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Side:三人組 A Little Unlucky

サーシャちゃん回。一人称。

2話同時更新なので新着からの方は一つ前からどうぞ。

 ほら、まただ。

 一匹だけ俺の手元に近い、そのくせ絶対に俺の手には触れない場所に紛れ込んだ、毒フグ。


 どうにも、この世界に来てから、ちょっとした不運が、俺の周囲でぽつぽつと、起こる。

 季節ギリギリ外れの、そのくせ特大の嵐とか、紫に染まるキノコとか……いやあれは俺も喰らってるから除外か。むしろ、その後の近所の村の魔物被害のほうだろう。村といえばフラマリアの調査の時のトロットだっけ、あそこもさあ。ここまでの全てで、一度たりとも死人が出た事がないのは、本当に幸いではあるんだが。

 元の世界にいる時は、基本的にそういうちょっとしたバッドラックってのは、俺が全部引く役回りだった。それこそ、ししとうの辛い奴が全部俺の皿に来るとかいう地味でしょっぱいのから、居眠り運転の車が突っ込んでくる奴まで。

 まあ当時から身体は鍛えてたし、ひと様より反射神経も感知能力も高かったから、突っ込んだ車は華麗に避けてやったが、ししとうの辛い奴はほんとにマジでハラペーニョどころかジョロキアじゃねえのかってレベルの激辛が混ざってて、食った瞬間のたうち回る羽目になった。

 いや冷静に考えたら、なんで自動車よりししとうのほうがダメージでかいんだよ!?

 とはいえ、元の世界が無くなってしまった今、その件は永遠に謎のままだ。ああでも、この間、推定ししとう、五世代辛いのが出ていないという触れ込みの種を貰ったというか預かったから、育てたら何か判ったりするかもしれないなあ。


 まあ、今のこの世界において、こうなる原因は判ってる。[A Little Unlucky]という、いつの間にか生えていた称号だ。称号効果の確認なんていう、記憶にない項目が何故かUIに増えてたから見てみたら、『周囲の人間に一つずつ、ちょっとした不運を押し付ける』なんてクソ迷惑な解説が書かれてたんだよ。何の嫌がらせだコレ?

 ただ、いつの間にか生えていた、というのは正しくない。この称号の今セットされている場所は、どういう理屈でかズレちまってるけど、本来なら、UIの外側で、俺の権能の一つがセットされていたはずのブロックだ。恐らく、世界を渡る時の無茶と、この世界に対応するためのローカライズで、ずれたうえで矮小化され、こんな、ちょっとだけ迷惑な称号に化けたんじゃなかろうか。


 この世界の称号効果ってのは、本来ならフレーバー程度の、あるかないか判らない程度の効果しかないもんだ、というのが基本情報だ。これはカーラねーちゃんも言ってたから、間違いないだろう。

 ただ、カーラねーちゃんの話の方には続きがあった。称号は最大魔力量を参照して効果を発揮する、と。そして、異世界人は一般的にこの世界の人間より魔力が多い。ワカバは真龍級、俺やカナデに至っては、魔王級、とかいう、これまでに異世界人ですら一人しかいなかったという魔力量称号持ちだ。まあカーラねーちゃんの方が明らかに魔力量多いんだけどな!あの人隠蔽してて魔力称号とか見えねえそうだけど。俺?同一UIの二人と自分の称号以外は見えないんだよ。だからその件に関しては、伝聞だけだ。真龍の白い兄ちゃんがそういうの得意で、料理談義の合間とかにたまに教えてくれるんだよな。

 そういやゲームでゲットした称号も、あらかた残っていたけど、そっちは流石に何の効果もなさそうだ。ただ、効果がないはずの割に、カナデがゲームでゲットしていた魔王称号と、俺のUI外称号の一つは、ねーちゃんや現地民にはブランク称号に見えるらしい。俺の方はそもそもUI外だから、枠が見えてるの自体がおかしいんだけど、なんでだろな。


「サーシャどしたの、難しい顔してさ?」

 カナデが鶏たちと一緒に俺の部屋まで遠征してきた。この鶏たちも大概カナデにべったりだなあ。命の恩人ではあるんだろうけど、っていや、鶏たちの負傷って、どれも命に係わるような怪我でもなかったよなあ?しいて言えば茶色い方がちょっと傷が多かったけど、明らかに向かい傷だったからなあ、雌鶏の癖に。気が付いたら魔力を持っていて、まではいいけど、この茶鶏、最近じゃ魔鼠っていう小さいけどガチ魔物まで一撃で仕留めやがる。何処に向かうつもりなんだろうな?

