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194.やらかした奴の末路?

昔の件と、今回の件。

「ところで、その真龍倒しちゃったっていう酷い人、最終的にどうなったの?」

 カナデ君が尋ねる。そういえば、あたしもそれ、聞いたことないわね?


「人類に害を与えるでもない真龍に喧嘩を売った罰で、魔力を封印されてどこぞに放逐されたという話だね。魔力封印の段階で僕らには行方が辿れなくなるから、詳細は不明だよ。恐らく、あいつが報復しに来ると怯えた輩でもいたんじゃないかな?」

 実際にはそんな手間暇かけて報復なんて考えもしないで、ただ負けたことに凹んでたけど、とランディさん。


「うっわえげつな、っていやでも結構昔の話だから、今ほど魔法陣文化は発達してないのか」

 サーシャちゃんの感想。自称勇者様より前の時代だから、八百年よりは前で、ランディさんが生まれてるから、千年よりは最近、か。


「そうだね、自称勇者時代の、本当に直前の話だよ。僕がまだ二百歳いってなかったからね」

 齢千歳の真龍様がそう言って頷く。身体的にはほぼ成体だったけど、まだヒヨッコもいいところ、だったらしいよ。

 真龍の成長というのは、個体差が激しいのだとかで、実はその時代にまだ幼体だという真龍もいたそうな。今は立派な大人で、真龍族としては実年齢最年少のランディさんより三百年ほど年上なんだそうだ。

 ランディさんは成長が早すぎて、真龍のくせに真っ先に寿命で死ぬんじゃないかと心配されていたらしい。あー、気持ちは判る。なまじ短命種族知ってると、そういう発想になるよね。

 実際には、普通に寿命の枷のない存在として確定したので、そんなことにはならないそうだけど。

 なお真龍族は現在十体ほどしかいないらしい。まあ寿命がないけどご飯は食べる存在ってそういっぱいいたら困るよね。ちなみに神々はそれより多いけど、彼らは基本食事は摂らなくても飢えることはない。飲食は、それぞれに捧げられた供物を楽しむ程度だそうだ。

 うん、実は国神以外にも、ちょこちょこ神様はいる。目立たないし、あんまり人前に出ないし、干渉もしてこないけど。最北方の氷原エリアの氷狼族という半精霊みたいな聖獣種族を統括しているのもそういう小神だそうだし。

 ランガンドもそういう辺りで落ち着いておけば、あんなえぐい事態は起こさなかったんだろうになあ、と、その話を聞いた時には思ったりもしたね……



 一泊して翌日は、まず皆で官憲……警邏詰め所に赴きます。ええ、昨日やらかしたおっさんの件ですね。ワカバちゃんとサーシャちゃんは行かなくてもいいんだけど、二人で留守番もなあ、と付いてきました。まあ別に人数が二人増えるくらいは問題はない。ちゃんと事前に多分全員で行くと言ってあるし!

 で、出向いたら、ほぼ出会い頭におっさんの親だという、随分と身なりと品のいい、ザ・執事!って感じの従者を連れた御老人に平謝りされた。ええとこの坊ちゃんの成れの果ての引きこもりの尻叩いて魔法学校通わせたらこんなことになったらしいよ。なんたる。っつかこういう人達でも子供の教育失敗するんだ……

後で聞いたら、四人兄弟で一人だけ、こうなったらしい。後の人は普通どころかむしろ優秀な人達らしい。あれか、出来の悪いコンプレックスで世を拗ねた系か?


「この世界にもヒキニートいるんだ……」

 サーシャちゃんがそう呟いて、あたしが何か言うより早く、本人のいるとこで言うな、と、ワカバちゃんに抓られていた。おおーい、それ本人の前で言うの逆効果では?いやまあ事実だし、やらかした奴相手だし、まあいいか……

 ラノベ文化流入のせいで、そういう単語も結構通じるからね、下手に使っちゃいけません。


 出来心による、というかそもそも本人は善意のつもりで、かつ初犯で、死者も出ていない、という事で、刑罰自体は比較的軽いもので収まるらしい。蟄居だと罰にならなさそうだから、半年ほど軽い労役刑、といっても町の清掃奉仕とかその程度で済むそうな。というか、現場から逃げたせいで軽懲役になりました!パーフェクト自業自得!

