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348.矛先が向いてこない理由。

サンファン行政府の人間もいるので男女比があれでそれのはずなのに。

「それにしても、カーラ様と一緒だと、男性陣の視線がこっちに来ませんね」

 マリーアンジュさんがそんな風に呟く。マリーアンジュさんも視線を浴びてたのかい。美人だけど上級神官だよ?世俗離脱勢だよ?


「はい、お食事に集中できる方が良いかと、検知に引っかからない程度の、軽い目くらましをさせていただいております」

 カスミさんの回答に、ほう?と関心を寄せるサンクティアさん。


「ふむ?ああ、成程……この術式は私では真似できませんが、参考にはなりますね」

 女性二人暮らしだと色々あるのかもしれないな、とうかがわせるサンクティアさんの台詞。


「これは我々舞狐族にしか使えぬ術でございますから。探せば類似の術はあるかと思うのですけれど、使用する方は幻獣聖獣系の方が大半でございましょうね」

 カスミさんの回答に頷くサンクティアさんとマルジンさん。


【そうじゃの。ワシもある程度の幻影幻惑系は聖獣式術式として使えるが、元世界での術式では動かぬようじゃからのう】

 マルジンさんの答えに、はっとするサンクティアさん。


「成程、そのような盲点がありましたか。また少し研究してみるとしましょう」

 以前やらかした入れ替えの術式までは、昔の異世界のスタイルで動いたけどその後は何もできなくなっていたのですよね、とサンクティアさんが述べる。どうもシェルレイアとして受けた抹消刑が、この世界に魂を馴染ませる術式として作用した気配がしますね……


「いやいやいやいや、なんで嬢ちゃんが綺麗処侍らせてんの、それ陛下の仕事じゃね?」

 そこに酷い言い草と共に、腹が減った教授陣からやっと解放されたらしいカル君がやってきた。相変わらずそういう事言うのか君は!


「うーん、不可抗力?重要人物はちゃんとあっちにいらっしゃるんだから平気でしょ。まあカル君もお疲れ。この卵サンド美味しいよ?」

 あたしの回答はこれ一択だ。だってマジのガチで、あたし、この状況に関しては一切なんにもしてませんもん。

 だいたい、今ここにいるのは確かに若い独身美少女が大半だけど!全員現在平民勢と、例外のひとりは元既婚者かつ世俗離脱済上級神官だぞ!未婚の王様と絡む必要はないんでーす!


「あっ俺も食べたいーまだある?」

 カル君を追いかけるように黒鳥もこちらにやってきた。相変わらず食い意地が元気な子だな。


「卵サンドもまだあるし、サバサンドもあるわよ」

「サバ?!食べるたべる!」

 食い物、それも大好物の魚であっさり釣られた相棒を呆れ顔で見ながら、カル君も卵サンドを一口食べて、びっくり顔で手が止まる。


「えっ何この卵サンド。卵の味が食べたことないやつ……卵のくせに濃厚……クッソうめえ」

 肉第一主義者が卵を褒めるという奇跡、発生。


(われわれの卵です)

(幻獣で雌鶏は現在他にいませんので、世界最高級の鶏卵です)

 ロロさんとココさんが胸を張っている。そういや前にランディさんに雄鶏ならいるけどなあ、って話は聞いたな。性別が偏りすぎてて突然変異しかいないのが鶏の幻獣だそうだ。

 ってあれ?ココさんも他に雌鶏幻獣がいないって自覚は持ってるのか。異世界出身者だけの仕様じゃないんだね。


「へえ?雌鶏の……幻獣ってそりゃまたレアな。いや、この旨い卵を食べ放題なのはいいな」

 カル君が素直に賛辞を送ったので、鶏たちもご機嫌だ。出自がこの世界の採卵鶏であるココさん達にとって、卵を産んで食卓に供するのはアイデンティティの一つでもあるのだそうだ。これは前に本鶏たちに聞いたので間違いない。もちろん、一番食べさせたい相手はカナデ君で、我々が頂いているのは、あくまでもお裾分けなんだけどね。


 なおカスミさんの隠蔽はあまり強くかけていないのと、対象から女性と人族じゃない者を除外、ということで、女性陣と現在種族不明の二人は普通に寄ってきたものであるらしい。後者が除外なのは、久しぶりに挨拶をしたい方もいるでしょうから、という配慮だ。ほんとにシゴデキだわあ、この狐淑女。ピンポイントでこの二人が釣れるわけですわ。


