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41.もふもふと推しと皆の帰宅。

第一部ハルマナート編の本編はここまでです。

 もふもふの謎を解くにはもふもふするしかないだろう、と、思っていたのですが。

 もふもふを召喚する前に仕事が沸きました。ぐぬぅ。

 いやシルマック君はなんだかんだでずっと一緒にいるんで、軽くモフらせていただきましたけども。

 まあ現在のあたしは城塞の居候には違いないので、仕事があるなら働きますともさ。


「ああ、カーラ殿、朝から相すまぬ。昨日の議事録の最終確認が必要でな、貴方にも立ち会って頂きたいのだ」

 マグナスレイン様がそう言ってあたしを手招きする。

 うーむ、朝からイケメンが眩しいわ。結局髭関連は陛下やサーラメイア様にばれて、絶対なしで!と詰め寄られたので伸ばしなおすのを諦めたそうなんだけど。

 治癒をかけた日に片方だけ、藍色のような青のような色に見えていた彼の眼は、やっぱり両方とも琥珀色だ。

 あれはなんだったんだろうね。何か違うものを観ていたのかしら、あたし。



 議事録のチェックは滞りなく終了。フレオネールさんもベッケンスさんも、メモを取ってもいなかったのにこの内容が書けるのか、と改めてあたしに付けられた魔法の威力を感じてしまっていた様子。


「でも記録じゃなくて、どうでもいい雑談とかは記憶のほうになるっぽくて、普通に忘れるんですよ」

 一応言い訳はしておく。実際ここにきて数日くらいの、イードさんとの会話とか、枝葉末節は案外忘れている。忘れるの早いな?

 いや、普通の人も普段の会話内容なんてそう何日も覚えてないか。


 あたしは元の世界では所謂メモ魔だった。日常の、または治験なんかの非日常の、データだったり会話だったり、いろんなことを可能な限りメモして、纏められるものは時間のある時に纏めて記録していた。

 そういう意味では〈記憶と記録の魔法〉、転じて今シエラが運用してくれている〈書庫〉の魔法とは元々相性が良かった可能性はあるな。

 多分、元の世界での日常の記憶も、段々薄れていくんじゃないかな。既にメモ魔になる前の、幼少時の記憶が大分あいまいになっている。

 いや、その辺は割と極端な事しか元から覚えてなかった気もするな?メモ魔になったの、それが原因だった気がする。


「ほう、記憶と記録の境目はどこになるのだね?」

 マグナスレイン様が興味を示す。まあ歩くスキャン&コピーには警戒して然るべき立場の人だからね、しょうがないね。


「龍の方々に隠し事はできるだけしたくないので、正直に言っちゃいますけど、ほぼ任意ですね。あたしの考え方次第、です」

 思い切って白状しておく。というか、これは隠さない方が良い予感がするのよ。


「なので、大事な話をしているところに遭遇したとしても、あたしがそれに意識を向けなかった場合は、ほぼ聞こえていても忘れると思います」

 流石にそんな場面に遭遇したことはまだないけど、と付け加える。

 昨日はちゃんと雑談と並行して、相談の会話は意識して聞いてたからね。

 あと実は、治験中に半隔離状態の時に、研究者さん達が色々喋ってる事を知りたくて覚えた読唇術なんかもあるけど、この世界では言語が違うので、そちらではまだ不完全にしか読み取れない。独り言が多いイードさんで結構練習したんだけどなー。


「成程。では逆に他人にはどうでもいい事でも、自分が大事だと感じたら記録されると?」

 そう尋ねてくるイードさんが、研究者らしい興味津々の顔になっている。そういやこの仕様の話はまだしていなかったわね。


「多分そうですね。そこまで強く意識したことはまだあんまりないですけど」

 スタンピード後の惨状は結構覚えちゃったけど、それは教えなくてもいいだろう。別にあたしのメンタルの負担にはなっていないしね。

 元の世界の世間的には確実にグロ画像祭りなんだけど、治験の時に、自分の身体で結構えぐいもの見ちゃってるから、その辺の感覚は思ってた以上に麻痺してるっぽい。

 多分今のあたし、小説なんかでよく異世界転移または転生者が抵抗を覚えるっていう、狩りの獲物の解体とかも、普通に覚えること自体はできそう。

 ……まあ実行できるかどうかは、流石に謎だ。


 ちなみにちょっと意識しちゃったのはマグナスレイン様の人の姿に初遭遇した時ですね。あの時は髭が戻る前に覚えておこうとか思った覚えがきっちりございますので。

 無論本人には言いませんけど!


