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173.ハルマナート国への帰還?

めしてろって程じゃないけど食べ物回。

 翌日は乗合馬車で、港まで。乗り継ぎが一回あって、それがお昼休憩も兼ねている。

 朝ごはんは普通にパンとベーコン焼いたのと目玉焼きとサラダ、みたいなメニューだった。

 まあお宿も普通に寝床はベッドだし、食事も基本はテーブルセットで戴く感じだから、御夕飯の和食風のほうが浮いていたと言えなくはない。


 お昼はまたもや屋台で買い食いしました。宿場町とは味付けが地味に違って、これはこれで!


「やっぱ旅の昼飯は屋台だよなー!この世界素材が旨ぇからありがてえ」

 サーシャちゃんがご機嫌で焼いた肉串を頬張っている。塩とハーブで味付けしてあって、実際美味しい。肉串はどこの国でも大抵屋台にあるメニューだけど、屋台ごと、国ごとに塩以外の味付けに違いがあるので、飽きがこない。肉の種類もさまざまだしね。この国は羊と山羊と野鳥肉の屋台がそれぞれあった。今食べてるのは羊、野鳥も美味しかった。山羊はお腹が足りませんでした!サーシャちゃんは食べてたけど。


「山羊ってもうちょっと癖が強いかと思ったけど、うめえなこれ」

 サーシャちゃんがお代わりに選んだ山羊串を食べて感心している。


「下ごしらえが大事なんだよ!うちの秘伝だから教えらんねーけどな!」

 屋台のおっちゃんが、ガハハと笑ってそう言う。成程、下ごしらえかー。

 実際地元の人の訪れる回数が野鳥串の店より多いので、人気店なんだろうな。


 乗り継いだ馬車で夕方には港に着く。案外近いんだな、港。ああでもマッサイトに最初に入国したのとは違う港だわ、ここ。


「帰りの便がまだ出ないので、今日はここ、ガッケージで泊まって、明日船でホンハイに行って、そこでもう一泊になるね」

 ランディさんがそう説明してくれる。ホンハイが最初に入国した時の港だ。ワイマヌのぬいぐるみを山盛り売ってたところ。

 春には混んでいたハルマナート国行きの船も、この時期は減便こそしないけど、混みあったりはしないので、普通に手配できたという話だった。問題は天気だね、とランディさん。


 翌日は普通に、漁船よりはでかいかな、くらいの船でホンハイ行きだ。船酔いする人がいなかったので、一安心。あと港町なのでガッケージも魚が旨かったことは力説しておく。

 一夜干しとか干物の美味しそうなのがあったのと、干した昆布とワカメっぽい海藻もあったから、いくらか買って、ランディさんに預かってもらった。三人組も買ってた。奴らの収納は時間停止も自由自在だから、生ものも平気でもりもり買ってたよ、羨ましい。


「普通に干した昆布が買えるのはいいな」

 料理もするらしいサーシャちゃんがにこにこしている。


「そこはそれ、異世界の先達たちがいろいろ頑張ったからね」

 その時代も知っているランディさんがそう言って微笑む。


 二千年近く異世界からの召喚を繰り返していた、というけど、最初の頃は人の確率は低くて、幻獣の類だったり、はたまた普通の植物や動物だったり、していたのだそうだ。

 そういった足りないものがある程度確保されてから、人の召喚が増えていったのだという。

 ……ホントにハコと基本の人各種しか作ってなかったのか、ここのズボラ創世神……?


 そうして召喚された人々が、協力したり反発したり、ある時は正しい道を、ある時は誤った道を示しつつ、今のこの世界があるというわけだけど。

 いやほんと、召喚された側から見ると、過程がろくでもないな。この世界の成立と継続に一番近い行いを続けているのが、あのライゼル国だという残念過ぎる現実。まあ今あの国を動かしている者の本質がまさにその創世神だった奴なんだから、当然といえば当然なんだけど。



 問題は、ホンハイに着いた翌日に発生した。

 ええ、天気がね!曇天通り越して雷雨!嵐!宿から出るのも無理だったよ。

 船は当然欠航です。こんな天気で出航なんて、高速魔導船でも無理だそうだ。

 というのも、この世界の嵐って、以前聞いた属性乱気流程ではないそうだけど、ある程度の属性力を帯びていることが多いのだ。魔導船はその影響で挙動が狂う。普通の船がひっくり返るところ、航路が大幅に狂ったり機関が一時止まったりする程度で済むとはいうけど、それでも、わざわざ出航する理由なんてない。

 この地域ではこの時期と真冬はこういう嵐がちょいちょい発生するので、欠航が増えるのだという。ハルマナート行きなんて、週二回しか便がないのに二便欠航、なんてことすらあるらしい。

