の名手だそう。


 さっき会ったイーライア様はオラルディ王族の出だけれど、妾腹で身分は微妙といえば微妙。魔法はお得意ではないそうな。


 子供はエメルディア様に王女がひとり、その下に王子がひとり。

 イーライア様には暫定王太子の王子と、その上と下に王女が二人。

 で、王太子と姉王女は、双子。


 基本長男が王を継ぐしきたりなので、第二王子より数日ほど早く生まれたイーライア様の子が王太子なのだという。


 王自身は妾も置かず、二人の王妃を均等に寵愛しているのだそうだけど、女同士はそうはいかない、というところだろうか。あと出身国の面子とか?


 うーん、テンプレ的には嫌な予感しかしませんよね!


《でも現王太子のカムラス様は魔力も父親似で豊富ですし、そもそもそんなに悪い評判は私の知る限りありませんよ。

 第二王女は癇癪持ちの問題児で、年齢一桁の頃から、メリサイト国でも小貴族の子の私が知っているレベルですっかり有名ですけど》

 ここでシエラからも情報が。


 わあ、まさかのアリエノール様のほうが、悪い意味で有名人。

 いや、誰にでもあれなら、有名にもなるわね?あのカルセスト王子が嫌がるレベルでやらかしてるわけだし。


《ただ、第二王子のセンティノス様のほうが優秀だという噂自体はありますね。少なくとも魔法の実力では第二王子の方が上だと。

 とはいえ、魔法の力そのもので国を治める訳ではないので、その辺りはあまり問題にはなっていませんわ。

 有事を考えて魔力の高い人のほうが優遇される傾向はあるにしても、カムラス様でも魔力量自体は充分だと言いますし》

 なお王太子十五歳、アリエノール様はその双子の姉、第二王子も十五歳。第一王女は十七歳でシエラと同年、一番下は十二歳だそうだ。


「しかし王太子の使いとかいう男、近衛にしちゃ随分胡散臭かったわね。あれ態と邪魔しに来たわよね」

 サクシュカさんが微妙に話題をずらす。


 そうねえ、胡散臭いというか、あの人の登場タイミングは、見事に第二妃の出鼻をくじいた感じだった。そう思って頷くあたし。


「ゲンティウスという男かい?あれは最近になって王太子の護衛に上がった者だそうだよ。

 王太子本人がいやに気に入っているのだそうだが、当のゲンティウス本人は退屈な護衛任務は嫌だから辞めたいなどとほざいているそうだ」

 カルホウンさんが、呆れた様子でどこかから聞いてきた情報をくれる。


「ああ、確かになんだか荒事が好きそうな感じはしましたね」

 身体を動かしたくて軍人になったタイプかな、くらいにしか感じなかったから、悪い人じゃあなさそうなんだけど。


 さっき現れた時も、王太子の命だからやむなく従いました感を、結構あからさまに出してたしなあ。


「だとしたら、邪魔したかったのだとしたら、王太子殿下のほうじゃないかしら。あの人最初からあの場に出てはまずいのは知ってる口ぶりでしたよね」

 だから、王太子の命だと明確にしたうえで、自分の退去を遠回しに提案していたように思う。


 ただ、現状の情報だと、王太子がそうする理由が見当たらないわよね。

 そもそもこの国には足を踏み入れたばかりで、何かを判断できるほどの情報がないから、断定しては、いけない。


「そう言われてみるとそうね。むかっ腹立ってたからそこまで意識して聞いてなかったけど」

 サクシュカさんはちょっと落ち着いたような顔。


「まあまだ来たばかりで、全然状況も判っていませんから、現状だけ把握して明日以降に備えましょう?」

 ひとつ言えるのは、辞めても本人としては困らないだろうから、あの人はあの役目を引き受けたんじゃないかな、ってことくらいか。


 正直、イーライア王妃には、なんだか値踏みされてるような、嫌な視線を感じたりして、全くいい印象がないんだけど、ゲンティウスという人には、そもそもそういった良い悪いといった印象が、ない。


 あくまでも、彼は命じられた仕事をしただけ、そう感じるのよねえ。



 とか昼間にあった事を話しあっていたら、控えめにノックの音がした。


「あら、人払いしたはずなんだけど」

 サクシュカさんが眉を寄せて様子を見に行き、扉を細く開く。


「ご歓談中申し訳ございません。実は、王太子殿下が、御一行様にお会いしたいと、そこまでいらしておりまして」

 結界に阻まれてあたしたちの音声は聞こえないはずだけど、万一の来客があるかも、と取次役としてひとり無理やり残っていた侍女さんは、そんなふうに口上を述べる。


 まあ身内話の為に遮音結界、はどこの国の人も大概やるそうなんで、慣れているんだろう。


「あら。そう、流石に待たせてしまうのは失礼かしらね、お通しして」

 サクシュカさんは即断。


 ちなみに国同士の格は置いておいて、この国の王太子はまだ暫定(未成年なので)なので、他国の王妹のサクシュカさんのほうが立場が上なんですって。


 軍でも貴重な治癒師だから位階も高いそうです。

 一応カルホウンさんが殿下と同格になるのかな?龍の王族の男子には継承権はないけど、正規の軍人さんだからね。


 あたしは特に何の地位もない、という訳にもいかなかったので、今回は非常勤の軍属治癒師ということになっております。


 国籍は保留にしてあるので、在留資格だけ正式に取って戸籍も作った。んで、王城に出入りできるように、殿上資格というものを貰っている。


 ハルマナートだからなんとかできたけど、他国だとこうはいかないから、ほんと君運がいいね、とはカルセスト王子の言だ。



 待つことしばし、王太子殿下らしき人は、三人の連れと共にやってきた。


 随分連れが少ないな、と思うあたし。

 王太子殿下ならもうちょっとこう、護衛とかいないんでしょうかね。


 いやだって、連れの三人も絶対高貴な方々でしょ、というか、男性二人は色こそ違えども、顔がびっくりするくらいよく似ているの。


 きっと金髪のほうが第二王子のセンティノス様で、淡い紫の髪の人がカムラス王太子殿下よね?


 女性二人は王子様方よりちょっと年上そうで、ひとりは緑がかった金髪に金糸銀糸と緑色の多い縫い取りがある白地の神官服、もうひとりは淡い茶色の髪に白い花飾り、そして簡素な白いドレスとガウン姿なので、どういう方かは、見た目だけでは判らない。


《いやいやいやいや、カーラ、白いドレスの方のほう、この方が聖女ベアトリス様ですよ!もうひと方は服装からすると、多分この国の神殿の上級神官様……かしら?》

 え、どういうこと?


 ああでも王太子殿下と聖女様、婚約してるって聞いているから、一緒に来るの自体は……いやでもなんか変よ?


 推定聖女様の表情が、とてつもなく暗い。推定巫女様はそれを励ますような気配。

 なお王子様二人は、入ってきたところで一瞬だけ驚いたようだったけれど、そのあとは大変厳粛なお顔。



 取り合えず直接会って顔を見た感じだと、この兄弟、恐らく、すっごく仲が良いんじゃないかなあ、根拠はないけど。


 あと、あの王妃様はやっぱりダメね?


 婚約者とはいえ王子様方と一緒ってことは、聖女様の潔斎とか大嘘でしたってことよね、この状況?

Q:マジでお伴はどうした

A:一応離宮の入り口で待機してる。ゲン君達と下っ端神官さん。

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