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246.巨龍と海軍。

なおハルマナート国に海軍はなかったりする。

 周囲の軍船を威圧するように、あたしたちの船の真上に静止するマグナスレイン様。でも確か風属性持ってないから風による揚力じゃなくて、純魔力ごり押しで飛んでるはずだから、ひょっとして、あんまり長時間の滞空は宜しくないのでは?


「飛んでるのに飛んでない、ような……なんだこれ?」

 マグナスレイン様の龍の姿は初めて見るであろうサーシャちゃんが怪訝な顔だ。カナデ君がわーすっげえでけえ!かっけえ!と呟いてるのも聞こえる。そうじゃろそうじゃろ?ワカバちゃんは大きい。と一言だけ呟いてそのまま見入っている。

 ダーレント元公子はガチの真顔で、無言で上空を見上げているけど、船員さん達はおー!将軍様だー!などと呑気かつ現金なものだ。


「魔力のゴリ押しで飛んでるらしいからね、風圧とか無縁?」

 以前サクシュカさんに聞いて、本人にも肯定された情報を伝える。隠せと言われたことないからいいよね。ちなみに他の龍の人が頭の上に来ると、そこそこの風を受けることになるけど、マグナスレイン様だとそれがない。ある意味快適ではある。いやまあそんな機会はそうそうないんですけどもね!


「ゴリ押しと言っても、魔力消費自体はそこまで多くなさそうだから、数時間くらいはこのまま居そうだね」

 ランディさんが追加情報を。へー、意外とそんなものなんだ。


【見れば其方、第三王子のようだが、何時から海軍の指揮官になぞ収まった?】

 マグナスレイン様から新情報。へー、第三王子。なんかすっごくイヤーな予感がしてきたなあ。


《あーあーあー、レガリアーナの第三王子殿下!!お顔は存じませんでしたから気が付きませんでしたわ!サンディアス・モディ・バシレウス・レグルセン殿下ですね。……なんとも噂通りの御方ですこと》

 一気に言い切ってでっかい溜息をつくシエラ。噂通り、これが、噂通り。つまり、所謂ダメ王子じゃん!!!


 そう言われて改めて偉そう君こと第三王子を見ると、緑がかった金髪に、青い瞳。まあ判りやすい感じで王子様顔タイプっていうんですかね。赤くなったり青くなったりな表情で全部台無しだけど。まあ色合いとしては典型的レガリアーナ人だ。これは王家も国民も、大体そんな感じが多数なんだというのは、以前マリーアンジュさんに聞いたことがある。珍しくもなんともないんですよねえ、って。

 実は淡色エルフ族も多い地域だったりするので、レガリアーナってのはほんとに緑みがかった金髪だらけなんだという。ライゼル界隈も金髪は多いらしいけど、あそこの金髪は緑がかった色味の人が殆どいないので、また雰囲気が別だとか。


 そのアホ面晒して立ち竦んでいる第三王子を、数人の集団が背後から拘束して、猿轡をさっくりかましてあっという間に連れ去る。なんかえらく手慣れてんな?!


「ももももも、申し訳ございません!直ちに!撤収!致します!!こ、この無礼の詫びは後日!必ずや!!」

 その集団に混じっていた、一人の結構なお年の人物が、よたよたと舷側に駆け寄ってきて、そう述べたところであだだだだ、と声を上げてへたり込んだ。あ、腰やって、恐らくは寝込んでたっぽいな?この人の方はだいぶんとまともそうだし、お情け程度に〈治癒〉投げておこ。


「大盤振る舞い?」

 あたしの魔法を見たサーシャちゃんが首を傾げる。


「いや、今の、多分本来の指揮系統の上の人、のほうが明らかに第三王子とやらよりマシそうだったから」

 簡潔に答えておく。それでも最低限の魔力でしか飛ばしていないから、完治はしてないよ、なんせ腰だし。


「そもそもさっきまであの偉そうなのがやりたい放題だったのに、なんで突然立場が逆転したんだ、あれ?」

 アンダル氏が首を傾げている。まあ気持ちは判らんでもない。他の人たちもややぽかんとした感じだし。しょうがないから解説しておこうねえ。


「まずここは公海上で、あちらもこちらも国内法の適用外地域。これが大前提ね。

 で、彼は第三王子ではあるけど、多分本来なら海軍の指揮権は持ってない。さっき撤収しますって宣言したのが恐らく本来の司令官、若しくは艦長ね。

 さっきまではあたし達民間人と自国の軍しかいなかった上に、司令官格の人が寝込んでたから第三王子君はえばりたい放題だったけど、国こそ違え、現役の将軍で女王様の兄っていう、地位的な意味で完全に上位にあたるマグナスレイン様が現われたので、王子君のやりたい放題タイム完全終了、という流れで理解しとけばいいと思う」

