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432.オラルディ国を後にする。

おうちにかえるよー、の前のあれこれ。

 さて、どうやらこの国での仕事はだいたい片付いたようだ。裁定者称号も、封印アイテムの受け渡しの時に任務完了で停止したから、問題はないはずだし。


 ミレーニエ王女は当面は神殿で生活する事に変更はないものの、在俗のままで、新劇団の立ち上げに携わることになった。これはもうほぼ本決まりで、これが軌道に乗るまでは縁談はご遠慮ください、という言い訳にも使う予定だそうだ。その辺は発起人であるブランデル神殿長様あたりが上手くさばいてくれるだろう。


 マリエッタ王女は、庶民派仕草は一旦中止して、辺境伯家の家格に相応しい教育をきちんと受ける、と、なかなかの気合の入りようだった。恋って強いなあ。

 ただ、封印してなお、スキルや技能の底上げ機能が封じきれていない疑惑、そしてやはり二十四時間つけっぱなし、とはいかないアイテムになってしまった事もあって、事故防止の為、一旦魔力量(キャパシティ)の少ない平民の人が大半である母親の実家で、改めて教育を受ける事になるそうな。

 こちらはもうレンドール殿下との婚約にも完全に前向き通り越して前のめりモードなので、縁談の方は全部断わっていいので楽ですね、とベルタルダ伯爵夫人もにっこりだ。


 ファルティア王女の方は、ミレーニエ王女の企画を手伝う事になった。マリエッタ王女とあまりべったりだと、封印があってなお、新規スキルの押し付けがないとは言い切れないからだ。それに、彼女も以前から演劇には興味がある様子だったから、案外、演者として舞台に立つ日なんてのが来るのかもしれない。

 彼女に関しても、ミレーニエ王女同様、劇団絡みが落ち着くまで縁談はお断り一択でいく方針だそうだ。


 ルシール王女はまだ年齢も年齢なので、当分は特に問題なく今まで通りの生活だ。流石に彼女宛ての将来に向けて系の縁談も非常識なんで断わっていいんじゃないですかね、という女神様ジャッジが下っているので、これまた断りやすくなったとベルタルダ伯爵夫人が喜んでいた。


 レンドール殿下は一旦自国からの訪問団と共に帰るそうだ。仮にも王族が、失踪は勿論、神殿にも国王にも報告なしで出国したってのは完全に叱られ案件だからね。幸い、マリエッタ王女との縁談が纏まる流れは確定したから、軽く叱られる程度で済むだろう。

 次回は正式な婚約の使者と共に、と息巻いていたけど、それ中位貴族家以上の家格だと、普通本人は出向いちゃだめな奴じゃないですかね?


 ベルタルダ伯爵夫人は健康を回復したとはいえ、これまでの経緯もあるので、基本的に生活は今までとさほど変わらないだろう、という話だった。ルシール殿下や、まだ赤子だからもう少し先の話になるとはいえ、セプティミアちゃんの教育係も務める事になるだろうしね。

 そう、実は彼女、これまでも身体的事情に対して、ちょっと忙しすぎたのだ。これも女神様から治療依頼が来た理由だったりする。でも、仕事量が増やせて事案の先送り案件が減ると喜ばれたのは想定外だよ!まさかのワーカホリック勢だった!


 という訳で今回の訪問も無事、戴冠式出席を含む、全ての用事を片づけることができた。女神様から治癒関連や、人間関係の調整絡みでの依頼の報酬も頂いたので今回も黒字ほっくほくですよ!


 ハルマナート国に帰る前にジュレマン公爵家にお邪魔したら、ちょうどタイセイ君が絵を一作仕上げたところだというので、見せてもらった。


「異世界人の伝えた物語を舞台化するというのでね、参考になろうかと、ボクの知っている類似の物語の背景画を描いてみたのだ。ただ、元の仕事がよりリアリティを追求する方向性だったのと、ちと気合を入れ過ぎてしまって、このまま拡大しても、舞台映えという点では少し微妙に思うのだけれども、どうだろう?」

 そう言って見せてくれた絵は、極東というよりは東方風の、赤い柱と黒っぽい瓦屋根の宮殿風の建物だった。うん、絵画としては、写実的で、細かい所まで描きこみがされていて、凄くよくできている、気がする。