 ただ、賠償額が割とヤバイことになっていた。商談に向かう途中の人がいたので、事故被害とは別個で遅延損害金を請求されたのと、それとは別の人が持っていた商品が破損したので、その賠償、そして全員分請求された上級及び中級治癒師への報酬額がですね。ええ、うっかりしてたけどあたしが上級、カナデ君もリファイン済みの〈回復〉を使うようになったから中級なんですわハハハ……

 ちなみに級数判定は称号閲覧だから不正は不可能だよ!というか上級に今回の治療活動でついに+が付いたよ!!見てくれた係員さんに、ぷらすってなんですか?って震え声で聞かれました!知らない!でも仕様!

 ちなみにこの称号確認係、巫覡の才があっても魔力が足りない系の人の最人気就職先だそうだ。ノーティスさんも一時目指してたというか、あの人最初の就職がそこだったのを、何故か情報系に引き抜かれたクチだそうですよ。


 なお、ランディさんも書面を見た瞬間あ。って声が出てたから、多分クラス報酬上乗せの規定の存在を綺麗に忘れてたんだと思う。そういうとこも超級ェ、と言うべきか、真龍……となるべきか。

 ちなみに個別の遅延金請求とか物品破損への賠償は、治癒師報酬に回る分とは別だ。治癒師報酬に回るのは、事件事故に遭って怪我をした、という事態への賠償各種、つまり治療費と予期せぬ苦痛を受けた事に対する慰謝料のほうね。システム上は慰謝料の方だけ自分で貰うこともできるんだけど、今回は誰も選択しなかったそうだ。

 あたしはともかく、カナデ君たちはこれからお金は一杯必要になるからね……サーシャちゃんの計画を後押しするなら、いっぱい貯金して貰わないとね!

 と言う訳で、そこらへんはビタ一文まかりませんの姿勢で行くことに決まっていたんだけど、うん、この金額は、流石にちょっとやばい。分割払いを言い出されたら受け入れる方向性で!


 親御さんに各種損害賠償も含めて全部一括で支払って貰うことになりました。マジか。

 幸いこの国はハルマナート国の金融取り扱い機関と連携があるので、そちらの口座に入金してもらう段取りになりました。ああ、貯金するって言い出した時に、三人組の分の口座あっちで作っておいて良かった!!


「ねーちゃん、先見の明……それも巫女さん技能?」

 サーシャちゃんの疑惑の目。


「違うわよ!カナデ君が中級覚えたから、絶対必要になるのが判っていただけよ!」

 これは本当。中級がピーク帯である他の魔法使いたちと違って、治癒師だけは、中級以上になると、ただでさえ少ない数がマジで激減するので、等級報酬が跳ね上がるのじゃよ……そんなに報酬上げたら、一般民が依頼できなくならね?と思ったら、一般依頼の場合、等級報酬は基本国から出るんだって。なので各国が健康と事故対策に本当に力を入れているのには、そんな理由もあったんだねえ……なお今回は原因が事故とはいえ人為的なもので確定しているので、全てやらかした人持ちになりますね。

 もちろん野良で、等級報酬は一切気にしないで働く治癒師もいるそうだけどね。そう言う人は数をこなして自分の必要なぶんの報酬を得ているようだ。そして頼られ過ぎて忙しくて寝食以外に報酬使う暇がない、なんて本末転倒な話もたまにあるらしい。

 あたしの場合はハルマナート国で従軍治癒師登録をしているので、等級報酬はほぼ何処の誰が相手でも、登録証一枚出せば、確定で出る。カナデ君は一応未成年かつ野良扱いなので、等級は任意。今回は公的機関で等級確認されたので、彼にも出るよ!

 これは実はあたしはカナデ君達を拾うまで知らなかったんだけど、異世界人の成年は、出身世界の法に従うんだそうだ。カナデ君達は十八歳成年の国にいたそうなので、成年は来年ですね。

 あたしの場合、身体的には確か十七歳なんだけど、現地民でしてね、この身体……出身国主義でいうなら、やっぱり来年が成人?ハルマナート国式だともう成人だったかな。ナカノヒトは出身地の成年なんて、とっくに過ぎてるけどね……。


「貴方方の年齢で治癒師、しかも中級や、ましてや上級とは、素晴らしいことです。賠償云々を抜きにしても、後援したいくらいですね」

 親御さんがそんな風に言ったけど、流石にそれは御遠慮願います感。後援されるってのは、囲い込まれるのとほぼ同義だからねえ。カナデ君もそれは困るかなあ、と言っていたので、そこには気が付いているようだった。


 やらかした息子の方は、勘当されて刑期明けには処払いだそうだ。地元に一生帰れない奴。そのくらいしないと更生は無理って判定になったらしい。まあまるっと自業自得だしなあ。

 丁度いいから一般常識でも勉強すればいいんじゃないかな……

お金は必要だがパトロンは要らんのです。

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