 ざっくり説明したつもりが、なんか妙に長くなったけど、流れとしてはこれで合ってるはずだ。このパターン自体は、あたしは二度目の遭遇だしなー。


【恐らくその推測で正しいとは思うのだが……そもそも何故そなたたちが狙われたのだ】

 不機嫌そうなマグナスレイン様の声。まあマグナス様達はあたし達がなんの為にここまで来てるかは多分把握してるだろうし、結果も一応報告が行ってはいるだろうけど、詳細は知らないもんね……


「根本的には、あちらのお国で下った託宣が原因のようですが、どうも、制止の言葉からするに、貴方の言うところの盆暗君がその意味を曲解していたみたいですね」

 そそくさとあたし達の包囲を解いて下がっていく魔導軍船を眺めつつ、大雑把にそう答える。


「あーなんかスタンドプレイしていいとこ見せようとして滑るタイプかーあれ」

 カナデ君が大変辛辣な事を言っているけど、何か似たような心当たりでもあるんだろうか。


【むぅ、では託宣自体は事実である、と?】

 マグナスレイン様が答えながら、なんか唸ってる。まあ神様のいない国だからねえ、ハルマナート国は。託宣には親しみはなかろうね。


「ハルマナート国でならともかく、真っ当な国神のいる国で託宣を虚言したら、叱られるじゃ済まないですから」

 ここはややぼかして答えておく。ぶっちゃけた話、国神が真っ当であれば、あのボンクラ君の曲解もアウトの筈なんだよねえ。というか、恐らく実力行使に出た時点で、アウト判定が出ている、そんな予感はしている。


「まあ流石に状況的に神滅まではないと思う……んですけどねえ……」

 正直に言うと、ここに関してはちょっと断言しきれない。あたしの結界術とワカバちゃんのスキルが常人離れしてたから普通に無傷で切り抜けてるけど、そうじゃなかった場合を考えられてしまうと、アカン気がしてきているあたしであります。


《そう、ですね……レガリアーナのレガリオン神は、滅多に実行されませんけれど、神滅はお使いになられますわね……》

 そっかあ。まあでも、第三王子君に関しては、完全に自業自得だからなあ……


(あのあんちゃんも変な臭いしてたわねえ)

(ここまで臭うんだと、船の人もなんか判断力とか?やられてそう)

 鶏たちが気になることを言い出した。臭い?前回臭いに触れてたのって、確かフラマリアの?


(そうあれー。同じ臭いだと思う)

(ねーさまが結界張ったら判んなくなったけども)

 コココ、と呟きながらそう返事をしてくる鶏たち。マジかー……


【む?その鶏たち、ついに幻獣化したのか……言われてみれば、あ奴、ちと変わった匂いがしておったな?】

 他の人にも伝えたら、マグナスレイン様も臭いがした、と言う。クロ、かなこれは。


「その臭い、鶏たちによれば以前遭遇したライゼルの手の者が発していたものと同じらしくてですね」

 解説してて思うけど、これ多分レガリアーナ、行かないとだめ、だな?臭いの件も出て来ちゃったし、そもそも正規の託宣をちゃんと知らなくちゃいけない予感ががが。

 そう告げたらあたしの顔をじっと見ている気配のマグナスレイン様。うん?


【止めたとしても、行くのだろうな、君は……】

 どうやら今回も判りやすく顔に出ていたらしい。たはは。


「取りあえず正規の託宣の内容次第ですかね……そもそも、今回の船員さん達救出案件の方なんですが、ちょっとだけ、レガリアーナにあった物が関わりがあったらしく、あちらの託宣が穏便な内容なら、その辺の説明くらいはしないといけないかなあ、と」

 一応らしく、とは言っているけど、実態はほぼ確定なんだけどもね。


 そのあたしの答えを聞いた巨大な黒龍に、はぁ、とため息をつかれたのは、何故なんですかねえ?

何ででしょうねえ……

マグナスレイン様の飛ぶ時の魔力消費は魔力称号に二つ目のプラスが付いた頃から別の称号の効果で軽減されていて、今は2/3消費かな。流石に半減まではしてない。

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