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284.平穏な?誕生日。

めでたいんだから元気に行きましょう?

 正直ね、誕生日を祝うとか子供の頃だけだったよね、と、広々とした会場を、いつもより上手から見て思う。いやまあこの会場自体は、いつものダンスィずとの晩ごはん会の会場なわけですけど。

 いや、祝ってもらった事自体は結構最近まであったのよ?ただね、病気だったからね、誕生日おめでとう、というよりは、今年も一年どうにか生き延びましたね、のお祝いの方だったからさ……


 そんな訳で本日は礼装バッチリキメて、以前頂いたフェロニエールなんかも装備して主役として上手に立っているあたしでございます。礼装は以前仕立てたはずなんだけど、何故かお針子さん達とサクシュカさんとカスミさんが共謀して完全新作を作ってきた。薄いターコイズブルーの地に濃いグリーンとミントグリーンでつる草系の刺繍を施した生地の要所要所に、ピンクとクリーム色の薔薇が咲き誇るヒール丈のドレスです。まあ誕生日プレゼントですよ!と言い張られたので受け取って着用するしかないわけですけども。ええ、王都行きを急かされたのはこの礼装試着のせいでした……


「本当でしたら成人のお祝いでもありますし、トレーン丈も良いかと思ったのですけど、この国では問題ないですけど、他国ですと、平民扱いになる方はトレーン丈はそもそも着ないということなのでヒール丈を採用しました」

 何時ものお針子、ミケリアツィーシャさんの説明。あっぶねー?!裾引き摺る系着せられるとこだった!!無理!それは無理!!コケる自信しかない!というかですね、レガリアーナで確認したけどそもそも平民の場合、ヒール丈ですらなくていいので!マキシ丈の絹以上の品が一着あれば十分なんで!!!


「マキシ丈で普通に走り回れるのでしたら、こけることはないと思いますよ」

 にっこりと、心を読んだかのようにそう補足するミケリアツィーシャさん。おうっふ。顔に出過ぎているッ。


「ほんっとカーラちゃんはこういう時はすぐ顔に出るわねえ」

 ころころ笑いながらサクシュカさんにツッコまれたけど、事実なので反論が出来ません。ぐぬう。


 今回は三人組も礼服っぽいものを仕立てた。ワカバちゃんは成人祝いとして紫の濃淡を薄い生地を重ねることで表現した、マキシ丈のドレスがプレゼントされたけど、カナデ君は普通の既製品を手直しした物だ。というのも、彼、最近背が少し伸び出しまして。サーシャちゃんも明確に成長期真っ只中だよね、と、これも既製品ベースだ。成長途中できちんとしたものを作るのは流石に勿体ないでしょ、とはサクシュカさんの言だ。

 なおサーシャちゃんは可愛い系ドレスを断固拒否して、ダークブルーベースに銀の刺繍を脇に入れたハーフパンツアレンジのお子様ドレスだ。そういや普段もオーバーオールとか短パンだもんな。


「あー男装少女、このラインもフラマリア辺りならウケるかもしれませんねえ」

 ミケリアツィーシャさんが完全に趣味と実益の顔になっている。お仕事熱心なのはいいことですね。


「いや田舎の村なら普通の恰好では……いや素材は別としても……」

 散々抵抗しながらも相手が女性たちだから、と最終的にあきらめの境地で着せ替え人形状態になっていたサーシャちゃんのツッコミにも力がない。ベリショに切った髪に、今日はひと房、リボン付きのエクステが下がっているのがちょっとかわいい。


「ああ、それもなかなか良いですわね、そろそろ都市部に一回田舎風コーデを流行らせてもいいかな感は確かに!」

 そしてその発言をあくまでも前向きに提案として受け入れるミケリアツィーシャさん。これは勝てん……



 基本的に正餐会スタイルで始まった誕生日と成人祝いのパーティ。ワカバちゃんの成人も祝うということで、後者がメインという感じ。カナデ君も一緒でいいよー?とか言っていたけど、流石にまるっと一か月先はちょっと。そっちは村か城塞でのんびりやればいいじゃないですか。


「「カーラおねえさん、おめでとうございます!」」

 前日にフレオネールさんに連れられてようやく到着したシェミルちゃんとティスレ君にもお祝いのプレゼントを貰う。そうだ、二人の誕生日も後で確認しておこう。この世界、毎年の誕生日を単体で祝う習慣は元々なかったらしいけど、異世界人が楽しいイベントとして広めたので、今は農村とかでも普通にお祝いはするようになってるんだそうだ。ただ、このふたりは隠れ里の出身なので、誕生日を祝う習慣はないかもしれない、とカナデ君は言っていた。

 他の皆にもプレゼントを渡されて、それぞれ確認の後、一旦カスミさんにしまってもらう。そのカスミさんからも、これはあたくしと里の者から、と言われて、綺麗な紙張りの扇子を頂いた。以前カガホさんが持っていたのとは違って、絵具と金泥で描いた春の花と鳥の絵があしらわれた、豪華な絵柄のものだ。持ち歩く実用品というより、観賞用のお品っぽい?


