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42.いきなりヘッセン国?

はい、いきなりヘッセン国からスタートの第二部です!


 お久しぶりです、カーラです。今、何故かヘッセン国の王城の賓客用の控室にいるの。


「なんであなたのようなどこの兎の小骨とも判らないような輩が賓客控えにいるんですの?」

 いやほんと、なんでこんなところにいるんですかねあたし?

 サンファンの案件で麒麟の子連れてのりこめーしないといけないんじゃないかって思ってたのに。

 というか、実際にその方向で準備をしていたんですよ?


「龍の王族の皆様がいらしたというから来てみれば良く判らない女ひとり、まさかカルセスト様と何か?!恋人などと言い出すのではありませんわよね?冗談ではございませんわ」

 そしたら突然ヘッセン国からの招待状が届きまして。しかも言葉は丁寧ながらも、地味に期日厳守の奴。これ、招待状ではなく召喚状って言いませんかね?


 いやまあ、確かに現在サンファンから脱出してきた麒麟の子を保護して国境城塞で世話していたりはするけど、実のところ、もともと、あたしとサンファン国自体に関りは全くない。誓って絶無。

 なのでよく考えたら、あたし自身がサンファンに乗り込む必要はないっちゃ、ない。


「別れなさい絶対!命令よ!カルセスト様に貴方なんて相応しくないのですから!」

 でもこのヘッセン国の招待状改め召喚状に従う義理も、実はないんですよね。

 今のあたし、ハルマナート国に住んではいるけど、帰化はしてないから国民じゃなくてぶっちゃけ居候だし、現状ではどこの国に所属してるわけでもない。将来的な予約は入ってますけどそれはまだ秘密だしね。


「そもそもあなたのような貧相な小娘にカルセスト様が見向きなさるかどうかも怪しいですけれど!」

 でもシエラがこれは優先した方が良いって言うんですよ。真正の聖女に会う機会なんてそうないから顔繫ぎしとけと。

 しょうがないから行くことにしたら、何故か周囲が盛り上がった。主に女王様とその姉妹が。


「いい加減何か言ったらどうなのです?言葉も判らない山の猿ですの?」


 城塞からハルマナートの王城に連れ出され、採寸やり直しから仕立てから美容のあれこれからフルコース駆け抜けリアルタイムアタックさせられました。なんでだ。

 当然作法の勉強もしました。所作とかも、シエラのお陰でなんとかなった。いなかったら、流石にちょっとやばかった自覚はある。

 あたしの真のチートはシエラの存在じゃないかって思ってしまうくらい、知らないままだったら大変だった。ええ、知っててなお結構きつかった。立ち姿の維持とか正規のカーテシーとか。


「この国以外で殿上の経験のない異世界の方とお聞きしておりましたが、思った以上にちゃんとできていますねえ。不思議と北方国家の癖が少しあるようですが、誤差の範囲内でしょう」

 礼法の先生はそう言ってくれた。うへ、そんなとこまで判るのか。要注意だわ。


《確かにちょっとだけ、メリサイト国の作法と違うところがありますね。今回のこれはヘッセン式のようですが》

 ハルマナートにはそういう厄介な作法は特に定められていないのだけど、他国に赴くときに無礼があってはいけないから、と、各国の作法に詳しい先生を取り揃えているのだそうだ。先生方は普段は上級学校で龍の人たちを含む、外交や儀礼、文官業務にあたる人たちに、各国ごとの礼法を教えたり、お互いの差分の由来を研究しあったりしているそうな。お給料いいんだってよ、ハルマナート国の学校。

 というか、自国式覚えておけばだいたい問題ない各国より、ハードモードなのでは?


