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346.謁見の儀?

Q:なぜはてな?

 黒鳥に外回りで案内された先は、麒麟の園の手前、そう、予想よりかなり奥まった場所だった。木々を失ったままの庭園は、それでも麒麟の園から溢れるように増えていったという青草にすっかり覆われていて、蛇討伐当時の殺風景さは既にない。

 というか、視察団の本隊がいないんですがー?

 疑念を込めて黒鳥の顔を見る。とはいえ、にっこり笑う黒鳥に特に悪意は感じない。


【わーいおねえさんだー!ひさしぶりー!!】

 おおう、この声は。

 奥を見れば、去年と特に何処が変わったわけでもない、可愛い麒麟くんがぴょんこぴょんこしながらダッシュしてくるところだった。つやつやでふわふわでウェービーなクリーム色の被毛がキラキラしている、懐かしく愛らしい姿。


「おー、麒麟くん久し振り!元気そうでよかったわ!」

 飛び込んできた麒麟くんを軽くもしゃっと両手で包み込むようにして撫でると、嬉しそうな顔で摺り寄ってくる可愛らしいモフモフ。うむ、久しぶりの本日も手触り極上!


「え、聖獣麒麟?この国の要の?」

「いや待ってまって、じゃあここ後宮のすぐ手前って事?」

 いきなり王様飛び越して国の中枢的存在とじゃれあうあたしにドン引きしている学院勢。済まんなー!あたし称号的にもこの子の保護者のひとりなんだ!身内みうち!


「「わあ、可愛い!」」

「またねーちゃんが謎の人脈?獣脈?発動してる……」

三人組の反応は純粋に可愛いと叫ぶ黒髪二人となんか胡散臭い言いがかりを述べるちっこいのに分かれましたね!謎じゃないもん!仕様だもん!


「いやー、坊ちゃんがどうしても先にねーちゃんに会いたいってごねるもんだから。あ、陛下の許可もちゃんと得てるから、そこは気にしないでいいからね」

 そう言って一同に手をひらひらと振る黒鳥。割と教授陣にはぞんざいな態度だな?まあ元々人間相手だとそういう態度に出やすい奴だったみたいなんだけど。ちびだった頃も割と知らない人にはぶっきらぼうな時があった。麒麟くんにつられて愛想よくしてることもあったけど。


【ごねたんじゃないですー!保護者に会うのは権利ー!】

 ちょっぴりこまっしゃくれた事を言うようになったじゃありませんか麒麟くんや?まあいいか、かわいいし。


 ひとしきりモフと再会を堪能したところで、改めて視察団本隊と合流しますですよ。あ、蕩ける程モフモフはしてません、流石に自重しました。初見メンバーの紹介もしたかったしね。


【またごっつい聖獣格にしては、随分といとけないお子様じゃのう……】

 マルジンさんは、麒麟くんの力の大きさと、見るからに子供である幼さのギャップに、ちょっと心配そうな顔をしている。


【いろいろありましてー、本来より早く引き継ぐことになっちゃったので。大きい狼のおじさまにも助けて貰ってるので、どうにかやれています】

 今回はいろいろあって、おじさまはおうちのほうにいますけど、と麒麟くん。そっか、レイクさん、今日は東領の塒かぁ。


 麒麟くんと一緒に合流しにいってしまったので、視察団本隊勢にはどよめかれた。


「えっあれっ……あ、そうか、カーラさんは以前からお知り合いなのでしたっけ」

 リミナリス殿下ですらこのざまです。事前資料であたしがある程度この国の内情に関わっていたという話は流したはずですよねえ?ぼやかしたの、堕神討伐の経緯だけのはずですけど!


「そうですよー、だから分団長やってるんですけどね?」

 そう茶化したら、ほぼ全員にあ、って顔をされた。忘れられてたねこれは!

 でもそれだとすると、なんであたしが分団長拝命してるんだと思ってたんだこの人たちは?


「称号で決まったのかと思ってた」

 空気を読まずに質問したら、この回答が一番多かった。遠回しに表現されたけど、つまり裁定者として呼ばれたと思われてたわけですね!ぶっちゃけ今回はマジで裁定者、今現在この段階では、全然関係ないです!


「あーあーあー、聖獣の単語を冠する称号が二つもあるのが疑問だったんですが、麒麟様単体で称号一つ増えてるんですねこれ?」

 マリーアンジュさんがやっと把握した!と、そんなことを言い出した。確かに言われてみると、同系列称号が二つあるように見えるもんなあ。


「そうですよー、庇護者の方は麒麟くん専用ですね」

 実際あたし一人でじゃないとはいえ、ハルマナート国からマッサイト経由でここまで連れてきたわけですからね。なお実はフレオネールさんやシャルクレーヴさんにも似た称号が付いてたりするよ!あっちは庇護者じゃなくて保護者になってたけど!