 まあ、鶏の考えてる事がスキルで判るというカーラねーちゃんによれば、自分たちは相変わらず鶏だよ、と主張してるそうだけど。


「難しい事は考えてないが、称号効果を眺めてた。リトルアンラッキーとか酷い効果が過ぎる」

 正直に申告する。こういう時に変に誤魔化すと、何故かこいつは見抜いてくるからなあ。


「ああ、このおもしろ不幸称号かあ。ちょっとした不運で済むならむしろラッキーな気がするな。しかも一個ずつってことは、一人一回しか喰らわないんだろ?」

 カナデもワカバも、俺同様、自分達と共通UIを使用しているという条件であれば、人の称号が見える。つまり俺たち三人同士でだけ見えるって訳なんだが。その機能で俺の称号を確認して、カナデがそんな風に言う。

 おもしろ不幸、なんて表現する奴がいるとは思わなかったが、確かに一人一回でちょっとした不運、レベルなら可愛らしいっちゃ可愛らしい部類ではあるのか……実際、ただの一度も死人は出ていないし、そもそもセットされてたはずの本来の権能のほうなら、物騒って言葉じゃ済まされない可能性の方が高いんだよなあ……


「称号効果の部分に書かれてる通りで、それ以外の挙動をしないなら、確かに一人一回、なんだろうなあ」

 よくよく見たらなんか違う事が書いてないだろうか、と凝視してみるが、特に変化は……あれ、追記がある。なになに……『なお一度押し付けられたものには二つ目を押し付けることはできない』?わあ、ほんとに一回こっきりか。周囲の人間全員に配ったら打ち止め?

 ……いや、どういう理屈でそう思うのかは判んないけど、白いにーちゃんとカーラねーちゃんには配れない気がする。あの二人、俺のスキルとかでも、あんまり通じないイメージしかない。


 称号効果をチェックする画面を起動したまま、カナデを見る。あ、配布済みになってら。キノコの件あたりだろうか。鶏たちは…へえ、対象外。人間にしか配れないんだな、これ。


「何?配布済みかどうか見えたりするの?」

 カナデの顔を見つめてたら、見事に言い当てられた。カナデってたまにそういう妙に鋭いとこがあるなあ。


「よく判ったな。安心しな、お前は配布済みだ」

 そう応えたら、カナデはびっくりすることもなく、ただ、あはは、と笑った。


「だろうね!多分ワイバーン激突とか、絶対迷子になる場所に落下とか、そこらへんが配布内容だろなーって思ってた!」

 いやまて、それはちょっとした、に含めていいのか?と思ったけど、あとでワカバを確認したら、やっぱり配布済みになっていた。ワカバって慎重な性格だから、そういうちょっとした不運に遭遇する、ってのも正直見たことがないから、やっぱ最初の落ちた場所が、そうだったのかねえ?

 なお白いにーちゃんは配布不可だった、そういや真龍って人間じゃねえんだから、間違いなく対象外だな!

 そして、カーラねーちゃんに対しては、スキルが足りない、と表示された。

 は?そもそもこれ、称号効果であってスキルじゃないだろ?それとも、スキルのどれかが実行時に参照されてる?いや、それもない。称号効果の確認時にも称号側で何か検索はしている感じだけど、、スキルのほうが動いている形跡は一切ない。


 それだけでも大概なのに、城塞のヌシのにいちゃんが、何故か配布不可扱いになっていた。にいちゃんの親族のサクシュカねーちゃんやエスティにーさんは配布済みになってるのに、だ。


 うーん、やっぱ本来称号じゃなかったものが変換されてるせいで、挙動が不安定なのかねえ?

 まあ、この称号効果で死ぬ人は絶対に出ない、と確信は持てたので、よしとするか……

 なお実際には村々の被害とこの称号は無関係と言うオチ。毒フグと茸と落石発破はこれだけど。そう、実は本人にも一回だけ配布されるのだ。

 対カーラさんの場合、あの光極大という属性の壁を突破しないと届かないんで……

 あとカナデ君は別の不幸称号を持ってます。『好奇心が猫を略』、つまり茸は自前の。

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