「うーん、あたしはあまり演劇は詳しくないのよね。凄く出来のいい絵だとは思うけど、背景にこのまま置くと、詳細すぎて視線を奪いそうね?」

「我も演劇に関しては詳しくないのでそちらへの論評は一般論程度にとどまるが、背景というより、むしろ異世界の資料として一級品といえるのではないかね?」

 あたしもランディさんも、演劇ってあまり関心がないタイプなので、その程度の事しか言えなかった。タイセイ君も別にあたしたちの意見を重要視はしてなさそう感ありありだし、多分問題ない。


「そうですね、このままのものを拡大すると、流石に背景に役者さんが食われる感じになりかねないですわね。でも異世界様式のよく判らなかった所を知ることができましたから、とても参考になりますわ」

 背景画家のティルファさんも意外と似たような意見だったので、あたしの感性、意外と間違ってなかったっぽい?


「ふむ、異世界様式の資料として絵をものすか。それもいいな、やってみていいかな?」

 そしてタイセイ君は、ランディさんやティルファさんの意見に乗り気になったので、まだ当分この国で絵画三昧の生活になる模様。海に出てかなくて平気なのかペンギン?

 と思ったら、定期的に川で泳いだりはしているらしい。ジャンプショーとかやったりして、すっかりミルディンガー名物になってた……そのうちペンギン饅頭とかできたりして。いや、国柄的にはサブレあたりかも。


 そういえば、ランディさんの収納周りの魔法の状態を見てみる、ってのをすっかり忘れていたなあ、と思い出したので、早速シエラにお願いしてみたんだけど……


 ……なんも、見えない。


《そりゃあ格納魔法の中身が見えるなんて、チートってレベルじゃないですし。本来は異空間に格納してしまう以上、見えない、が正しい挙動のはずですよ》

 言われてみれば……確かにそれはそう。正解は多分、物の出し入れをするときに見る事だね、これ。収納使用時の魔力の流れ自体は初めて会った時に見ているけど……うん、そうだ。出し入れの時だけ、魔力の流れも見えて、出し入れ完了しちゃうと見えなくなった記憶があるな。


 でもそうすると、やっぱり龍の王族が使っているアレ、完全に格納魔法とは別物に仕上がっちゃってるって事よね?


「どうしたね、急に我を見て。流石に見慣れておるだろう?」

 ランディさんからも当然のように突っ込まれたので、そうですね見慣れてますね、とオウム返しする。ランディさんこのネタ割と好きだよなあ?

 あ、でもそうだ、あたし、ランディさんに空間属性が見えない話したっけな?多分してないはず?


「格納魔法ってやっぱいいよなーって。龍の王族の人達のはちょっと微妙だけど」

 ここはもう正直にぶっちゃけとこう。運よく興味を引くことができれば、ランディさんも巻き込めるはずだし!


「……あの状態を視認できるのだな?是非詳細を伺おう。あれより先にどうしても進まんので、どうしたものかと思っておったのだよ」

 思いのほかランディさんが前のめりに食いついてきたのでちょっとびっくりしたけど、考えてみれば龍の王族の半端な格納魔法は真龍式の劣化コピー、つまり真龍の誰かが教えたもののはずで……その誰か、が、一番人間に親しんでるランディさんである可能性は、当然考慮すべきでしたね!


「それなんですけど、サーシャちゃん達を巻き込んだ方がいいような気がするんですよね。あの子達の収納魔法自体は真似できないとしても、多分あれ、根本的な部分から手を入れないとダメな気がして」

 なので帰国してから学院辺りで検討会を開きたい、と言ったらランディさんも参加するという言質を得ました!ヨシ!


「じゃあ検討会の辺りまでに一回ものの出し入れの魔力周りの確認がしたいです、できたらサーシャちゃん達辺り同席で」

 そう希望を述べたら、なら帰ってから早速やるか、と、結構ランディさんも乗り気になってきた。いいぞいいぞ。前のめりになりすぎない程度でお願いします!


 そんな訳で今回もランディさんの転移で帰宅と相成りました。いや別にそのために知識欲を煽ったんじゃないけどね?

だって見慣れるって断言できるレベルで長時間一緒にいる人久し振りだから<ネタの天丼


というわけで第十二部、無事終了です!人物紹介纏めも同時更新だよ!

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