《カーラ、マグナスレイン様が好みのタイプですの?》

 シエラさん、唐突にぶっこんでくるのはどうかと思うんですよ。

 まあそうね、これまでこの世界で会った男性陣の中では一番好みであろうとは思うわ。恋愛感情とかはないと断言できてしまうけどね。

 まず顔がいい。龍の王族の皆さん皆だいたいイケメンだけど、ダントツで超イケメン。造作が好み、所作も落ち着いた性格も、声も好み。それは間違いないけども。

 それとは別に、見ていて高揚感もだけど、安心感がある、というのかしら。一番落ち着くのよねえ。黒髪のせいかもしれないけど。


《成程、恋愛ではなく……どちらかというと推しの概念のほうですね?》

 いえす推し!そうそうそれ!シエラもすっかりあたしの元の世界のオタク概念理解してきたわね……


《流石にこれだけ資料がありますとねえ。知らない文化って面白いですし……》

 なんとも見事にオタクカルチャーに嵌った外国人状態になっている。いや、厳密には外国人じゃなくて異世界人、というかあたしのほうがアウェー、外国人枠みたいなもんだけど。

 元々色んな異世界のものを持ち込んでる世界だからか、全体的にそういう見慣れない物、知らない物に対する抵抗がない傾向は感じるわね。



 当面話し合わないといけなかった件は議事録にまとめるところまでは終わったので、村の人たちは帰っていった。

 龍の皆さんも事後処理班以外は一旦王都に戻る。イードさんは当然こちらが職場なので、残る。

 舞狐のイナメさんも一旦妹の葬儀を出さねばならんから、と挨拶しにきてくれて、フラマリアの本拠地に帰っていった。

 挨拶の時に約束通り背中と尻尾と首周りをモフらせて頂きました。ああ至福の感触。


(うむうむ、心地よいのう。そなたの手は自分で感触を楽しむだけでなく、我らも愉しませることを知っておる、良い手じゃの)

 イナメさんはそんな風にあたしの事を褒めてくれた。

 そりゃあモフらせて貰うんだもの、相手が気持ちよく目を細めたりふんにゃりしたりしてくれる方が、嬉しいに決まってる。

 幸い意思疎通スキルのお陰で、気持ちいいかどうかはすぐ判るしね。


 フェンリルのレイクさんや、例のちょっと賢い狼たちは、暫く城塞に留まるそうだ。

 アルミラージは今いる群れは元々この城塞に居付いているので、数は減ったけど移動はなし。

 ケットシーさんはイードさんへの用事は済んだので、一旦種族の土地に帰っていった。ケットシーだけの村、自称王国があるんですって。

 シルマック君はすっかりあたしの肩が定位置になってしまっている。どうやら、元々決まった住処を持ってなかったらしい。


 獣人改め聖獣の子は、一旦城塞預かりになった。

 サクシュカさんは手元に置きたがったけど、流石に他国の守護聖獣が絡んでくる案件を王城に置くわけにはいかない、と裁可が降りなかった。

 名はまだ誰も教えてもらっていない。まあうっかり名を教えると隠蔽や守護が緩む可能性があるようだから、仕方ない。

 名無しじゃないらしいのだけは幸いだった。勝手に命名されるなんてイレギュラーは防げる。


 あたしも城塞に残ることになっている。いやだって王城で特にやらなきゃいけないことってないし。

 褒賞のお金でお古じゃない下着を調達できることになったので、その買い物には行かなくちゃいけないけどね。

 それは近日中にハイウィンさんが連れて行ってくれることになっている。

 下着以外はいつの間にか王城と城塞を往復していたサクシュカさんが、王族の普段着の御下がりという、素材的にそこそこ大層なものを数着くれたので、当面は心配ない。デザインも日常着感あって、しかもあたしのサイズを覚えてるという例のお針子さんが寸法直し済みなので、身体にもちゃんと合う感じで着やすいので助かる。……素材があらかた蜘蛛絹なのには、目を瞑る。いやだってこれぜいたく品のくせに洗濯が超絶楽なんで、着ないという選択肢が、ない。


 中庭の再整備で、ベッケンスさんも暫く泊まり込みになるらしく、彼は村からすぐ戻ってくるらしい。

 で、亡くなったアンナさんの代わりがすぐには決まらないこともあって、ベッケンスさんの奥さんが一緒に泊まりに来て、掃除と洗濯を手伝ってくれるんですって。

 掃除はあたしもそれなりに覚えたけど、お洗濯はまださっぱりだから、習わなくちゃ。


 随分と慌ただしい、そして重い数日間だったな。

 流石にこの数日の事は、記憶の魔法がなかったとしても、そうそう忘れることはできないだろう。


 スタンピードの後始末が落ち着いたら、サンファン絡みの案件なのかなー。

 聖獣の子の事があるから、神罰喰らった奴らだしもう放っとくか、って訳にもいかなくなっちゃったのよね。


 でもまあまずは、召喚術と家事の練習かな!

次回で登場人物まとめ。それから3回ほど、悪役振られた国ふたつの話と、ジャッキーのおはなしが挟まります。

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