 まあ元からそういう季節があるのは判ってるので、宿の中の娯楽設備はびっくりするくらい整っていて、暇つぶしはお任せあれ状態だ。流石に漁船も出ないので、宿のごはんから生魚料理系は消えますが、まあそれはしょうがない。


「これあれだな、前日と初日に刺身食えただけラッキーなやつだな?」

 カナデ君が、焼いた干物をもぐもぐしながらそう言う。全くもってその通りだと思うわ。そして恐らくガッケージ足止めだったとしたら、暇を持て余した可能性のほうが高いから、本当に運が良かったのだと思う。


「そうねえ、お刺身って塩で戴いても美味しいのねー、でもお醤油とかお味噌ってどこかにあるのかしら」

 ワカバちゃんが、異世界人おなじみの調味料の話を口にする。ちなみに魚醤は結構あっちこっちで作っていて、内陸部でも手に入る。あれはあれでいい味わいで、好きなんだけど。


「〈発酵〉持ちは大体酒造りに行ってしまうから、存在しない訳じゃないが、味噌と醤油と鰹節はあまり売っているところを見ないねえ。この世界、生物の分解者層が他の世界の百分の一も居ないから、自然に頼ることもできないし。作っている人たちも自家消費用が殆どだそうだ」

 恐らくは、かつて自称勇者様とその問題にも取り組んだんじゃないかな、ランディさん。すらっと鰹節まで出てきたあたり、それっぽい。


「あー、かつぶしもカビが必要だっけ、あれ」

 干し昆布に喜びを露にしていたサーシャちゃんがげっそりした顔になる。そうねえ、最終製品にするには、必要な過程だった気がするわね?なんか調べた記憶自体はあるわ。なんで調べたのかは忘れたけど。


「なのでこの世界だと鰹節自体はあるが、煮沸燻製日干し、の行程止まりだから、ええと、荒節、というのだったかね?そこらへんまでだ。なまり節のほうで良ければ、この後行くレメレには売っていたよ」

 荒節はフラマリアまで行かないとないかもなあ、とランディさん。


「フラマリアってハルマナート国の北西側だっけ」

 頭の中で覚えた地図を思い出しているような表情で、カナデ君。


「そう、この世界で最も異世界人の文化影響が強い国だね。次点がこれから行くハルマナート国だけど、流石に鰹節はあまり出回ってなかったような」

 最近あまりレメレ以外に行っていなくて判らんな、とランディさん。


「あー、民間での需要は知らないですが、城塞の備蓄庫に煮干しと荒節はありましたね。出発前の在庫がまだあるなら、そろそろ食べちゃわないといけない時期だった気がするから、帰ったら聞いてみるわ」

 転移スタンピード襲撃であれこれあった加減で、備蓄庫の中身も結構減らしてたから、まだあるかどうかは謎だけど。賞味期限が近かった気がするから、あまり好んで使われなくて残ってる食材だろうし、恐らくあるんじゃないかなあ。

 いやほら、龍の王族の皆さん、挙って肉スキーだからさあ……イードさんですら、そこは例外じゃなかったのよ。まあ食べる量は人並みだし、魚も出されたらきちんと綺麗に食べる人だけどね。


「荒節でもあるなら御の字!味噌汁なんて贅沢言わねえ……吸い物……あと茶碗蒸しが食いたい……」

 見た目に反して、一番和食党なのがサーシャちゃんだという罠。


「あー!茶碗蒸し!いいですねえ……」

 ワカバちゃんも一気に食欲に負けた顔になった。


「茶碗蒸し、か。流石に作ったことはないな……卵繋がりでプリンならあるが、どうだね?」

 ランディさん、まだプリン持ってたの?卵は農家で買ったと言っていたけど、あなたどんだけ買ったの?と思ったら、なんかあたしたちが保護施設でドタバタしてる間に改めて卵を買って作った品だとかで、食べたら味が前回と微妙に違った。ちょっと、卵感が、薄い?


「ああ、やっぱり味が薄いかい?今回はオラルディ国で買った卵なんだけど、どうにも味が違う気がして仕方なかったんだ。作り方は同じにしたんだけども」

 正直に告げたら、ランディさんからのそんな返事。


「え、これより旨いのあったの?」

 サーシャちゃんがびっくり顔。うん、これも充分美味しいよ。美味しいけどね。


「ハルマナート国、卵も他所より旨いの……?」

 麦が収穫量も品質もダントツなのは知ってたけど。ああそうか、鶏も飼料で国産のいい物食ってるからだなこれ?!

辿り着かねええええええ?!


あと実は前回のプリンの卵はハルマナート入国前に買ったはずなので多分フラマリアの卵ですね。

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