「サバも卵もうまーい……海の魚とかほぼ手に入らないから嬉しい」

 棒鱈くらいしか今は入ってきてないからねえ、と黒鳥が表情を緩め切っている。肩凝りは相変わらずだけど、サンクティアさんの研修が終わって本格参戦してくれたので、大分楽になっているそうだ。うん、彼女速攻で国王直属の秘書室配置になったんだそうだ。そして魔力を使う用事も余りない上に、光以外の全属性持ちということで、肥料の方も手伝っているという話だ。


「本当にどれも美味しくて、食べ過ぎてしまいそう」

 メルマイアさんもニコニコ顔で、小さく切ってピックを刺した色とりどりのミニサンドイッチを摘んでいる。今日の食事は全体的に一点一点は上品なサイズの物が多く、ピックで簡単にまとめてあったりして、気軽に摘めるものが多い。代わりに種類がびっくりするほど多くて、とにかく目移りするけど。


「貴方も最近魔力を使う機会が増えたのだから、しっかり食べて大丈夫よ」

 むしろ最近は食べないと体形の維持ができませんね、とサンクティアさん。手にしたプレートにはバランスよく配置された肉と野菜と魚。それをまるっとメルマイアさんに渡すと、新しい取り皿にこれも綺麗に自分の分を、こちらは気持ち肉多めに盛り付ける。

 メルマイアさんの方は無事召喚術中級に到達したので、今は騎乗用や荷駄運び用の幻獣たちとの契約や、連絡鳥の再導入に向けた訓練中だそうだ。二人とも転生者ということもあって、異世界人タイプの習得スピードだったらしく、かなり上達速度は早いんだそう。


「そうですね。召喚契約の方は一段落したので、今は儀式系結界術を教わっているのですけど、どうもわたくし、護法の適性の方が高いのだとかで、カーラ様にも少し教わって来い、と言われておりますの。滞在中にお時間がありましたら付き合っていただけますでしょうか」

 そんな風に美少女に頼まれて断れる奴などいません!というわけで二つ返事で了承する。

 だって、中級の召喚より適性が高い護法って、あたしと同列の可能性があるんですよ。そりゃ教える側としては張り切るよ。この国には神罰を受けていない優秀な護法師は、絶対必要だし。

 ……でも、異世界の魂が強い護法適性を持つのって、誰かを守りたくて守れなかった、そんな人が多いんだよね。あたしのはどれもこれも適正大以上、とかいう適性欄自体がバグってる奴だからノーカンな気はしてるけど。

 あたしの場合は、そうね、自分が生き伸びるのに必死だっただけだから、自分を守ろうとしての護法適性なのかな、世界の仕様上も結界術だけは自分にかけられるわけだし。

 まあその理屈で行くと攻撃魔法適性が謎だけど、これはどうも元世界の過ごし方や精神性にはほぼ無関係である、という研究結果が出ているので、シンプルにバグってんだろう。


《それですが、攻撃魔法適性は魔力総量で変わるという研究もありますので、恐らく例外処理になっているのはサーシャさんとワカバさんですねえ》

 ほう、あたしのは仕様か。でも確かに属性縛りが付いてる時点で、あんまり派手にバグってる訳じゃあないわよね、あたしの場合。それに、サーシャちゃんのはUIシステム積んでいて余裕がないのと本人に魔法を使う気絶無なのも原因だろうし、ワカバちゃんは純粋に意図的に防御全振りな、この世界の人にもたまにいるタイプだから、やっぱりそこまでバグってる気はしないなあ。


 そのあとは魔法談義やら近況の報告やらで、楽しい時間を過ごす。ちょっと人数が増えすぎましたね、と、存分に食べ終えたエレンちゃんとワカバちゃんが途中で離脱していったけど、多分二人で内緒話でもするんだろうからいいや。


「お姉さんの方、混沌属性持ちなら収納魔法も覚えられそうな気がするなあ」

 僕のはUIありきの奴だから教えられないけど、と、珍しくワカバちゃんに置いていかれたカナデ君が言う。そういえばそうね。


「それが、真龍様がた式の格納魔法は相性が悪くてだめだったんですよね。流石に異世界人式の収納魔法の取得者には心当たりがあるわけもなくて。もしいらっしゃったら紹介していただけますかねえ」

 サンクティアさんもそう言うけど、流石にそれは三人組以外心当たりがないような……カスミさんのは聖獣式らしいし……


「うん、異世界式の収納かね?そうだな、ちょっと後で知り合いに聞いてみてやろう」

 ちょうど食事の補充に来たランディさんが安請け合い。

 あ、そうか、ケンタロウ氏が異世界式収納魔法持っていたっけ……あの人も今は種族自体が変わってしまっているから、教えられるかどうかがそもそも謎だけど。

だから君は記憶枠を忘れるのが早すぎると(アーカイブされてるからって油断し過ぎである

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