 そんな経緯を経て、サクシュカさんとカルホウンさんが護衛に付くという、対外的には大変ゴージャスな布陣でいざヘッセン国にやってきたわけです。


 尚、最初はカルセスト王子が付く予定だったんですが、二人揃って「え゛ッ」という声が出てしまったので、その場で変更されました。

 ちなみにあたしは当然彼では神経が休まらないんできつい、の「え」、だったんですが、彼のほうは流石に理由が違った。


「他ならともかく、ヘッセンだけは嫌だ。アレに会う可能性なんて絶対に困る。陛下たちだって知ってるだろうに、なんで俺を候補に入れてんだよ?」

 珍しく直球で苦情を述べるカルセスト王子。どうやら苦手な人がいるらしい。そして、その理由で変更が認められる程度には、厄介な相手のようだ。

 でも初期案で彼の名が上がる時点で、命に別条が、とか危険な話ではなさそうよね。でも、コイバナ関連だとあたし的にもちょっと厄介かもしれない。主に、余計なフラグ的な意味で。

 所属こそしてないけど、召喚状の内容や宛先的に、龍の国絡みでの訪問とみなされている以上、その人に絡まれなきゃいいんだけど。

 あたし的にはホントにカルセスト王子はアウトオブ眼中というか、推し的意味ですら対象外なんだけど、相手がそういう事を理解してくれるなんて幻想は、持たないほうがいいのがコイバナ系のめんどくさい所だ。

 サーラメイア様とか、かわいい方だよ?あの人のコイバナは基本観賞用みたいなもんで、ぶっちゃけあたしの推し活と大差ないからね。


「……このブサイク、何とか言ったらどうなのよ気色悪いドブスが!」

 と、いうわけでだ。

 早速ジト目であたしを睨みつけて、カルセスト王子の恋人がどうとか別れろとか、ないことないこと言い募るお嬢さんと相対している、という。

 フラグの回収が早すぎるよ!!思わず全力でここまでの過程を振り返って現実逃避しちゃったじゃない!


 くるくると綺麗に縦ロールに整えられた綺麗な薄紫の髪に、氷河の氷のような色の瞳。白皙の美貌の眉間にしわを寄せ、甲高い声であたしに只管、罵詈雑言、にしてはお上品めの語彙で、あたし的には付き合ってもいないどころかお付き合い御免被りたい王族ナンバーワンのカルセスト王子と別れろとか数分くらいずっと言い募っている少女は、事前資料が間違っていなければ、この国の第二王女、アリエノール様十五歳のはず。最初に現れた時には、風と水の属性がちらっと見えた気がするんだけど、今よく観ると火と闇だな?闇は珍しいけど、何と見間違えたんだろう、あたし。


 まあ、知らないふりをするんですけどね。正直王女様相手に座りっぱなしで応対、しかも無言でとか不敬どころじゃないですから。

 ええ、名乗られておりませんから、知らない人です、はい。

 無言の理由?口を挟む隙が物理的にないんです。マシンガントークってこういうのを言うんだっけ?違うか?


「ちょっと何の騒ぎってえええええええアリエノール様?!何故此処に!」

 ああ、やっとサクシュカさんが戻ってきた!カルホウンさん共々この国の位の高い誰かに到着の挨拶をしに行っていて不在だったのよ。

 多分挨拶の相手は召喚状に署名のあった国王陛下なのかな、あたしは現状一応平民で、この国の殿上資格がないので挨拶には同行できないって言われちゃって留守番してたのよ。

 お陰で推定王女様の侵入を防ぎ損ねたという次第です、はい。


「えっきゃっサクシュカリア様?!」

 微妙に怒りを孕んだサクシュカさんの声を聞いた推定王女様、いやサクシュカさんがアリエノール様判定したから確定王女様が、慌てた様子で振り返る。


「きゃっじゃありませんわ!未婚で未成人の王女殿下がこんな場所をうろうろしているうえに、貴国が招いた、私たちにとっても賓客である人にウザ絡みだなんて淑女としていかがなものですの?」

 何時もより丁寧な言葉遣いながら、相手を明確に叱責するサクシュカさん。うん、ウザ絡みとか言わなかったら叱責としても百点だったかな。


 うっ、と、反論できずに詰まる王女様。

 結局そのまま、サクシュカさんの声で事態に気付いた、ここの王宮の人たちの平謝りと共に、王女様は引き取られていった。

 ……慣れてんなー。あれ、日常茶飯事かあ。大変そうね、ここでのお仕事。


「んもう、あの子ほんとに幼女時代から微塵も変わっていないわね。そりゃカル君も嫌がるはずだわ……」

 サクシュカさんはそれを見送って溜息をついて、あたしの隣に座った。

 聞いてもいいかなあ、なんとなく想像はつくけどさ。

第二王女、六歳でやらかしたのか。そっか。

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