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350.異世界でボドゲ会を嗜む。

娯楽はそれなりに多いけど今回話題のボードゲームは普及理由が別だからね。

 いやほんと、なんでこうなった。


 結局リミナリス殿下とグラニク殿下がボドゲの公開対戦を提案して、先方にも笑顔で了承されたので、参加しない他の人もせめてルールは覚えましょうね、という事で、夕食後にうちの宿泊先に希望者が集合してルール勉強会だ。

 いや、流石に公爵邸だっただけあって、程々の人数が集まれる部屋が複数ありましてね、丁度良かったんですよ。部屋数が多いから、机を寄せ集めて大机にしたり椅子を人数分用意するのも楽勝でしたし。

 参加者はアデライード様と付き添いのマリーアンジュさん、エレンディアさん、どこかから話を聞きつけてきたコシュネリク殿下とその随身で乳兄弟だというチェリク君、うちからはあたしと三人組とムーレルさんとマルジンさん、それにサンクティアさんとメルマイアさん、その護衛役だという黒鳥、それに教師役でカル君とランディさんという豪華布陣ですね。


 この世界の戦略ボードゲームは、当然最初に持ち込んだのは異世界人だ。ただその歴史は古く、自称勇者様の時代には既に現在の形で確立していたという古典作品でもある。亜流の作品や地方色の強いルールの亜種もあるそうだけど、称号が付くのはこの古典作品、『超戦略・紙上の戦争:古典版』だけだそうだ。

 古典版といっても、世界情勢の変化や新しい発明、異世界人による新しい持ち込み定着概念などは随時バージョンアップされていて、ほぼリアルタイムに近い環境をボードゲームの体裁の制限の上で再現できている、という優れものなんだそうだ。無論その分ルールの複雑さも増しているので、初心者向けの初期ルール版が今回は用意されている。魔法は中級までで火器もないやつ、但し時代にそぐわないので一騎打ちルールは初期版でも除外だそうだ。切ない。もっとも、ソロでの大将首狙い特攻ユニットはあるので、サーシャちゃん辺りが狙いそうだなあ、なんて考える。

 一体誰がバージョン管理してるんだろうと思ったら、どうやら真龍のひとりであるらしい。人間は嫌いだが人間の創るゲーム各種は気に入っていて、この戦略ボードゲームが一番のお気に入りなんだという話をランディさんに聞かされて、まさかそんな大物が管理者だったとは、と驚く一同。うん、勉強会組誰も知らなかったよね!


 まずルールブックを一読。これはあたしは一回読めば一応アーカイブはされるので余裕、というかシエラが何気に去年までの最新バージョンのデータ持ってて二度見した。


《物語の戦場の再現もできるので嗜んでいたんですけど、これがなかなか奥が深くて》

 ああはい、沼は何処にでも転がっている把握。

 将棋とかの発展形かと思ったらヘックスマップタイプで、高低差の概念とかも本式ボードだと立体で再現できるそうだ。今回は初心者向け略式ボードなので普通の板紙にマス目印刷しただけのものですけどね。地形の方は基礎マップと言われる架空の地形数種がデフォルトで付属していて、初心者は基本ルールを熟知するまでは完全平原マップからやりましょう、なんてルルブの冒頭に書いてあったりする。まあ山岳地帯とか湿地帯とか入れると、考えるべき事がどかんと増えるもんね。略式だと天候設定もオミットです。


 ちなみに国同士のもめごとの時に、実際の地形を写し取った物を使ってこのボードゲームで勝敗を決して有利側を定める、なんてことも過去にはあったらしい。というかこの出来事がこのゲームの勝者に条件付きで称号が付くようになった発端だそうだ。なお勝者は自称勇者様。ただ彼が勝利したのはこの一回だけなので、実は地元民で十連勝、異世界人でも五連勝しないと取れない称号の方は持っていない。これはランディさん情報だし、グレンマール陛下がその称号をワールドファースト仕様で持っている以上、間違いない。


「調子こいてたので我がこてんぱんにしてやったら、すっかり触らなくなってしまってなあ」

 わあ真龍が大人げないことしてた!


 全員でルールブックを読みあわせて、基本知識の怪しい所は質疑応答で潰していく。この段階でなんかいっぱしの軍略会議みたいになるのが笑えますね!