「……カスミさんの祝いの品が大人げない……」

 それを目にしたサクシュカさんの台詞。おとなげない?


「うっかり里の者に相談したらこうなってしまいまして、ええ」

 流石にあたくしも当初はここまで張りこむ予定ではなかったのですけれど、と返すカスミさん。ああはい、イナメさん辺りが暴走しましたね?どうやらこの扇子、かなりヤバい金額のお品らしい。やはり観賞用、いやしまっておく一択な気がする……


 流石にこの国でこれといって大きな事績をあげていないワカバちゃんには、龍の王族勢も余り接触してこない。まあサクシュカさんは気安くあれこれ話しかけたり、プレゼントも渡したりしていたようだけど。もちろんあたしもプレゼントを渡した。コルンバ君召喚券、とか母の日の小学生レベルのネタも思いついたけどそれは一旦封印して、カルムス用連絡筒のサイズに合わせた仕様の便箋と封筒のセットだ。これは取り扱いの文具商が限られているので、そこの連絡先も添えてある。女子の文通なんてどうせ確実に頻度が上がるタイプの奴だからね。

 消耗品セットにしたのは、カナデ君とサーシャちゃんがペンを贈ると言っていたからだ。あとあとまで使うものは、より近い身内からあげるものだ、とあたしは思っているので。


「そういえば、個人の成人って普通ここまで祝うものです?」

 フラマリアでは年一回、王都で集団成人式があるって何かの本で見たけど、ハルマナート国の方でどうだったか、そう言えば聞いていないな、と思いながら聞いてみる。


「私達に関しては祝うけど、国民的には地域による、としか言えないわねえ。村だと一年以内に成人した人全員集めて派手に祝うけど、街だと家単位が多いとは聞いているわ」

 サクシュカさんの回答はもっともなものだ。


「貴族制度のある国だと、一~二年に一回デビュタントを行うところもあるけど、我が国では需要がないからねえ」

 そう続けるのはエスティレイドさん。でででデビュタントってあの真っ白なドレスと長手袋で集団で踊るあれ?いやあたしには関係ないからビビる必要はないんだけど!

 まあよくよく聞いたら、開催している国の王様へのお披露目会かつ集団お見合い的な奴で、踊りはするけど真っ白なドレスで統一、とかする国は特にないそうだ。というか元々そう言う習慣が貴族制の国にあったのを、あーこれデビュタントかー、と異世界人が解釈したので、言葉だけ上書きされたものらしい。


 そんな感じで、終始極めて穏やかにパーティは無事終了。ダンスとかは特になかったので!そもそもなんでこんな王城で王族ご一同様に祝われる一般市民なんて構図になったの状態ではあるけど、終わった事なのでそこはもう考えない。


《一般……?明らかに逸般市民だと思いますが……?》

 あのぅ、一蓮托生のシエラさんにそれをツッコまれるのが一番きつい気がします。


 部屋に戻って、頂いたものを検分したら、予想以上に大変なことになっていた……聞いて驚け、カスミさんの扇子が金額トップじゃなかったよ……?

 あとマグナスレイン様の贈り物がですねえ……これ、鱗だよなあ……?綺麗に磨かれた、余り大きくないけれど、艶やかな黒い鱗を中心に配置した、ペンダントトップなんだけども。


「こちらの龍の方も意中の方に鱗を贈る習慣があるのですか?」

 カスミさんが恐ろしいことを言い出した。カスミさんが言うのはどうやら真龍の習慣らしいのだけども。


「うーん、流石に違うんじゃないかなあ。サクシュカさんも以前御守りとして自分の鱗をお世話になった女性にあげていたし、その類な気はする?」

 鱗の半分は麒麟くんが持ったまま取り込んでしまったけど、残りの半分はどうしたんだったか。サクシュカさん、麒麟くんの分も回収するつもりだったみたいだし、そちらは回収したんだったかな?

 カル君もサクシュカさんの真似をして御守り作ってたけど、あれも結構綺麗に形を整えて磨いた感じだったしなあ。


「ああ、御守り、ですか。なかなかにご利益がありそうですわね」

 納得顔のカスミさん。そうねえ、サクシュカさんの鱗の半分は、麒麟くんには結構な助けになっているらしいから、何らかのご利益はあるんでしょうけども……

勿論最大額ぶっこんで来たのは陛下です。

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― 新着の感想 ―
もうカーラさん、ほぼほぼ家族待遇なのでは(;^ω^)ホンニン_ムジカク
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