 ……ってことは多分宿屋のフェリスさんにも付いてるな……?


 ともかく、今回の視察団、実はあたしは公的にはおまけ的な存在だ。ハルマナート国からも人を出さないと体裁的な意味でだめだよね、ってだけで引っ張り出されたにすぎないからね。

 何せ戦争当事者であった二国間の問題は、既に条約などが締結されていて、諮るべきことも特にないし。大体そのへんを弄らないとならない状況なら、王族は無理としてもちゃんと現役のお役人くらいは連れて来るに決まっている。

 まあ視察というか、食糧援助の流れの確認自体は必要な事ではあるんだけどね、それだけが目的なら、他国の一行のような華々しい顔ぶれは要らないんですよねえ……


 なので、ここからは完全に傍観者枠として、端っこに立つ。麒麟くんも興味深げにあたしの隣に立つ。いや待て君の立ち位置そこでいいの?


 かつては豪奢な装飾で飾られた謁見の間であった場所は、シンプルな礼拝堂の内部みたいな姿に変貌していた。装飾を剥がしとった痕を、外装は黄土色、内装は淡い緑の色漆喰で綺麗に均したんだって。所々に、これも漆喰で形作られた立体的な装飾もあって、殺風景とは程遠い、どこか清楚で、意外と厳粛さを感じる空間に仕上がっている。


 その上座に、以前通りの簡素な服装というか軍装のグレンマール王が既に待機しておられたので、全員中に入ったところで、速やかに礼を取る。割と華やかな服装の王族勢は立礼、それ以外は基本的に跪くのだけど、あたしは立礼。いや前王の頃から無礼講的な許可を正式に受けておりまして……うっかり跪くと、後で、許可出してあるのに、って文句言われかねないのだ。

 そもそもあたしもまだ異世界人三年ルールの適用内なので、どっちみち問題はない、ともいうんだけどね。同じく三年ルール組の三人組も、同じく立礼でいいんだけど、事前に相談していて、跪礼にしたそうだ。はいあたしが浮いた!まあいいや、今更だし麒麟くんも隣にいるし、そのもひとつ隣には行政府の制服姿の黒鳥もいるのだ。むしろこれ、あたしの地味めの服装も相まってサンファン側みたいになってるね!


「視察団の皆様、ようこそ遠方の我らが国までおいでくださいました。姿勢は楽になさってください。ああ、お初の方が多いですね。国王を務めております、グレンマール・アイオニアル・サンファンシュと申します」

 立ち上がったグレンマール陛下から、穏やかな、威厳とは程遠いけれど、よく通る存在感の強い声が掛けられる。

 というか発言の腰が低い。元宿屋の息子とはいえ……いや、あちらも実態は視察でなく査察だし、別の用件もある、と把握済みなのか。押しが弱そう?とリミナリス殿下が呟いた声が微かに聞こえるんですが、それは良しなのか悪しなのかどっち判定だろう。


「寛大なお言葉、恐れ入ります。私が今回の視察団の総団長、リミナリス・マツダ・フラマールでございます。よしなにお願いいたします」

 あ、ヨシ判定だなこれ。なんとなくだけど、そう感じる。

 その言葉を皮切りに、結成時の挨拶と同じ順番で副団長と分団長の挨拶。当然シメはあたしだ。アデライード様もなんか好感触っぽい感じの表情ですねえ。他の人は特に何か感情が動く感じじゃなかった。そりゃそうか。


「お久しぶりでございます。今回はハルマナート国分団長として訪問させていただいております。陛下におかれましてはご健勝そうで何よりです」

 あたしのことは相手も既知なので、普通に立ち位置の説明と再会の挨拶だけしておく。


「カーラ殿には、先年の折には大変世話になりました。貴方がいなければ、今ここに立つ私はいませんでしたからね。他にも懐かしい顔がおりましょうから、是非折を見てご歓談いただければと」

 当然相手も既知の知人というか恩人として返事をくれるわけで。よし、自由時間が出来たらカル君からかいに行くか!


「ねーちゃんだけ身内枠みたいな」

 サーシャちゃんが小声で疑問を呈する。


【実質身内みたいなものです。長旅につきあってくれた、僕の保護者ですし】

 麒麟くんもちょっと小さな声でそう答えている。


 その後は会食の席を設けるという話で、どうも立食パーティ的なものをお天気も良いので王宮の外、前庭のほうで行うという話。あ、これはランディさんがケータリングかますやつですね?

A:迎える側が儀、と言えるほどかしこまろうとしなかった。

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