 あたしはルルブは覚えてしまったから、ユニットの駒を覚える方に進む。歩兵が最大、騎兵もある程度、輜重隊やら斥候やら細かいユニットもいっぱいある。暗殺者とかは流石にないけど、部隊長、総隊長などの特殊ユニットは存在する。

 この世界、神が厳密に国境を定め、侵すことを厳禁としているから、基本的に国同士の争いで軍が動くことなんて、まずない。数千年に及ぶ、まあまあ長い歴史で、たったの二回だ。アスガイアとサンファンによるハルマナート国侵攻ですね。アスガイアの時は、国神が居ない以上、地域であって国ではない、と屁理屈を述べながら突っ込んできたそうだけど、サンファンは、あの宰相、多分そこまで細かい事考えてなかったよなあ。

 ちなみにレガリアーナの軍船の件は、あくまで個人の暴走であって、しかも本土に接近する事すらなく終了したので、ノーカン扱いになっている。それでもやらかしたのが王の実子だったから、王家は責任を取らざるを得なくなったけど。そういやあそこ、新しい神官長が決まったって報告がいまだにないんだけどどうなってんの?


《候補者が三人既に辞退しているそうです。実際責務に耐えられる人材ではないという判定だそうなので、恐らく旧王家となるレグルセンの王子王女のどなたかを神殿入りさせる方向になるため、禅譲も秋までずれ込む見通しですわね。補償の方は海生種族の皆様を優先して、順に実行中だそうですけれど》

 うわあ、レガリアーナ、そこまで神殿の人材が不足してたのか。いや、前神官長が何らかの細工をしていた可能性も微レ存だわね……


 さて、ボドゲの方は、大体全員ルールの把握もできたので、テーブルを再度分離して二組ずつ対戦していく。ランディさんは流石に傍観者としてルール違反の動きを注意したりするオブザーバーもしくはGMですね。その結果、案の定というかなんというか、サーシャちゃんが完全に一強だ。


「やべぇ幼女つよい……陛下相手でもいい線行くんじゃないかこいつ」

 余りの事態につい挑んで惨敗したカル君の感想がこれだ。


「幼女言うなっつか微妙に言い回しがネットミームくさいのなんなん?」

 ラノベによるミーム汚染に直面したサーシャちゃんが眉を寄せている。ハハハそこは諦めろください。不意打ちで来るからなかなか慣れないけどな……


 え?あたしですか?可もなく不可もなし、です。面白がった勢が組み合わせを変えながら数巡させたので何となく順位が出たけど、綺麗にど真ん中にあたしがいますハイ。上から順にサーシャちゃん、ワカバちゃん、サンクティアさん、コシュネリク殿下、カル君、カナデ君、あたしとマルジンさんが同着、以下諸々、というところですね。殿下が優秀だったよ!物語の不遇王子みたいだね?

 意外だったのは、ワカバちゃんがサーシャちゃんの次に付けたことだろうか。サンクティアさんが想定していないスキを衝かれたと悔しがっていた。

 なお問答無用で最下位だったのは黒鳥でした。斥候ユニットや特攻とかのソロユニットでスタンドプレイしすぎて違反累積で反則負けするんですよこの子……


「成程、お前ゲーム自体が向いてないな?」

 カル君にばっさりやられてしょぼくれる黒鳥がちょっとかわいいけど、思考が雑なのはわざとだよなあこれ、流石に。接待プレイが下手という意味なら納得はしますが。


 なお逆の意味で接待プレイができないのはカル君と、今回はプレイしてないけど恐らくはランディさんもだ。教師役二名が割と大人げなく勝ちに行くタイプだったね……


 そんな風にワイワイやってたら、すっかり遅い時間になってしまって、王宮宿泊組にはもうすぐ閉門しますよ、と、迎えが来ました。流石に反省している。

 サンクティアさん達とエレンちゃんは今日はこっちにお泊まりで明日一緒に登城しまっす。カル君と黒鳥は残務があるって王宮組の護衛兼ねて帰ったけど。この時間からとか、ちゃんと寝なさいよ?とは言っておいた。


「未経験勢にしちゃねーちゃんいい線いってたなー。やっぱ発想がゲーマーなせいか?」

 サーシャちゃんが妙な分析をしているけど、確かにそんな感じはしないでもないわね。シエラも触ってはいたけど、戦況再現が基本で、対戦は余りやってないって話だったからね。


《余り、と申しますか、兄に勝てないのでやめてしまったのですよね……まあ明らかにサーシャさんやサンクティアさんの方が兄より強いので、自分に向いてなかったのも確かでしょうけど》

 シエラを負かしたのは今回の視察団にいるのとは別の兄で、軍にいる人だそうだ。


 ちなみにこの軍略ゲーム、対戦相手を魔物に設定することもできて、対魔物の基本戦術を学ぶのが一番多い使い道だそうだ。

 そうよね、軍が境界を越えたら神罰を覚悟すべき世界で、彼らが応対する相手って基本魔物か山賊海賊の類だけだもんね……

描写が少ない?細かいルールとか決めてないし()

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